
三宅裕司
“世界のホームラン王” 王(貞治)監督の次は、 “世界のアオキ(青木功さん)” ? マジで!? いったいどんなお鮨屋さんなんだ?
前回と前々回の連載を読んで驚かれるのは当然です。わたしも、初めてお二人にお目にかかったときは一瞬、目が点になりましたから(笑)。
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でも『鮨幸』さんは、皆さんが想像されているような特別なお店ではありません。カウンター席にはご近所の方も、お店の雰囲気が好きで通って来られる常連さんもいて。たまたま、そのなかにすごい方がいらっしゃる……その頻度が普通じゃないんですけど(笑)。
これまで紹介させていただいた野田秀樹さん、明石家さんまさん、大竹しのぶさん、王監督、青木さんのほかにも、『鮨幸』でのご縁は十指に余ります。笑福亭鶴瓶さん、故・十八代目中村勘三郎さん、江川卓さん、小谷実可子さん、故・KANさんも親方とは大の仲よしです。
そしてもう一人、『鮨幸』シリーズを締めくくってくれるのは、日本を代表するコメディアンの三宅裕司さんです。
『鮨幸』でお会いする三宅さんは、明るく楽しい奥様 “世界のマコさま” の横で、いつも笑顔で静かにお酒を楽しんでいらっしゃいます。でも、三宅さんは根っからのエンタテイナー。いつどんなときでも、まわりを楽しませずにはいられない性なんです。
場の空気を読み、狙い澄ましたように、ここ! という場面で、ぼそっと呟くように、思わず心がほっこりとする奥様の “イイマチガイ” をお話ししてくださるんです。
「ダメでもともとなんだから、頑張って!」と言うはずが、「もともとダメなんだから、頑張って!!」と言ったとか、口論になった際、「どいてよ」と言おうとして「抱いてよ!」と言ってしまったとか(笑)。
すごいですよね。でも、これはまだ序の口です。「ガソリン満タンで!」を「マソリン、ガンタンで!」と間違えたとか、「坊主丸儲け」を「坊主丸坊主」と言い間違えたとか、美容院で「耳(のあたりの毛)はどうされますか?」と聞かれ、「耳は切らないでください」と答えたとか。
タクシーに乗って、「まっすぐ行って、次の信号を右に曲げてください」と言ってしまったというエピソードもありました。ネタなのか実話なのかわかりませんが、隣でその話を聞いていらっしゃる奥様も、クスッと笑い声を上げていて。お二人は、本当に素敵なご夫婦です。
あれは……今から10年ほど前のことです。親方の幸雄さんと女将さんの美由紀さんが、『鮨幸』の暖簾を上げて30年。それを記念してみんなでお祝いしようという話が持ち上がり、中心となって動いてくださったのも三宅さんでした。
会場は、東京・白金台の八芳園。わたしが仰せつかったのは、三宅さんが作った『また君に恋してる』の替え歌。 “君に恋してる” の “君” を、 “鮨幸” “幸雄さん” に替え、日ごろの感謝の気持ちをこめて歌わせていただきました。
三宅さんは脊柱管狭窄症で緊急入院。パーティに来ることはできませんでしたが、三宅さんの代わりに奥様が八面六臂の大活躍。「三宅に観せてあげなくちゃ」と、ホームビデオを片手に、会場中を飛びまわっていらっしゃいました。
お仕事で三宅さんとご一緒させていただいたのは、デビュー11年めの1997年。三宅さんが総合司会をなさっていた『THE 夜もヒッパレ』(日本テレビ系)。……だったような、モゴモゴモゴ。
三宅さんは、わたし自身も気づいていない、新たなものを引っ張り出してくださるような気がするので、ぜひまたご一緒させてください。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新アルバム『想いびと』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋