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ネタは二の次?「女芸人が売れるための秘策を考える」会議
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.12.13 16:00 最終更新日:2018.12.13 16:00
「女芸人研究家」とも称される、お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳。自らも女コンビ「高僧・野々村」として活動後、現在は放送作家やお笑い養成所の講師として活躍する野々村友紀子氏。
女コンビ芸人について深い知識を持つ2人が、現状や注目コンビについて語った。
――女芸人を取り巻く環境は変わってきている?
野々村「変わりましたね。昔は女芸人が辛いことをしたり、体を張ると引かれていました。それが、モリマンや森三中、『イッテQ!』(日本テレビ系)に出ているメンバーなどが道を切り開いていった。
それと同時に、『女芸人も男芸人と同じように見ていいんだ』という見方がされるようになったと思います」
新道「見つづけないと慣れないですからね」
野々村「私が芸人だったころは、『女芸人』という言葉自体がまだ浸透していませんでした。女芸人という括りを『芸人に男も女もない! なんで「女」とつけるんだ!』と、否定的にとらえる人もいます。
でも、この十数年で女芸人が活躍してきたからこそ生まれた括りなので、私はポジティブにとらえていますね」
――野々村さんが芸人をしていたころはどう考えていた?
野々村「今よりも圧倒的に女芸人が少なかったので、やりづらさはありました。
劇場に見に来るお客さんのほとんどが若い女の人で、舞台に出ていったら、まずは敵意から始まって、『絶対笑うか!』という目で見られる。そのお客さんを笑わせるには、めちゃめちゃおもしろいか、めちゃめちゃ愛されるしかないんです。
当時でも、女芸人のネタは『彼氏欲しい』や『あんたブスやな』という傾向のネタが多かったので、その方向だと目立てないと思っていました」
――女コンビだからこその辛さはありました?
野々村「ネタを考えるとき、『これ、男コンビがやったらおもしろくなるやろうな』と、思うことは多くありました。たとえば取調べのコントで、女刑事と女泥棒だと、全然話が違ってしまう」
――女刑事や女医など、「女」がついてまわりますね。
野々村「『女』が1個乗っかっちゃう。男が女役をやると笑いに繫がるけど、女が男役をしても、さほど笑いにならなかったり。そういう面で苦しんだことはありますね」
――まずネタで売れて、その先が広がるのが王道と見られてますが、女芸人、特に女コンビはその限りではない?
野々村「ハリセンボンやガンバレルーヤ、おかずクラブを知っていても、ネタは見たことない人が多いかもしれません。キャラや見た目のインパクトで世に出ていく人が多い」
――ネタは二の次でいい?
新道「売れることに重点を置くならば、そう思います。下積みが長くなると、どうしてもネタに愛を感じすぎて大事にしてしまう傾向がありますが、錯覚でもあるんですよね」
野々村「二の次とまではいえませんが、コンビだと最初にテレビに出ていくときは、あまりネタのイメージがないかも」
新道「個人的には、最近オンナを出すパーセンテージみたいなことを考えているんです。昔でいうと、モリマンさんは0パーセントでパイレーツさんが100パーセントみたいな」
野々村「私が女だからか、考えたことがなかったです。女芸人側からしたらイヤかもしれませんね」
新道「ふれられない領域というか、敏感なところですよね」
野々村「たとえば、ハイヒールさんは衣装が昔からミニ丈。ずっと女性らしさを大事にしていると思います。
あと、オンナ度とは離れますが、女コンビを語るのに絶対外せないのが、今いくよ・くるよさんと海原千里・万里さん。女コンビの礎を作ったレジェンドです」
新道「オセロさんはきれい系でありながら体も張っていた。その結果、『きれいだしうまい』という方向に落ち着いた。パイレーツさんみたいに見た目の余韻だけでいくのもいい」
野々村「海原やすよ ともこさんも、漫才師としても女性としても充実されています。元ジャニーズスターと元プロ野球選手の奥さんですよ……。私の中では100パーセント(笑)」
新道「オンナ度の高さで商品価値を高めるというのも、ひとつのやり方ですよね」
しんどうたつみ
1977年4月15日生まれ 千葉県出身 お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」として、『M-1グランプリ』決勝進出の経験を持つ。現在、『東京スポーツ』で「女芸人馬鹿売れ前夜」を連載中
ののむらゆきこ
1974年8月5日生まれ 大阪府出身 20代半ばまで芸人として活動後、放送作家へ転身。2冊めのエッセイ『あの頃の自分にガツンと言いたい』が発売中
取材・文 松田優子
(週刊FLASH 2018年12月18日号)