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「SMAP大応援プロジェクト」発起人が語る成功の理由
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.01.29 06:00 最終更新日:2018.01.29 06:23
国民的アイドルSMAPの解散騒動は、ファンたちの様々な応援のムーブメントを生み出した。署名活動や、「花摘み」と呼ばれる『世界に一つだけの花』のCD購買運動で、売上は300万枚を超え、香港でもファンたちからSMAPへのメッセージが込められた広告のラッピングバスが走り、台湾の駅構内でも応援看板が設置された。
そして、解散の前日である2016年12月30日、朝日新聞朝刊に8ページにわたり、ファンからSMAPへの応援メッセージ広告「SMAP大応援プロジェクト」が掲載された。それはクラウドファンディングを用いて、たった1週間で集められたものだった。
このプロジェクトを企画、実行したのは、SMAPファンの3人。SMAP解散を受けた、ファンたちによるミーティングや集会で知り合ったという。
このプロジェクトの発起人の一人、Sさんは、メンバーと同年代ということもあり、SMAPのファンとなった。結婚、出産後は家族ぐるみでSMAPファンとなり、コンサートに出かけていたそうだ。
「SMAPはずっと存在して、ずっとSMAPの歌を聴いていられると信じて疑ったことはなかったです」
しかし、突然、SMAP解散が発表された。
解散の騒ぎがマスメディアから流れ出して、ファンたちは、いろいろな場所で集まった。
「本当のこと、SMAPメンバーの本当の気持ちを知りたくて、情報交換をしていました。マスコミから流れてくる情報はどうしても信じられなかったし、SMAPメンバーの本当の気持ちであるとは考えられなかった。
SMAPメンバーがラジオ番組で話した内容、流れた曲、ツイッターでの目撃情報を統合して暗号のように解釈していっても、本当のことがわからなかった。
週刊誌やスポーツ新聞に載っている情報を読めば読むほど、メンバーの気持ちとはきっと違うことが情報として流れていると感じていたし、ファンたちは、心が傷ついていった」
このように、Sさんは振り返る。
「私たちからすると、絶対に嘘だと思う情報が溢れていて、すごく傷つけられていました。SMAPメンバーみんながSMAPのことをすごく愛していることはわかっていたから、どうしてだろうと思っていました。
だって、コンサートでの言葉やラジオで聞く言葉は、『SMAPが好きで、ずっと続けたい』という言葉だったから、メンバーの気持ちだとはまるで思うことができませんでした。
でも、解散が止められないのであれば、SMAPに何か伝えたかったし、何か声を上げたいと思いました」
また、SMAPのことを記録として残しておきたかった。『世界に一つだけの花』を300万枚のセールスにすれば、歴代のシングルCDの歴代売上3位、という記録として残すことができる。SMAPがいたということを、素晴らしいアイドルだったということを記録として残したかったというファンの行動は続いていた。
Sさんたちは、それまでの理不尽とも思えた報道に「おかしい」と声を上げたいと思ったのと同時に、きっと傷ついているだろうSMAPメンバーにもメッセージを送りたかったし、感謝も伝えたかった。
そしてSMAPファンのオフ会で知り合った2人と一緒に、新聞を使ってメッセージを送れないかと考えた。最初は新聞の個人広告を考えたが、新聞社に相談したらクラウドファンディングを用いてのファンからのメッセージ広告というアイデアが出た。
「クラウドファンディングでやろうって新聞社の方が提案してくれたのだけど、実際にどのくらいの人が協力してくれるのかわからなかった。また、やることが決まってからも、締め切りまでの時間がとても短くて、本当にどのくらい集まるのか、成功するのか、とても不安でした。でも新聞社はページの変動はあるものの、最低限の紙面を確保して準備をしていてくれました」
3000円の寄付で紙面に名前が載り、1000円だとお礼のメールが届くというようにしたが、ほとんどの人が3000円のコースを選択した。1週間で1万3000人以上が賛同してくれて、ほぼ4000万円が集まった。当初の予定の3倍以上となる人数と金額は、国内の購入型クラウドファンディングでは史上最多となった。
紙面には、SMAPの曲名、そしてこれからもずっと応援していくというメッセージが並んだ。誰も傷つかないもので、SMAPへの感謝を何よりも伝えたかった。
またSMAPが積極的に支援していた、東日本大震災への支援も紙面上で訴えた。
「SMAPはいつも被災地のことを考えていたから、被災地支援も絶対にSMAPの応援には欠かせないものだと思っていました。SMAPはいつも言っていました。『被災地のことを頭の中においておくだけで、絶対に行動が違う』、と。募金するとか、ボランティアをするとかではなくても、例えばスーパーに買い物に行った時に、『あ、東北のものを買おう』って思うということです」
この広告は2017年の新聞広告賞の優秀賞を獲得した。SMAP大応援プロジェクトが多くの人たちを瞬時に結びつけることができたのは、インターネットでクラウドファンドという応援のプラットフォームが整っていたからである。
この動きは単にアイドルの応援というだけではなく、アイドルに代わって、ファンが被災地を支援しているという動きにも注目できる。SMAPに対する応援という形が、被災地を応援していく。応援は、つながれていくものでもある。
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以上、新井範子氏、山川悟氏の新刊『応援される会社 熱いファンがつく仕組みづくり』(光文社新書)より引用しました。好きな商品を大量に仕入れて仲間内で配る、お気に入りブランドの広告を制作して動画サイトにアップする、商品の新用途を考えて逆提案する……「消費者」が「応援者」になる新たな時代のマーケティング論!