
朝ドラ『あんぱん』で主演を務める今田美桜
「アンパンマン」の作者・やなせたかしとその妻をモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』。ヒロイン・のぶ役の今田美桜の好演が話題だが、放送開始から3カ月の“折り返し地点”にきて、視聴率が異例のうなぎ上り状態だ。
「7月4日現在、戦時中を描き切り、“高知新報編”に突入しています。7月2日に放送された第68話は、平均世帯視聴率は17.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。放送開始以来初めて17%超えで、番組最高視聴率を更新したんです。前作『おむすび』の番組最高16.8%を上回りました。ふつうは、初回から段々と視聴率がさがっていくものですが、この現象は異例ともいえるでしょう」(芸能記者)
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視聴率が右肩上がりとなった原因は、どこにあるのだろうか。ドラマ評論家・成馬零一氏は次のように分析する。
「『あんぱん』の特徴は、なんといっても戦時下の描写が上手かった。これまでのNHK連続テレビ小説では扱わないような、戦地での激しい描写が多く、その分視聴者に与える負荷が強かったんです。
NHK連続テレビは男性主人公という設定はあまりなく、最近では2020年前期放送『エール』。ここでは戦地が描かれていたけれど、男性主人公の戦地での様子を描くことは、朝ドラでは基本的にありません。その点『あんぱん』は辛い描写も多く、朝に観るにはキツイという視聴者もいたのではないでしょうか。
辛い経験を徹底的に描いたから現在、放送中の戦後の場面が輝き、視聴率もアップしているのだと思います。さらに現在視聴率が“右肩上がり”なのは、辛い戦争描写で一度離れた視聴者が、その後の展開が気になって戻ってきた、という現象なのだと思います。
これからは視聴者も知っている話、『アンパンマン』が生まれるきっかけやのぶと(北村匠海が演じる主人公の)嵩が結ばれ結婚するなどの要素が出てくるので、安心して見られる展開になると思います。となれば、今後さらに視聴率も上がってくるのではないでしょうか」
『あんぱん』で特異だったのは、戦時中の描写だけではない。主人公の描き方も異色だったと成馬氏は振り返る。
「今田美桜さんが『愛国の鑑』と呼ばれ、戦時下の空気に染まっている女性を演じているのも興味深かったですね。従来の朝ドラでは、戦時下の空気に疑問を持っている女性がヒロインになっていたのに対し、のぶのような日本が勝つことを信じている女性をヒロインに据えた今作の視点は新しかったと思います」
戦争に対する意外な視点が功を奏したのか、現代パートに希望がより感じられる作りとなった『あんぱん』。このままさらに視聴率は上昇していくのだろうか。