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「嘉風」超ロングインタビュー「僕にとって相撲は趣味です」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.09.09 16:00 最終更新日:2018.09.09 16:00
「僕の相撲を見て、勇気が出たとかね。病気が治ったとか、連絡をもらうことがあるんですよ。正直、その人のためにやってるわけじゃない。でも、やってて良かったと思いますね。だから、記録よりも記憶に残る相撲を取っていきたい」
自分のためにやっていたはずのことが、誰かに影響を与える。嘉風関も、お客さんも、みんなが幸せになっていく。良い循環が回っている。
「30までは、取組が終わっても誰も写真を撮りになんか来なかった。そういう人気がない時を経験していますから、美味しくないものをずっと食べてきたから、うまみがわかるんですよ。
今は勝っても負けても、お客さんの前で態度を変えないようにしています。正直負けて帰る時は、気持ちのいいものじゃないですよ。でも、関係なくサインはするし、写真撮影にも応じる。そういうのは大切、いや義務だと思ってます」
今が楽しくて、相撲が大好きだという嘉風関。趣味だからこそ、相撲への深い感謝の念を持っているように感じた。
「関取になれたら一人前、と言われて、幕内にもなれたし、三賞も取れた。横綱に勝つことも叶った。まあ、だいたい手に入れたわけです。もちろん大関や横綱になるとか、優勝とかは残っていますが。この世界に入った当初、今のような自分が想像できていたかというと違うわけで、だから割とお腹いっぱいではあるんですよね」
「引退の時期など、考えたりもするんでしょうか?」
「僕は、不完全燃焼で終わりたくないんですよ。モヤモヤした状態で土俵に上がって、そこで大怪我してしまって、それでもう相撲ができないとなって引退、というのが一番怖い。物凄く悔いが残ると思うんです。だから毎回、全力を出していきたい。これで終わってもいい、これが最後の相撲になっても悔いがないように、と」
覚悟の重みを伴って、その言葉は出た。
「自分の力を思い切り出しても通用しなくなった時が、引き際なんでしょうね。だんだん、力が出せなくなってくるんだと思うんですよ。でも、そうなった自分が今のところ想像できない。だから永遠に相撲取りでいられるんじゃないかって、そんなことを思います」
不完全燃焼で終わらせたくないからこそ、全身全霊で挑む。気持ちも心も研ぎ澄まされていくから、永遠に終わりは来ないような気もする。どこか矛盾しているような、しかし煮詰まって充実した精神状態。
嘉風関は、そんな日々を送っている。その行き着く果てには何があるのか。
彼の最後の相撲が永遠に来ないように。そして、来たとしたら完全燃焼できるものであるように。僕も、祈りたくなった。
嘉風 雅継(よしかぜ まさつぐ)
1982年生まれ。大分県佐伯市出身。前頭五枚目。尾車部屋所属
二宮敦人(にのみやあつと)
1985年生まれ。小説作品に『最後の医者は雨上がりの空に君を願う』。初のノンフィクション作品『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』が12万部を超えるベストセラーに
(週刊FLASH 2018年7月17日号)