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『坂本冬美のモゴモゴ紅白』・第7回/毎年はっきり覚えているのは、歌う順番や勝ち負けよりも “レンタル” 衣装のこと

坂本冬美
昭和の大・大・大・大・大スター、美空ひばりさんがお亡くなりになった年に放送されたのが、この『第40回NHK紅白歌合戦』です。
わたしにとっては2度めの、そして時代が昭和から平成に移って初めての『紅白』は、放送枠が大幅に拡大し、2部構成となりました。
放送終了時間は23時45分で変わりませんが、開始時間は、それまでの21時から19時20分スタートに変更。出場歌手も、前年の42組から54組へと大きく増員です。
『紅白』に出させていただく前は、一度でいいからあの舞台に立ってみたい……。そう思っていましたが、これが『紅白』の魔力とでもいうのでしょうか。一度あのステージに立たせていただいたことで、「今年も」に変わり、それがかなうと、「また今年も」へと、想いはいつまでも続いていきます。
はっきりとは覚えていませんが、 “勢いだけで『紅白』に出場した歌手” と言われたくないという意地のようなものもあったかもしれません。
事務所の社長から「決まったぞ!」と電話をいただいたときの喜びは、2年めのほうが大きかったような気がします。
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本番で袖を通した衣装は、スタイリストの方が用意してくださった、ファッションデザイナー・花井幸子先生がデザインされたペイズリー柄の赤と白のお着物です。
歌った順番や、誰とどんな会話をしたのか、紅と白のどちらが勝ったのかは、ほぼ覚えてはいませんが、毎年衣装のことだけは、なぜかはっきりと覚えていて……。これも坂本冬美、七不思議のひとつです(笑)。
ひとつだけ残念に思うのは、お着物から装飾品まで、すべてレンタルだったため、わたしの手元には何ひとつ残っていないことです。
ーーえっ!? 『紅白』に合わせて、事務所かレコード会社が作ってくれるのでは?
そう思っていらっしゃる方が多いようですが、違いますよ。それは大きな勘違いです。
作っていただいたのは、日本レコード大賞新人賞をいただいたときにレコード会社の社長さんがあつらえてくださった、白の着流しのお着物一枚だけです。島倉千代子さんをはじめ、先輩方からいただいたものはありますが、あとはすべて自前です。それは今も変わりません。ず〜〜〜〜〜〜っと、自前です(笑)。
2度が3度になり、4度になり5度になり、気がつくと昨年、石川・輪島市で歌わせていただいたのが、36回めの出場となりました。
ーー今年も、また……。
という気持ちはあります。自分自身のためというより、応援してくださったファンの方への恩返しとして、大晦日にあのステージから歌を、心を届けたいという気持ちは今も変わらず持ち続けています。
昭和、平成、令和と3つの時代の『紅白』に出させていただき、『坂本冬美 NHK紅白歌合戦の軌跡』というBlu-rayまで出していただいたことには、もうただただ感謝です。
ーー今年も選ばれたら?
もちろん、喜んでステージに立たせていただき、一年の歌い納めを、心を込めてお届けします。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋