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『坂本冬美のモゴモゴ紅白』・第8回/ぶっとい眉におかっぱのカツラ…二度と思い出したくない黒歴史(笑)

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記事投稿日:2025.06.28 12:15 最終更新日:2025.06.28 13:47
出典元: 週刊FLASH 2025年7月8日号
著者: 『FLASH』編集部
『坂本冬美のモゴモゴ紅白』・第8回/ぶっとい眉におかっぱのカツラ…二度と思い出したくない黒歴史(笑)

坂本冬美

 

 第40回に続き2部構成、19時20分からスタートした『第41回NHK紅白歌合戦』は、出場歌手がさらに4組増えて58組に。

 

 シンディー・ローパーさん、ポール・サイモンさんをはじめ、フィリピンからガリー・バレンシアーノさん、R&Bのアリスン・ウィリアムズさん、ロシアロックの父と呼ばれたアレクサンドル・グラツキーさん……と、国際色豊かなステージになりました。猪俣公章先生門下の妹弟子、マルシャ(マルシア)が、故郷ブラジルからの中継で『紅白』初出場を果たしたのもこの年です。

 

 で、わたしはというと……モゴモゴモゴ。猪俣先生からいただいたなかでも、最高に難しい難曲中の難曲、音程が上がったかと思うと急に下がり、またすぐに上がるという『能登はいらんかいね』を歌うことになって……。

 

 一年の歌い納め、歌手なら誰もが夢見る『紅白』の舞台ですから、ミスは許されません。万が一ミスをしてしまったら、それは自分の力のなさゆえです。

 

 

 なんなの、あの牛がもがき苦しむような酷い声は? あんなに練習したのに、そんな歌しか歌えないの?

 

 自分で自分を罵って、ジタバタして、また一からやり直せばいいのですが、メイクや衣装だけは自分の力ではどうにもなりません。

 

 ぶっとい眉に白いお着物。背には、これでもかというほどたくさんのお花を羽根のように背負わされて、とどめはおかっぱ(……)のカツラです。

 

 やめてぇ〜〜〜〜〜。泣き叫びたい気分ですが、デビュー4年めのわたしに、拒否権はありません。せめてもの抵抗は、トイレに駆け込んで太く描かれた眉を少しでも薄くするために、ぐいぐいと擦り取ることくらいです。

 

 二度と思い出したくない、黒歴史です。自分史上、最大最悪の黒歴史です(苦笑)。

 

 あぁ、それなのにです。わたしはすっかり忘れていたのですが、舞台袖でこの年初出場の夏ちゃん(伍代夏子)の背中をポンと押し、「大丈夫だから。頑張ってね」と声をかけて送り出していたみたいで、モゴモゴモゴ……(苦笑)。

 

 しばらくしてから夏ちゃんに、「あのときはありがとう。嬉しかったわ」と言われても、なんのことだかさっぱりです。

 

「言ってくれたじゃない?」

 

「誰が?」

 

「冬美ちゃんが」

 

「わたしが?」

 

「そう、あなたが頑張れって言ってくれたから緊張が解けたんだから」

 

「覚えてないけど、でもそれでうまく歌えたのならよかったね」

 

 ……まったく、なんという会話でしょう。物忘れが激しいといっても、限度というものがあります。夏ちゃん、本当にごめん(苦笑)。

 

 覚えていませんが、きっとわたしが初出場でガチガチに緊張していたとき、石川さゆりさんがしてくださったように、同じことを夏ちゃんにしてあげたかったんだと思います。

 

 ぶっとい眉に、お花の羽根を背負い、おかっぱのカツラを被った格好で、です。あー、いやだいやだ。そのときの画を思い出すのが怖いです。

 

さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中!

 

写真・中村 功、産経新聞
取材&文・工藤 晋

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