エンタメ・アイドル
ライブアプリ「ふわっち」配信者が語るリスナーとの“出会いの場”とは…「最上あいさん刺殺事件」でわかった業界の構造に潜む危険性

バーで1日店長をやるほど人気だった最上あいさん(写真・ギリギリ配信者BARのXより)
「最上さんの事件は他人ごとでないとおもっています」
と、深刻な顔で本誌に明かすのは2024年に、大手ライバー事務所を辞めてライブ配信アプリ「ふわっち」フリーライバーになった24歳のA子さんだ。
最上あいこと佐藤愛里さんが、「ふわっち」でライブ配信中に新宿区高田馬場の路上で高野健一容疑者にサバイバルナイフで刺され亡くなったのは、3月11日のこと。最上さんと高野容疑者の間には、配信者とリスナーという関係を超えて、数年間に及ぶ金銭トラブルがあったことがわかっている。
【関連記事:「男女トラブルは日常茶飯事」最上あいさん刺殺事件 知人のライバーが語る「ふわっち」特有の“文化”とは】
恋愛感情を持ち、多額の金銭を貢いだ挙句、生活が立ち行かなくなり、恨みを募らせて殺害ーー。これが今回の事件の経緯であるが、最上さんのケースと同じように実際に「リスナーから金銭を受け取るのは日常茶飯事です」と語るのは、冒頭のA子さんだ。
「そもそも、ライブ配信業界には配信者が増えすぎて過剰競争が起きているんですよ。コロナ禍の最中、人と直接会えない寂しさからライバーが激増し、同じくライバーに投げ銭をするリスナーが激増しました。そこでライバーを抱える事務所も勢力を拡大したのです。
ライブ配信アプリを運営する事業者の多くは、少しでも自社サービスで配信を行ってくれる人を増やすために、ライバーの所属事務所に育成料を支払っています。育成料は配信時間やリスナーの時間など一定の条件を満たすことで支払われます。特に配信を始めたばかりのライバーは、この育成料を原資とした時給を受け取るケースが多いですね。
なので、事務所は所属ライバーに対し、一定の配信時間を契約で定めています。違反すればその都度、罰金を科せられたり、もちろん、契約解除されることもあります。売れてくるようになると、リスナーからの投げ銭でかなりの利益を得られるようになりますが、最初はこの時給が大切な収入源です」(A子さん)
だが、それだけで暮らすのには苦労するという。
「時給は数千円程度あるので、完璧にこなせれば専業ライバーとして暮らしていけるでしょう。ただ実際には些細なルール違反などで罰金がかさむため、時給だけで暮らすことはできなません。その結果、副業が必要になるんです。ただ19時〜23時のプライムタイムは配信する必要があるので、なかなか普通の仕事につきづらい。その結果、深夜や未明帯に働ける水商売との掛け持ちになるわけです」
そして、水商売が“出会いの場”となるという。ただ、この構造は危険性をはらんでいる。
「基本的には、リスナーと直接会わないのが鉄則なのですが、やはり水商売の売り上げにもなるので、リスナーを呼んでしまうライバーが多いです。でも、実際に会うと相手は、リスナーという立場を忘れ、“ガチ恋モード”になってしまう。すると今度は投げ銭をするのを嫌がるようになり、“無料で会ってくれ”と言い出すようになる。その結果トラブルが起きることも多いです。ましてや最上さんのようにおカネを借りてしまっては、深刻なトラブルになるのも当然です」(A子さん)
こうしたトラブルを防ぐためにも、A子さんは対策が必要だと訴える。
「私は、投げ銭を携帯会社が料金と一緒に請求することができる、いわゆる“キャリア決済”を止める必要があるのではないかと思います。投げ銭を携帯料金と同じ感覚で支払うことができてしまうので、どうしてもハードルが下がってしまう。やはり、クレジットカードによる決済だけにしぼるなど、投げ銭をしづらい環境を作る必要があるのではないかと思います。
その影響でライブ配信業が不景気になり、消えてしまうライバーも増えるでしょうが、健全化するためには必要な手だてだと思います」
健全な“推し活”を心がけたいものだ。