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藤竜也「これまで一番価値があった言葉は『君には何にもない』」

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.02.10 16:00 最終更新日:2018.02.10 16:59

藤竜也「これまで一番価値があった言葉は『君には何にもない』」

 

 俳優藤竜也が、2月3日放送の『サワコの朝』(TBS系)に出演した。藤は20歳のときに、銀座の日劇前でスカウトされ日活からデビュー。映画俳優としてキャリアをスタートさせた。

 

「すぐうまく行くと思ったんですよ。何にもできなくても、石原裕次郎さんのような格好でタバコを吸って、波止場の船のロープをひっかけるところに足を乗せて、口笛吹けばすぐに(スター生活が)始まると思っていたんです。ところが待てど暮らせどそれが始まらない(笑)」

 

 代わりに始まったのが「ひたすら後ろを歩く」通行人役。せっかくスカウトされたがエキストラという待遇に、藤は「話が違うでしょう?」とぼやいていた。

 

 こんな状況を打破すべく、あるとき某有名監督の元へ直談判に向かったという。

 

「なんとかしなくちゃ。浮上しなきゃ落とし前がつかない。みんな『あの人に使ってもらいたい』って思ってる、評価の高い監督がいらして。僕も使ってもらえたら何か教えていただけるんじゃないかと思って、お訪ねしたんです、ご自宅に。一升瓶下げてね。『何か小さな役でも、使っていただけたらと思いまして、参りました』と。(すると)『うん、藤くんか。君は何にもないんだよ』と。つまり何か感じさせる空気っていうのかな、『わからないけど、とにかく君は何もないんだよ』って言われて」

 

 監督のストレートな言葉に、意外にも藤は落ち込まなかったという。

 

「僕はその通りだと思ったんです。これが人からいただいた言葉の中で、一番価値のある言葉だった。ああそうなんだ。だから何か役をいただいても、ふわっと足元に地面がついてないような、(ついて)いるような不安定な感じでいたのかと。(これがきっかけで)『何かあるとは何なのか?』と、自分で自分に問いかける戦いが始まったわけです」

 

 藤が初めて注目を浴びたのは1973年にテレビドラマ『時間ですよ』(TBS系)に出演してから。藤はいつもサングラスをかけている謎の男・風間役で人気を博した。

 

 その後、大島渚監督の『愛のコリーダ』(1976年)に主演。出演を決めた経緯をこう振り返る。

 

「ああ、こういう切り口があるんだなと思ってね。いちばん見せたくないところを見せて、男と女の心の繋がり(を表現している)。これは誰も世界でやったことがないなと。すごいラブストーリーに思えた。これはやんなきゃ損だと。これを逃げたら一生傷になると」

 

 しかし当時の事務所は出演に大反対。結局、辞めて映画に出演した。『愛のコリーダ』は社会現象となり、猥褻と表現を巡る裁判にまで発展。大島監督が7年後に無罪を勝ち取るも、藤も参考人として警視庁で聴取を受けたという。

 

 ちなみに藤は、その後2年間仕事が来なかったというが、「いい仕事をした」と後悔や不安はまったくなかったという。

 

 番組では「俳優は(世間の評判よりも)人間を演じることがプライオリティー」と断言していた藤。2017年の『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)では、引退した往年の任侠スター役を好演した。藤の自問自答の戦いはまだまだ続く。

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