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『日本一の最低男』香取慎吾 “いい人すぎ” 問題をどう解決するのか…クライマックスシーンを大予想
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香取慎吾の演技に目頭が熱くなった。だが、同時に、なんだか今後のクライマックスシーンがどんなふうになるか、読めてしまった気もした。
2月13日(木)に第6話が放送された香取主演の『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)のことである。
テレビ局社員として有名ニュース番組のプロデューサーを務め、エリート勝ち組人生だと自負していた主人公・大森一平(香取)だが、不祥事が原因で退社するハメに。ほぼ無職の状態になってしまい、世間や元同僚たちを見返すための起死回生の一手として政治家転身を決意。
一平は次の区議選での当選を目指すが、家事・育児に取り組む生活者目線を持った立候補者だとSNSでアピールするため、亡き妹・陽菜の夫でいまはシングルファーザーの義弟・小原正助(志尊淳)と、その2人の子どもを呼び寄せ、4人で同居生活を始める。
一平は、本当は家族なんて不要だと思っているタイプにもかかわらず、好感度を獲得して選挙に勝つために義弟一家を利用しているので、『日本一の最低男』というタイトルになっているわけだ。
【関連記事:香取慎吾『日本一の最低男』はタイトル詐欺?…初回から “とっておきのカード” を使ってしまって今後に不安
■「利用する」はネガティブな意味ではない
とはいえ、第1話から一平の「実はいい人」要素が出ており、言うほど悪い人ではないのは序盤からわかってしまっているので、タイトル詐欺感がずっと漂っている。
そのタイトルと主人公のキャラの乖離を、脚本家はどうやって帳尻を合わせるのだろうかと心配していたのだが、第6話を観てなんとなく読めてしまった。
正助の子は、小5女子の姉・ひまりと保育園児の弟の2人だが、ひまりは連れ子だったので正助と血のつながりはない。第6話ではひまりの実の父親が登場し、ひまりの将来のために自殺して多額の保険金を渡そうとしていたことを、一平が看破する。
一平がひまりの父を「バァカ」と叱責するセリフは、言葉遣いは荒いが感動的だった。
「バァ~カ!! うれしいのはアンタだけ。いや、それでも、うれしいも錯覚! 言うからな、俺、ひまりに。そのカネはアイツが自分で死んで作ったカネだって! よろこぶと思うか、ひまり。よろこぶわけねぇだろ、バァカ! バカにすんじゃねぇぞ、ひまりを!!」
そして、元妻・陽菜を利用したことを後悔しているという発言に対してはこう熱弁。
「いいじゃん、べつにさぁ、陽菜のこと利用したってさぁ! 利用から始まったってさぁ、利用したんだけどさぁ、これからもする気満々だけど、一緒にいるとなんか、あるじゃん? どうしようもなく勝手に生まれちゃう、なんかうれしそうにしてたらこっちもうれしくなるとか、つらそうにしてたらなんとかしてやりたくなっちゃうとか。世界ではそれを愛って呼ぶんじゃねぇの!?」
このセリフは、途中から義弟一家を利用している自分に重ね合わせた発言なのだが、家族は利用しあってもいいんだという提言になっている。
きれいごとをゴリ押しするのではなく、家族が苦難を乗り越えて幸せになっていくためには、利用しあうことが現実的かつ有効的であるという真理。「利用する」という言葉にはネガティブなイメージがあるが、要するに、一平の主張は、大変なときこそ家族で助けあって生きていけばいいというポジティブなメッセージなのだ。
■「私は日本一の最低男です!」と自ら宣言?
本作の主人公の行動は、だいたいにおいて「やらない善より、やる偽善」という言葉が当てはまる。
一平がいいことをする動機は利己的なものなので、偽善からスタートしているのは間違いない。
けれど、毎回、彼のおかげで救われた人が出てきているのも事実。だからなんの行動も起こさない善人より、偽善者の一平のほうが多くの人々のためになっているというわけだ。
さて、ここでタイトル問題に戻ろう。
やはり初回から各話で「実はいい人」と思われる言動をしており、第6話でもひまりの父に生き続けるべしと熱く諭す一平を、「日本一の最低男」と評するのは相当無理があるように思える。
しかし、うまく解決する方法がある。それは一平自身が「私は日本一の最低男です!」と宣言することだ。
終盤のクライマックスで、一平が区議選の街頭演説をおこなうシーンがあれば、ドンピシャでハマるはず。ひまりの父に語った一平の言葉は、自分のズルさも認めた魂からの本音という印象だった。
このときと同じような熱量で、選挙で勝つために義弟一家を利用しようと同居を始めたことや、ほかの数々の活動もすべてイメージアップに利用するためにしてきただけだと、聴衆の面前で全部洗いざらい白状する。
そして「私は日本一の最低男です!」「私の家族はニセモノだったんです!」とぶっちゃけることで、逆に民衆の心をつかむ名演説に――。という展開であれば、感動的にタイトルを伏線回収できるだろう。
今夜の放送は第7話。後半戦に突入している。
一平が自ら「日本一の最低男」と語るのはあくまで筆者の予想だが、現時点でタイトルと主人公像がかけ離れてしまっているので、最終話までにきちんと辻褄を合わせてほしいものだ。