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亀梨和也とYouTuberが変えた「野球の伝え方」スポーツ記者が「人間ドラマ」しか書かなかった “悪影響” とは

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記事投稿日:2025.04.01 11:00 最終更新日:2025.04.01 11:00
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
亀梨和也とYouTuberが変えた「野球の伝え方」スポーツ記者が「人間ドラマ」しか書かなかった “悪影響” とは

プロ野球交流戦ヤクルト対西武で始球式をおこなった亀梨和也(2021年)

 

 ジャニーズ(現STARTO ENTERTAINMENT)のKAT‐TUNに所属していた亀梨和也は、キャスターを務める日本テレビ系列のスポーツニュース番組『Going!Sports&News』のなかで、2010年8月から「ホームランプロジェクト」「豪速球プロジェクト」という企画を始めた。

 

 そもそもジャニーズと野球の関係は深いものがある。ジャニーズは、終戦後に進駐軍が代々木に宿舎として持っていたワシントンハイツで、日系2世であるジャニー喜多川が近所の少年たちに野球を教えるようになったことから始まっている。

 

 

 その後、少年たちと喜多川が『ウエスト・サイド物語』のミュージカルを観たことをきっかけに、歌って踊るエンターテイメントを志したことが、のちのジャニーズ事務所設立へつながっていった。

 

 そのためジャニーズは「ジャニーズ野球大会」を東京ドームで開催するなどして、長らく野球とのつながりを保ってきた。

 

 亀梨も以前からジャニーズ野球大会で投手として登板していたが、そもそも小学生時には野球をやっていて世界大会にも出場経験があり、中学ではシニアリーグでプレーしていた。

 

 ジャニーズの活動に専念するため野球は途中でやめてしまったが、スポーツニュース番組のキャスターになったことをきっかけに、亀梨自身が「ホームランを打つ」ことを目標に掲げ、数々の現役プロ野球選手のもとに取材に訪れ、バッティングの上達を手伝ってもらうという企画を行った。

 

 この企画はピッチングにも発展し、やがて亀梨はバッティングやピッチングのやり方についてさまざまなプロ野球選手に取材していく。

 

 このシリーズには数々の一流選手が登場したが、亀梨に教える選手たちの表情が、他のテレビ番組では見せない生き生きとしたものであったことが私には印象的だった。彼らは亀梨のチャレンジを応援しつつ、自分たちの技術にはこういうロジックがあって、こういうふうに成り立っているということを解説していたのだ。

 

 既存のメディアは選手たちに「人間ドラマ」ばかりを求めてきた。

 

 スポーツ記者はプロ野球を娯楽として「消費」するための物語を読者や視聴者に提供することが仕事である。そこには「運動を奨励しよう」という意図は基本的にない。だからこそ人間ドラマばかりを書くし、技術論はほぼ「禁じ手」となっている。

 

 一方、選手たちは自らの技術に誇りを持ち、それを常に磨いてきている。亀梨というテレビスターは、その点に興味を持ち、熱心に取材していたのだ。

 

 私の知っている範囲では、スポーツやメディアの関係者はしばしば「技術論にはニーズがないからやっても意味がない」と言う。たとえば野球のメディアで代表的な雑誌に『週刊ベースボール』があるが、120ページほどあるうちプロ野球のチーム戦略、裏話、ドラフト情報などが大半を占め、技術解説はわずかしかない。

 

 一方、たとえば『ゴルフダイジェスト・オンライン』や『アルバトロス・ビュー』といったゴルフメディアはどちらかといえば技術論がメインになっており、野球がゴルフのような文化性を持つこともありえない話ではなかったはずだ。

 

 しかし、野球をめぐるメディアは「野球は子どものときにするもの、大人はみる野球を『消費物』としてのみ楽しむ」という見方を再生産し、運動の奨励は決してしないのである。

 

 ジャニーズアイドルは、マッチョ体型よりもほっそりとした少し筋肉質な細マッチョ体型を維持する必要がある。亀梨は俳優やコンサート活動もする忙しい生活のなかで、隙間時間を見つけて、マッチョになりすぎない範囲で野球のトレーニングを続けていく、つまり亀梨の「大人になっても野球に真剣に取り組む」姿には新鮮さがあった。

 

 こうした亀梨の姿勢は、2010年代半ば以降に注目されるようになった「野球YouTuber」たちに大きな影響を与えていったと考えられる。

 

 野球YouTuberは、「クーニン」や「トクサン」などが代表的だが、クーニンTVは現在約46万、トクサンTVは現在約83万のチャンネル登録者数を持っている。

 

 彼らは基本的に草野球をする人たちで、「野球のスポーツとしての楽しさを伝える」ということにフォーカスしている。これは今まで野球をめぐるメディアがほとんど手をつけてこなかったことだ。彼らに影響を受け、草野球シーンはいま活性化しつつある。

 

 また野球YouTuberの登場で何が可視化されたかといえば、野球が生涯スポーツであるということだ。

 

 野球は別に高校で終わりでもなければ、大学で終わりでもないし、学生野球で燃え尽きる必要もない。社会人野球やプロ野球など「野球で仕事をする」ということに辿り着けなかったら意味がないのではなく、生涯にわたって続けていけるスポーツである。

 

 仕事や学業と両立しながら真剣に楽しく野球に取り組んでいる人たちがいる――これには「アマチュアリズムの体現」としての意義がある。こうしたことは、スポーツジャーナリズムがやるべきでありながら伝えてこなかったことだ。

 

 もちろん、技術論を含めたスポーツとしての野球の面白さは、テキストではなくテレビやYouTubeなどの動画だからこそ伝えられるという部分もあるだろう。

 

 テキストによるスポーツ評論がやるべきことがあるとするならそれは、いたずらに「大人の男らしさ」にこだわり、アスリートを神格化して「消費」することではなく、野球ならば野球というスポーツの価値をより多くの人に向けて開いていくことではないだろうか。

 

 

 以上、中野慧氏の新刊『新書文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』(光文社新書)をもとに再構成しました。現代日本の野球文化はどのように誕生したのか、その歴史をまとめます。

 

●『文化系のための野球入門』詳細はこちら

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