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『アンサンブル』松村北斗が残酷すぎて「やさしいふう」「悲劇の主人公」気取りが痛々しい

松村北斗
思わず「なんだコイツ」とつぶやいてしまっていた。『アンサンブル』(日本テレビ系)の松村北斗が残酷すぎるのだ。
3月8日(土)に第8話が放送された川口春奈×SixTONES・松村北斗のダブル主演作で、法廷ものと恋愛ものをMIXした「リーガルラブストーリー」。
小山瀬奈(川口)は恋愛トラブルを得意とする現実主義者のクールな弁護士。その恋のお相手役が、同じ事務所に勤めることになった新人弁護士・真戸原優(松村)。2人はさまざまな恋愛トラブル裁判を担当しながら、そこで得た恋の教訓を自分たちの恋に活かしていくという物語である。
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■松村北斗が未成熟のガキすぎる
第6話から正式に交際スタートした瀬奈と真戸原。
しかし、幼いころに真戸原を捨てた “毒親” の実母(浅田美代子)が現れたことで急転。自分では瀬奈を幸せにできない、これ以上は瀬奈に迷惑をかけられないとでも思ったのか、真戸原は第8話ラストで突然、事務所の郵便受けに退職届と瀬奈の家の合鍵を残し、姿を消してしまうのだ。
この決断がガキすぎて、心底、反吐が出た。
一応、真戸原のキャラクターの説明をしておこう。
まず、瀬奈は彼のことを「真戸原君はいっつも他人のことばっかり考えてて、自分のことは二の次で」と評していた。また、交際を反対していた瀬奈の母(瀬戸朝香)も、彼の行動に感心して、「いつも誰かの幸せを願える素敵な人なんだね」と見直していた。
要するに劇中では「やさしい人」という描かれ方をしており、登場人物たちも総じて彼を「やさしい人」と認識している。
だが、残念ながら筆者から見ると、この男は「やさしいふう」なだけで、「悲劇の主人公」気取りが痛々しい自己中としか思えない。
突然姿を消した真戸原の行動をめちゃめちゃ好意的に解釈するなら、瀬奈のために身を引いたと考えられるのだが、言わずもがな、瀬奈はそれによってどん底に突き落とされたように傷ついている。
そもそも瀬奈は第8話の前半で「無理してない?」と尋ねたうえで、「だから真戸原君も約束して。なんでも全部話す、一人で抱え込まないって」と伝え、真戸原も指切りに応じていた。
真戸原が精神的にキャパオーバーになるタイプだと気づいていたから、瀬奈は彼のメンタルを気遣っていたわけだが、そんな配慮も虚しく、まんまと危惧していた最悪の展開になってしまった。
■ピュア人間の行動があまりにも残酷
突然姿を消すという真戸原の選択が、どれだけ残酷なのかを裏づける要素はまだある。
瀬奈は8年も恋愛から遠ざかっていたのだが、それは元彼(田中圭)が理由も告げず唐突に姿を消したから。真戸原と出会って、ようやくトラウマを克服できたのに、その傷を癒していた張本人が今度は傷口に特大の塩を塗りつけたようなものだ。
また、交際しはじめの時期の第6話では、慎重な瀬奈は周囲の目を気にして交際は隠しておきたい派だったが、真戸原は事務所の上司や同僚に報告したい派で、意見の食い違いがあった。
瀬奈から愛されていないのではと不安に陥るエピソードは、真戸原の純粋さを表していたとも言えるが、そのピュア要素が恋人をとことん痛めつける。
結局、事務所の仲間たちも交際を知るところになるのだが、その後、報告したい派のほうが “飛んだ” のだからタチが悪い。
瀬奈は破局する可能性も懸念して秘密にしておきたかったはずなのに、事務所メンバーの前で残された合鍵を受け取るという、はずかしめに遭う。ピュア人間でも、未成熟すぎると、とてつもなく残酷な行動ができてしまうケーススタディとして覚えておきたいぐらいだ。
ほかにも第8話では、真戸原が姿を消す直前、瀬奈の母から「約束してほしいの。瀬奈ちゃんのこと、幸せにしてくれるよね?」と問われるシーンがあった。瀬奈の前でいけしゃあしゃあと「はい。もちろんです」と答えていたにもかかわらず、この男は “飛んだ”。
一番近くにいる恋人の気持ちを考えられず、不幸のどん底に突き落とす――これが劇中で「いつも他人のことばかり考えてる人」「いつも誰かの幸せを願える素敵な人」と評される男の所業なのである。
■幼稚なガキんちょの物語がどんな着地を迎えるか
ティーンエイジャーを描いた恋愛ドラマなら、このような未熟な行動もまだ理解できるが、真戸原はアラサーの大人設定。大人のはずの主人公の精神年齢が低すぎて、ドン引きしてしまった。
自分一人で抱え込んで自分だけが犠牲になればいいという思考回路のせいで、瀬奈はトラウマを思いっきりえぐられた。百歩譲って、自分が去ることが瀬奈のためになると考えていたとしても、突然消えるのが、本当にありえない。納得するまで話し合うことをしていないし、直接会って別れの言葉を伝えることもしていないからだ。
――今夜の放送は第9話、物語も終盤だ。
ここから真戸原がどんなに誠実な行動を取ろうが、どんなに名言を残そうが、筆者はもうこの男のことを幼稚なガキんちょとしか思えない。そのため、申し訳ないが、今後の展開がどんなに劇的に変わったとしても、ドラマへの評価が変わることはないと思うのだ。