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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』阿久 悠さん(享年70)ーー先生からいただいた「坂本冬美は色つき玉ねぎ」というお褒めの言葉はわたしの一生の宝物
阿久悠先生のお顔を初めて拝目したのは、森昌子さん、山口百恵さん、桜田淳子さんの “花の中三トリオ” をはじめ、中森明菜さん、小泉今日子さんというキラキラ輝く大スターを数多く生み出した日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』でした。
阿久先生といえば、「わたしもいつかこんな素敵な歌を歌える歌手になりたい!」と、この道を志すきっかけをくださった憧れの先輩、石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』の作詞をされた先生です。
それだけじゃありません。都はるみさんの『北の宿から』。八代亜紀さんの『舟唄』。ピンク・レディーさんの『UFO』『サウスポー』。沢田研二さんの『勝手にしやがれ』『憎みきれないろくでなし』。森進一さんの『北の螢』。ささきいさおさんの『宇宙戦艦ヤマト』に、西田敏行さんの『もしもピアノが弾けたなら』……。
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あれも阿久先生! これも阿久先生!! あぁ、この曲も阿久先生だよ……と、まさに数え切れないほどのヒット曲を連発。
昭和世代の方が一緒に口ずさめる曲を挙げていくだけで、今回はいっぱいになりそうです。いや、もしかしたら、2号連続でも足りないかもしれません。
ーー阿久先生って、どんな方なんだろう?
当時のわたしは興味津々でした。きっと、ダンディでニヒルで、シュッとしていて……大人の魅力に溢れ、オーラが半端なくて、お顔を見ただけでうっとりしてしまいそうな……想像の翼が、勝手にどこまでも広がります。
ところがです。テレビ画面に映っている阿久先生は、無口だけどシュッとはしていなくて、オーラは半端でないけど、うっとりは……モゴモゴモゴ。
阿久先生、ごめんなさい。とにかく、誰かと似ているとか、誰かのようなという言葉とは正反対の、まさに唯一無二の先生です。
こんな阿久先生から初めてわたしが詞をいただいたのは、NHK大河ドラマ『炎立つ』のイメージソング『恋は火の舞 剣の舞』でした。
もっともこのときは、作詞は阿久悠ではなく、「多夢星人」という別のペンネームで。嬉しい半面、「あぁ、わたしはまだ、阿久先生には認められていないんだ……」と、寂しさを感じたことを覚えています。
そのドラマが放送された1993年に、恩師・猪俣公章先生がお亡くなりになり、三木たかし先生、林あまりさんから、『夜桜お七』という坂本冬美の代名詞となる歌をいただいたのが、翌1994年。阿久先生から詞をいただけたのは、それからさらに2年後の1996年です。
デビュー10周年記念として出させていただいた『冬美十艶』というアルバムは、収録した10曲がすべて阿久先生の作詞という、わたしにとっては夢のようなアルバムです。
一度だけ、ホテルの中華料理店で、阿久先生と音楽プロデューサーの小西良太郎さんとお食事をさせていただく機会がありましたが、緊張のあまり、何を食べたのか、どんなお話をさせていただいたのか、まるで覚えていません(苦笑)。それでも、時折、阿久先生が見せてくださった笑顔を思い出すと、なんだか胸がほっこりとしてきます。
阿久先生とは、アルバムで書いていただいた10作品が、最初で最後になってしまいましたが、先生からいただいた「坂本冬美は色つき玉ねぎ」という言葉は、これまでも、そしてこれからも、わたしの宝物です。
「相変わらず、剥いても剥いても違う色の坂本冬美が出てくるな」
先生にそう言っていただけるように、これからも精進を重ねてまいります。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新アルバム『想いびと』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋
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