「健太郎くんが違約金を踏み倒したなんて、そんなわけがない。彼もつらい目にあっていたんですよ……」
と肩を落とすのは、俳優・伊藤健太郎の知人男性だ。
NHK大河ドラマ『光る君へ』に出演するなど華々しい活躍をする一方、伊藤は今、世間でもっとも逆風にさらされている俳優のひとりであるのは間違いない。伊藤は2024年9月10日に、これまで所属していた芸能事務所・イマージュエンターテインメント社を退社することを発表した。同社はこの退所について、
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《2020年9月以来、4年にわたり全力でサポートし、伊藤健太郎と共に歩んでまいりました。 今後の活動や契約について話し合いを重ねてまいりましたが、双方の意見が一致せず、最終的に退所という形で合意に至りました》
と発表しており、“円満退所”とはいかなかったことを匂わせている。いったい何があったのか。そもそもの発端は、伊藤の“ひき逃げ事件”にさかのぼる。
「2020年10月に、自身の運転する車で事故を起こした伊藤さんは、ひき逃げの疑いで逮捕されました。後に不起訴となったものの、俳優としてのイメージダウンははかり知れず、芸能活動は当然休止することになりました。さらに、当時多数のCMに出演していた伊藤さんは、スポンサー各社に対し多額の違約金を背負うことになりました」(芸能記者)
伊藤は、デビュー当初からイマージュエンターテインメント社に所属していたものの、2017年に別の芸能事務所に移籍。そして2020年9月に再び“古巣”である同社に復帰した。事故を起こしたのはカムバックからわずか1カ月後のことだった。
「戻ってきた直後に、ゼロどころかタレントとしてはマイナスのスタートとなりました。しかし、事務所は今後も伊藤さんのことを支え続ける覚悟を固め、違約金を肩代わりしました。伊藤さんは非常に恩を感じており『(同社に)骨を埋める覚悟です』と言っていましたよ。どんな仕事でも受けて恩返しをしたいと言っていました」(前出・知人男性)
それから4年、今回の退所騒動に至った。10月9日発売の「週刊新潮」では、伊藤が違約金の返済を終えないまま退所した背景には強烈な“ステージママ”の暗躍があり、「後ろ足で砂をかけるように事務所を去ってしまった」と報じられている。
しかし、冒頭の知人男性はこれを否定する。一方的な伊藤の“裏切り”ではなく、苦しい“違約金返済生活”のなかで、徐々に伊藤と事務所のすれ違いが生じたというのだ。
「事務所が伊藤さんの代わりに負った違約金は、約2億数千万円だと聞いています。しかし、そもそもこの金額について健太郎くんはよくわかっていないのです。事故直後、クライアントと事務所社長である馬淵哲矢氏の間で次々と違約金をめぐる契約が交わされ、当の健太郎くんは事務所から詳しい説明のないまま、この莫大な“借金”を事務所に対して背負うことになりました」
そして、伊藤のギャラから事務所が負担した違約金を月々“返済”することになったが……。
「事務所はセキュリティー面を考えて、家賃数十万円の自宅を伊藤さん用に契約しました。健太郎くんは、もらえるギャラから家賃と違約金を差し引いた額を給料として受け取っていました。しかし、それが手取りで、普通の会社員の初任給の半額以下になる月も少なくなかったんです。さすがにこれでは生活できないので、両親から経済的な援助を受けることもあったそうです。この4年間で返済できたお金は、わずか数千万円。このままだと完済までに20年ほどかかることに本人は危機感を覚え、事務所に何度も『どんな小さな仕事もしますのでお願いします』と、仕事を増やしてくれるよう相談していました」(前出・知人男性)
ところが、伊藤の願いもむなしく仕事が舞い込むことは少なく、その後も苦しい生活は続いたというーー。さらに“骨を埋める”ほどの馬淵社長との厚い信頼関係が崩れるきっかけがいくつも生まれた。
「もともと馬淵社長と健太郎くんは、家族ぐるみの仲だったのです。ただ、健太郎くんのお母さんと社長の関係がうまくいかなくなったんです。
健太郎くんのお母さんは自身で会社経営をしていることもあり、芸能関係に知り合いも多いんです。『新潮』が報じたようなステージママではありませんが、事故の件で謝罪行脚をして、小さな仕事でも健太郎くんに仕事が入るように周囲に頭を下げて回ったんです。そこで、やっと掴んだ出演作品があったのですが、馬淵社長がその仕事に協力的だと感じられないような行動を取ったそうで……。事務所としても、もっと健太郎くんに仕事をしてほしいはずなのに、どうして冷たい態度を取るのか分からないんです。仕事が入らないことには、伊藤さんも苦しい生活から脱することはできません」(前出・知人男性)
恩のある事務所で仕事をこなし、早く違約金を支払いたいと願う一方で、事務所の対応に疑問を持った伊藤。そこに手を差し伸べたのが、現役の人気俳優が社長を務める有名芸能事務所・A社だ。
「現在、会長を務めているX氏が手を差し伸べたのです。伊藤さんがX会長に違約金のことを相談したところ、『伊藤くんのポテンシャルがあれば、必ず違約金は返せるよ』と励ましました」(芸能事務所関係者)
その結果、伊藤はA社に移籍を進めており、今後正式に移籍が発表される予定だという。
はたして、伊藤と関係が悪化したというイマージュエンターテインメント社はどう答えるのか。事実関係を確認したところ、同社の代理人である萱野唯弁護士が回答した。
まず、違約金の契約について伊藤に対し十分な説明がなされていなかった点については、
「違約金の概要については 、その都度、伊藤さんにもご説明しており、伊藤さん本人がクライアントとの違約金に関する協議に立ち会ったこともありました。詳しい内容については、伊藤さんの代理人との間で協議中であり、客観的な資料も存在していますので、ご理解いただけるものと考えております」
と回答した。さらにその後の伊藤に課せられた苦しい“返済生活”については、
「伊藤さんが起こした“ひき逃げ事件 ”により、当社が一定の違約金を負担したことは事実です」としたうえで、「伊藤さんにお渡しすべき報酬から、伊藤さん自らが決めた賃貸マンションの家賃50万円を控除して支払っていました。伊藤さんが その時点で負担できない場合には、当社が立替えておくということもございました。当社としては、契約に従い適正にお支払しております」
と主張した。一方、伊藤の実母と、伊藤が所属することになるA社に事実確認をおこなったが、どちらも期日までに回答はなかった。
伊藤の別の知人は、肩を落として、こうつぶやく。
「今年の夏ごろに会ったときは、すでに移籍を考えていた時期だったと思うけど、彼はイマージュのことをまったく悪く言わなかったですよ。ただ感謝していると言っていたので、本当はずっと所属していたかったんじゃないかな。
事故を起こす前、健太郎くんはお母さんに冷蔵庫をプレゼントしていて、お母さんが本当に嬉しそうに話していたんですよ。親孝行ばかりしていた健太郎くんだから、お母さんにお金を借りているのが申し訳ない気持ちも大きかったのだと思います。そういうなかで、苦しい決断をしたのでしょう」
別の大手事務所関係者はこう語る。
「ありがちな、タレントと芸能事務所のトラブルですね。芸能界はまさに水物で、伊藤さんがこのまま苦しい生活が続くと、気に病んだのもわかります。一方で事務所からすれば、大河ドラマに出演するなど、ようやく売り上げが立つようになったタイミングで移籍されるのは腹立たしいでしょう。結局は、お互いの信頼関係がすべてですから、仕方のない出来事です。ただ人気商売ですから、わざわざ退所にあたり“トラブルがあるように匂わせる”必要はなかったと思いますけどね……」
心機一転、新たな事務所で、俳優業に邁進するしかない。
( SmartFLASH )