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清野菜名『119エマージェンシーコール』後味の悪かった第1話の伏線をみごと回収! ぞわわっと鳥肌がたった良作【ネタバレあり】

偶然のミラクルが連発し、ドラマならではのご都合主義も多かった。だが、それでもめちゃくちゃ涙腺を刺激され、感動した。
3月31日(月)に最終話(第11話)が放送された清野菜名主演の月9ドラマ『119エマージェンシーコール』(フジテレビ系)。
横浜市消防局・通信指令センターが舞台で、119番通報先を受ける指令管制員たちの活躍を描く物語。
電話を受け、第一声で「119番、消防です。火事ですか、救急ですか」と尋ねる。そして通報者からヒアリングをおこない、適切に救急車、消防車の出動指令を出す。そんな緊迫したシーンが醍醐味の作品だ。
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■【ネタバレあり】「命をつなぐ」が一般人にも連鎖して
主人公・粕原雪(清野)たち指令管制員の見せ場は通報を受けているところなので、画(画面)の地味さは否めない。
事故や事件の現場を映像で描くパターンもあるが、現場は映さず通報者と声だけのやりとりで完結することが多い。しかし、そのように視覚情報を最小限にして現場を描くことこそが、真骨頂という異色のドラマである。
最終話でも高層ビルの爆破事件や商業施設のガス発生事件、大きな事件が2つ描かれたが、どちらも現場の建物内で救急救命士や消防士らが救助する場面が描かれることはなかった。
レスキューものの作品において、ダイナミックな見せ場になるはずのシーンを大胆にカットするというのは、制作陣としては勇気のいる演出だったろう。けれど結果的に、本作独自の個性が際立ったので英断だったと思う。
さて、最終話後半、ガス発生事件がまだ収拾がついていないなか、別件の事故の通報も相次ぎ、通信指令センター内は混乱の様相を呈していたのだが、ここで3つのミラクルが起こる。
まったく別々の3つの現場に、過去回のエピソードで登場した通報者がたまたまその場に居合わせるなどして、指令管制員と一般人が連携して難局を乗り切る様子が描かれたのだ。
以前、指令管制員の指示で父を助けてもらったことを恩義に感じて、今度は自分が困っている人を助けてあげようと思っていたという過去回の通報者など、「命をつなぐ」という本作のテーマが一般人にも連鎖し、広がっていったのである。
■第1話でパニクッていたヒステリック女の再登場に感動
なかでも筆者が涙腺を刺激されたのは、第1話の通報女性の再登場。
第1話でまだド新人だった主人公・雪が通報を受けた電動キックボード事故。運転していた男性が転倒し、そのまま亡くなってしまうという、いたましい結末だった。
そのときの通報者の女性は頭から大量の血を流す男性を見てパニクッており、雪が心臓マッサージをお願いしても拒否。「だからできないってば! そういうのはそっちの仕事でしょ!!」とヒステリックにキレていた。
その女性が最終話、ガス発生事件の現場に偶然居合わせ、意識を失っていた男性の心臓マッサージを今度は自ら買って出る。そして男性は無事に意識を取り戻したのである。
第1話では通報者の協力を得られず死亡者が出てしまっただけに、主人公が無力感に打ちひしがれるという後味の悪いエピソードだった。一見すると救いがなかったが、最終話でその通報者によって命がつながれるという伏線だったわけだ。
いい意味で「やられた~!」というのが率直な感想。初回だけの脇役だろうと思っていた通報者の再登場は、意表を突かれてぞわわっと感動の鳥肌が立った。
このように過去回の通報者が再び登場し、主人公たちと協力して命を救うという奇跡的な展開が3連続。さすがにご都合主義すぎるストーリーだった。
できすぎたミラクルの連発に、もしかすると冷めてしまった視聴者もいたかもしれない。だが、こんなきれいごとの奇跡を描けるのが “ドラマ” ならではのよさでもある。
――『119エマージェンシーコール』、“声” だけで事件・事故を描くという変化球的なドラマだったが、それでいて直球の感動も描ける良作だった。