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松本潤『19番目のカルテ』求められるのは「きれいごと」でない解決策…中途半端にお茶を濁したラストにならないことを祈る

松本潤
松本潤演じる主人公の「きれいごと」を、どう説得力を持って問題解決まで描けるか、そこにドラマの成否がかかっている気がする。
7月13日(日)に第1話が放送され、7月20日(日)は選挙特番で放送休止したため、今夜(7月27日)に第2話が放送される日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)。
主演の嵐・松本潤が演じるのは、ある総合病院に新設された「総合診療科」の医師・徳重晃。
日本の医療界は高度に発展しており、脳外科、眼科、整形外科など18の専門分野に分けられているが、複雑な症状でどの診療科に受診すればいいかわからない患者がいたり、各科をたらいまわしにされてしまう患者がいたりと、課題も多かったそう。
そんな問題を解決するために誕生したのが、19番目の新領域として加わった「総合診療科」。臓器、性別、年齢にかかわらず患者を診察し、どんな病気にかかっているのかを導き出す役割を担う。
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第1話では、全身の痛みを訴えて整形外科を受診したものの、検査の結果、異常なしと診断されていた女性患者に対し、徳重が時間をかけて丁寧に向き合う問診をおこない、病名が判明して一件落着となった。
徳重の武器は、高難度の手術をこなすゴッドハンドでもなく瞬時にすべてを見抜く天才的頭脳でもなく、その「問診」。徹底的に患者の話を聞き、訴えを一つ一つ丁寧に受け止め、ときには患者のウソを見抜き、心の状態までも含めて総合的に診察をおこなっていく。
■患者1人1人に丁寧に向き合うのは理想論?
さて、前述したように、検査をしても異常なしと出てしまう患者の病名を解明して “めでたしめでたし” となったが、実は第1話では、本作で提示している医療業界の問題点はいっさい解決していない。
ざっくり言うと、病院の経営難、医師の人件費、医師の労働時間などの問題だ。
まず、整形外科科長の成海(津田寛治)が、同科の新米医師・滝野(小芝風花)に、「10分な。それが俺たちに与えられた(患者1人あたりにかけられる)診察時間だから」と厳しく指導するシーンがあった。
それは、外来の初診料も再診料も報酬は定額で決められており、診察時間が長くても短くても変わらない。そのため、経営を考えると患者1人1人に時間はかけられず、より多くの患者を診ないと病院の収益は増えない、という理由らしい。
別のシーンでは、成海は、徳重が患者1人に対して複数の科の医師を巻き込んで診察を進めていることを見かねて、「それやると人件費ばっかりかかって効率悪いこと、ご存知ですよね?」と詰め寄ってもいた。
さらに終盤のシーンでは、総合診療科の設立に否定的だった外科部長の東郷(池田成志)が、「理想はけっこう」「過度な夢は毒となる。この(徳重の)影響が他の科に出たとき、医療は崩壊します」と語るシーンまであった。
要するに、今回の徳重のような丁寧な診察を患者1人1人におこなっていくと、診療報酬は一定なのに医師の人件費ばかりかさんで、病院経営が赤字になってしまう。かといって、医師にサービス残業の長時間労働させるなんてことも、「働き方改革」が進むいまのご時世ではナンセンス。
第1話を見る限り、徳重の診察方針は理想論の「きれいごと」になってしまっているわけだ。
■最終話にどんな “答え” を出してくれるのか
総合診療科に来る患者がまだ少ないため、徳重も1人1人丁寧に時間をかけられているが、現実問題として、仮に患者の数が10倍になったら、同じ時間や丁寧さといったクオリティを維持できるのかは大いに疑問。
徳重がボロボロになりながら、24時間・365日働き続けて解決するといった、旧態依然としたヒーロー像を描いて美談にすることはできないだろう。なぜなら、それはただ単に論点ずらしをしているだけになってしまうからだ。
医師同士に信頼の絆を芽生えさせて、協力・連携することで対応していくとしても、けっきょく診療報酬や人件費の問題にぶち当たるので、根本からの解決にはならない。
本作が提示している問題点は、現実の医療界でも起こっているのだろうから、もし劇中で抜本的解決策を示せるのであれば、とてつもなく社会的意義のある素晴らしい傑作になるだろう。
しかし、なかなか解決策が見いだせない難解な問題だからこそ、現実の医療界に横たわっているわけだ。
中途半端な対応策でお茶を濁すとか、精神論で強引にめでたしめでたしにすることなく、きちんとした納得のロジックに基づいた解決策を提示してくれなければ、わざわざこのテーマにした意味がなくなってしまう。
松本潤演じる徳重の診察方針はまだ「きれいごと」でしかないが、最終話までにこの問題提起に対して、どういう “答え” を出していくのか、見ものである。今夜放送の第2話も楽しみたい。