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勝ち組は吉岡里帆、多部未華子、満島ひかり…昔なら“至難の業”独立・移籍女優が活躍する理由
第48回日本アカデミー賞で「優秀助演女優賞」を受賞、二番手で出演しているドラマ『御上先生』(TBS系)も高視聴率。まさに“この世の春”の吉岡里帆。だが、注目されるのにはもうひとつ理由がある。それは、彼女が2024年4月に、所属事務所を移籍したからだ。大手広告代理店のキャスティング担当者がこう解説する。
「昔は所属していた事務所から独立、移籍することはタレントにとって“至難の業”でした。それが最近、ハードルが下がってきたんです。吉岡さんはその典型例です」
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続けてその理由を話した。
「タレントが事務所から契約を解除された場合は、たとえそれが事務所の都合であっても、数年間は活動ができないという鉄の掟がありました。それが、経営不振で破産したり解散したりする芸能事務所が増えて、掟がゆるくなっているんです」
吉岡は、所属事務所の休業という“事務所都合”による移籍だったが、順調にキャリアを重ねている。
「2024年、映画『正体』で第49回報知映画賞の助演女優賞に輝いた際は『私はいつも自分の居場所、役割を模索していました。どうしたら役者としていられるんだろう、どうしたら監督の期待に応えられるんだろうという葛藤がいつもありました』と、涙ながらに喜びを吐露していました。生真面目な人柄に加えて確かな演技力も評価されたので、今後もオファーが絶えないでしょう」(大手新聞社芸能担当記者)
4月スタートの連続ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)の主演が発表された多部未華子も、勝ち組のひとりだ。多部は、2024年4月に独立してフリーで活動している。あるテレビ局関係者は、この「独立のタイミングがよかった」と話す。
「2023年の話題作『いちばんすきな花』(フジテレビ系)で、主役のひとりを演じた後の独立だったからです。もとはアイドル女優扱いだった彼女ですが、2019年にカメラマンと結婚。2021年には第1子に恵まれています。男性ファンは潮が引くように離れていきましたが、『いちばんすきな花』に出演したことによって、女性ファンをガッツリつかむことに成功しました。さらに幸運だったのは、マクドナルドのCM出演を前事務所が認め、独立後も継続できたことです。安定した収入があるのは大きいですよ」
さらに、多部は制作スタッフの受けもいいという。
「休み時間も自分の控え室に引っ込んでしまうのではなく、スタジオの前室で共演者やスタッフたちとワイワイ冗談を言ったりして、楽しく過ごしています。しかも彼女は、クランクアップのときに必ず、お寿司とか高めのお弁当を差し入れてくれるんです。中を開けると、手書きで『○○さんのおかげでとても楽しい撮影でした。ありがとうございました』とメモが入っている。そんなのもらったら、また絶対一緒にやろう、となりますよね」(同前)
大手事務所から女優の独立が増えた背景には、満島ひかり、中谷美紀のフリー転身成功の影響があるという。前出のテレビ局関係者が続ける。
「満島さんは独立時からマネージャーもつけず、ブッキング、ギャラ交渉、確定申告まで全部ひとりでやっています。事務所に電話すると彼女自身が出ますよ。そして、自分の直感だけを信じて、オファーを厳選して仕事するようになりました。それができるのも、前事務所時から引き続き、キリンビールのCMに出演できているから。おカネの心配はいらないんです。また、自分で選んだ作品だからこそ、全力で挑んで結果を出すので、オファーが絶えません。2024年公開の主演映画『ラストマイル』は興行収入51億円超え、日本アカデミー賞では10部門で受賞していますよ」
一方、中谷は独立後に結婚、“国際派”女優として活躍している。
「ウィーン・フィルのビオラ奏者、フェヒナー氏と結婚。日本とドイツを行き来する生活になりました。2023年にはニューヨークでミハイル・バリシニコフと舞台『猟銃』で共演するまでに上りつめました。CM出演は減りましたが、映画やテレビドラマの仕事は、その知名度から途切れることなくオファーがあります」(映画関係者)
2人には、ある共通点があるという。女性月刊誌の編集者は「2人とも仕事への責任感が半端ない」と明かした。
「インタビュー取材の原稿確認は、マネージャーがおこなうことが多いですが、中谷さん、満島さんは必ず本人が目を通します。満島さんは『自分はこういう話し方はしない』と語尾にいたるまで細かく直しますし、中谷さんも『こういう意図で話したので、こう直したい』と、PDFに直筆で訂正を入れてきます。中谷さんの場合は、さらに取材のお礼が書かれた直筆の手紙も添付されてくるので、仕事に対する思いの強さに、ただ頭が下がります」
■成功に必要なのは「カネ」と「人」
NHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)に源倫子役で出演した黒木華(はる)も、2024年4月に独立した。2025年も出演映画2本の公開を控えており、成功組に見えるが……。
「大河ドラマや映画は前の事務所のときに決まっていた仕事なので、いまが勝負のときですね。一緒に仕事をしたCMのスタッフに『なんでもかんでもひとりでやらなきゃいけないの、ホントにた~いへん』ってぼやいていたそうです。事務所を離れて、まわりで働いていた人たちのありがたみを実感しているんじゃないでしょうか」(広告代理店関係者)
中谷と同じ大手事務所から独立した柴咲コウは「“思い”が強すぎてキャリアが停滞している」(前出・テレビ局関係者)という。
「環境問題への思いが強すぎるのが原因です。アウディの電気自動車のサポーターや、環境省の環境特別広報大使就任くらいで留めておけばよかったのに、うま味調味料不使用の食品販売や、ファッションブランド事業にまで手を広げてしまいました。どれも黒字経営にはほど遠いと聞いています」(前出・テレビ局関係者)
だが、歌手活動は好調。2月8日に東京・昭和女子大人見記念講堂でおこなわれるライブは、立ち見も出るソールドアウト状態だという。
「彼女の仕事が途切れない背景には、業務を肩代わりしてくれる“敏腕エージェント”と契約しているから、という話もあります」(制作会社ディレクター)
大河ドラマで主演したことを考えると、第一線を外れた感があるのが、上野樹里だ。
「2022年4月、約18年間所属した芸能事務所から独立。初期にマネージャーを務めていた“育ての親”が代表を務める芸能事務所と業務提携を結び、個人で活動しています。ただ独立後、主演したドラマ『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS系)は低視聴率で終わりました。20代は仕事を詰め込むことをよしとしていたという上野さんですが、いまは自分のペースで、本当にやりたい作品にじっくり向き合っています」(ベテラン放送作家)
だが、“マイペース”がキャリアに影響しているという。
「最近で話題になったのは『のだめカンタービレ』の舞台版(2023年)くらい。旦那さん(トライセラトップス・和田唱)も、義母の平野レミさんもいるから、働かなくていい環境は整っているのでしょうが……。頼みの綱は『監察医 朝顔』(フジテレビ系)だけですから」(前出・テレビ局関係者)
明暗が分かれるタレントの独立・移籍。前出のテレビ局関係者は、成功の鍵を「やはりカネと人です」と話す。
「仕事のビジョンをきちんと持っているというのは前提ですが、さらに営業が必須です。自分で営業ができる俳優さんならいいのですが、できないとなると、それなりの人を雇わないといけない。そこで信頼できる人を雇わないと、カネを使い込まれてドロン、なんてことになる。自分でおカネの管理ができない人は、独立しても痛い目をみます。せっかく独立したのに、カネが原因で好きなことができないんじゃ、独立する意味がないですから」
必要なのはカネと人。これは世の常だ。