エンタメ・アイドル
『坂本冬美のモゴモゴ紅白』第13回/ふだんは気にならないはずの審査員席に、憧れの人が

左から 香西かおりさん、伍代夏子、藤あや子、坂本冬美
1月に阪神・淡路大震災、3月にオウム真理教による地下鉄サリン事件…と、暗い出来事が続いたこの年、『紅白歌合戦』がテーマに掲げたのは、新しい年への希望を託した「ニッポン新たなる出発」。
初出場は、わたしと同期デビューの “のりピー” こと酒井法子ちゃんをはじめ、11組の方々ですが、そのなかでひときわ大きな注目を集めたのが、 “アムラー” なる社会現象を巻き起こした安室奈美恵ちゃんでした。当時、安室ちゃんはピッカピカの18歳。全身緑の衣装を纏った安室ちゃんは、眩しいくらい輝いていました。
審査員席に並ばれたのは、この年日本一になったヤクルトの古田敦也捕手。翌年のアトランタ五輪で銀メダルに輝いた “ヤワラちゃん” こと田村亮子さん。翌年の大河ドラマ『秀吉』で主人公を務められる竹中直人さん。現役を引退された元読売巨人軍の原辰徳さんほか、11人の方々。
ーー歌っていて、審査員の方は気になりますか?
ファンの方に聞かれることがありますが、『紅白』に限らず歌に集中するために、客席の後ろのほうを見て歌っているので、審査員の方が気になったことはありません。
毎回、オープニングでお一人おひとり紹介されているのを見ながら、 “ほぅ” とか “うおーっ” とか “おきれいだなぁ” とか “わっ、いい男” とか、心の中で呟いている感じです(笑)。
でも、この年だけはちょっと違いました。理由は……モゴモゴモゴ。顔を上げるとそこに、宝塚歌劇団を退団された天海祐希さんがいらっしゃったからです。
初めて天海さんを観たのは、宝塚の月組公演。涼風真世(すずかぜまよ)さんがオスカルを、天海さんがアンドレを演じた『ベルサイユのばら—オスカル編—』でした。
舞台に出てきた天海さんを見るなり、あまりのカッコよさに、わたしはしばし言葉を失ってしまいました。
語彙力が乏しく、うまく言葉で表現できませんが、「舞台に立つために生まれてきたようなカッコよさ」とでも言えばいいのでしょうか。一瞬で虜になっていました。
58年の人生で、一瞬でボーっとなってしまったのは、最初がトシちゃん(田原俊彦)で、次が天海さん。その次が、大河ドラマ『炎立つ』でご一緒した豊川悦司さん。リハーサルで一瞬すれ違ったときに、 “こんなにいい男が世の中にいるのか!?” と、口をあんぐりと開けたまま、しばしボー然としてしまいました。
で、ビョン様(イ・ビョンホン)。ラスト5人めが、今をときめく、Snow Manの目黒(蓮)くんです。
ーーえっ!? わたしがジャネット・ジャクソンふうのキャップを被っている写真を見たことがある!?
それはあれですよ。20代のころ、ジャネット・ジャクソンに憧れたことがあって、モゴモゴモゴ(苦笑)。でも、ほんの短期間だったので、わたしが一方的に “推し活動” をしているのは5人だけです。
この年、わたしが歌わせていただいたのは、1993年に亡くなった師匠・猪俣(公章)先生からいただいた大切なデビュー曲『あばれ太鼓』です。
『紅白』のステージに立たせていただけるようになったのは、デビュー2年めですから、『あばれ太鼓』を歌わせていただくのは、この年が初めて。
先生のことを思いながら、少しだけ審査員席にいらっしゃる天海さんの目を気にしつつ、心をこめて歌わせていただきました。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋