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M-1グランプリ決勝の見どころをチーフプロデューサーに聞く

エンタメ・アイドル 投稿日:2018.12.02 11:00FLASH編集部

M-1グランプリ決勝の見どころをチーフプロデューサーに聞く

(C)ABCテレビ

 

 漫才日本一を決める「M-1グランプリ2018」が、本日12月2日に生放送される(決勝/18:34〜、敗者復活戦/14:30〜、ABCテレビ・テレビ朝日系)。

 

 SmartFLASHではこれまで、ファイナリスト9組のインタビューをお届けしてきた。最後に話を聞いたのは、M-1グランプリ初回から今年まですべての大会に携わり、2007年からチーフプロデューサーを務める辻史彦氏。大会の歴史や現在のルール、そして今年の見どころまでをたっぷり語ってもらった。

 

 

――2001年の初回から今まで、M-1はどう進化してきたのでしょうか。

 

 2004年までは「最後に頂点に立っているのは誰だ!」という雰囲気の、格闘技色が強い大会でした。しかしそれだけでは出演者はもちろん、みんなが緊張しますし、視聴者の方々がついてこれないのではないかと考えて、2005年にバラエティー色の強い、ラスベガスのショーのような雰囲気に変えて今に至っています。

 

「自分たちがおもしろいことを証明するガチンコの場」であり、芸人さんがやっていることは変わっていませんが、トーンや演出方法は変化していますね。

 

――M-1グランプリを作るにあたって、大事にしていることは何ですか?

 

 1回戦から準決勝までの予選も含めて、本当におもしろい人が勝つこと。お客さんのウケ具合や知名度、去年からの伸び具合などいろいろな要素があります。長くやっていると、この組に勝たせてやりたい、成長をほめてあげたいみたいな気持ちが出てくることもある。でも、目の前、その場の漫才がどれだけおもしろいかにフォーカスすべきで。ピュアに「おもしろい」の一点だけでジャッジしています。

 

 テレビ番組を作る際の考えとは少し違う面もありますね。視聴率が取りたいだけであれば、テレビマンなので「あのコンビが決勝に来てくれたらいいなぁ」という思いももちろんあります。でも、おもしろくないと決勝の場にはふさわしくないし、大会を作ってくれた方々に対して申し訳が立たない。

 

 ABCテレビは伝統的に「お笑いのABC」と言われてきました。先輩方からも「芸人さんを愛して、お客さんを愛して。愛で番組を作りなさい」という教えが脈々とあるので、僕だけでなくみんなが芸人さんと向き合って、ある意味一緒に戦っていると思っている。

 

 時にはダメ出しもしなければいけないし、勝ったら一緒に美味しい酒を飲み、負けたらともに涙を流す。番組作りに対して清くありたいという思いがありますね。M-1に挑戦してくれる芸人さんたちが、僕ら以上に清く、1年間かけて漫才に向き合って挑んでくれるので、そこには背けない。同じ思いで、と番組作りをしています。

 

 年々進化はしていると思います。特に昨年から取り入れた「笑神籤」(えみくじ ※ネタ披露順を事前に決めず、生放送中に一組ネタが終わるごとにくじを引いて、次のネタ披露コンビが決まる)は、芸人さんにはすごくつらいことを強いていると思うのですが、結果的に芸人さんに還元されている。


 
 長く続けていると、どこか予定調和というか、見ている方々が頭のなかでなんとなく想定した通りになっていきがちですが、笑神籤が生み出す展開はお客さんもどうなるかわからない。予測不能で、どんどんストーリーが紡がれていくのが、我が番組ながらすごいなと。お笑いがまた次のステージに上がった気がしています。

 

 笑神籤については「本当は仕込んでるんでしょう〜!?」などと言われることもありますが、ご覧になった方はおわかりかと思いますけど、恐ろしいほどチープでアナログなおみくじですよ(笑)。でも、ちゃんと芸能の神様である「車折神社」へ持って行って、「楽しめる、いい出番順をお願いします」とお祓いもしてもらっています。

 

――辻さんが一番思い出に残っている大会は?

 

 難しいですね……。強いて言うなら、自分の中で新しいM-1を目指した2005年ですね。そこで生まれた王者がブラックマヨネーズ。当時全国的には無名だったし、正直見栄えもよくない。そんな彼らが一夜で人生を変えた。すごいことが起こってるなと感じました。そして、その翌年に、2005年に涙をのんだチュートリアルがものすごいパフォーマンスを見せて完全優勝とストーリーが繋がっていった。この2年は印象深いですね。

 

――M-1には決勝当日に敗者復活戦があります。敗者復活戦をやる理由は?

 

 確かに、準決勝の場で10組決めようと思えば決められるんです。でも、やっぱり最後にもう一度チャンスを作ってあげたい。もう一度チャンスが残っているという希望は、彼らをもう一歩前進させる気がするし、負けるにしても終わり方、自分なりのケリをつけるための大事な期間だと思うんです。敗者復活戦は僕たちのためでもあり、彼らのためにも必要なものだと思っています。

 

 もちろんそれだけの思いで勝ち上がってくるわけですから、何か波乱を起こしますよね。2016年までは敗者復活組のネタ順はラスト10番目固定で、日本人の判官贔屓気質からいうと「行けー!」という思いが乗ったりで有利になる面もありましたが、笑神籤でフラットに順番が決まるという方法で解消されたので。

 

 でも、この組が1番じゃないといいな……と思う組ほど、1番手を引くんですよね。先日も千鳥のお2人と話したんですが、「僕ら2回連続で1番でしたから!」と言われました(笑)。

 

審査員を務める松本人志

 

――松本人志、上沼恵美子などベテラン勢に加えて、サンドウィッチマン・富澤たけしなど現役で舞台に立っている漫才師も審査員を務めますね。

 

 審査員はリスクが大きい仕事だと思います。上沼さんも去年、「点数つけることで好感度が下がる!」とお怒りでしたが(笑)。好感度を上げようと思えば高い点数をつければいいわけで、そんななかで血の出るような思いでジャッジをしてくださっている。正直、なかなかなり手がいるわけではないのですが、みなさんに納得していただける方にお願いできたと思っています。

 

――審査員を務めた芸人さんは、その後、舞台に立つ際にお客さんから「審査員の漫才だ」と厳しめに見られるので大変だと聞きました。

 

 先日、中川家の剛さんも「M-1後しばらくはうっすら滑る」と言っていましたね。本当に申し訳ない。それでもみなさん後進のためと思って引き受けてくださる。リスペクトしかないです。

 

――最後に、今年の見どころを教えてください。

 

 ファイナリスト全組に優勝の可能性がある気がして、今年は本当に楽しみにしています。今までは、決勝初進出組については「2年後くらいに優勝あるかな」みたいな見え方もあったと思うんですが、今年は誰が優勝してもおかしくない。


 
 2年連続準優勝の和牛がどうケリをつけるか、ラストイヤーのスーパーマラドーナやジャルジャルがM-1自体にどうケリをつけるか。初決勝にしてラストイヤーのギャロップが最後どうかき乱すか。それを若さで止めにくる霜降り明星がどう立ち回るか……。役者がそろっていて非常におもしろいと思います。

 

 ネタ順がわかっていたら、ある程度「トップがこうきて、その後はこうなるだろうな……」と想像できますが、笑神籤なので始まってみないとわからない。大会を作る側としても楽しみでしかないです。

 

※「M-1グランプリ2018」決勝は今田耕司・上戸彩を司会に、12月2日(日)18:34からABCテレビ・テレビ朝日系で生放送

 

取材&文/松田優子

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