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市川海老蔵とV6三宅健に「おとなの会見」の真髄を見た
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2019.02.11 06:00 最終更新日:2019.02.11 06:00
歌舞伎俳優の市川海老蔵とV6の三宅健、そして演出の三池崇史氏が2月4日、都内で行われた「六本木歌舞伎」の第3弾「羅生門」の製作発表会見に出席した。
三宅はジャニーズの舞台「滝沢歌舞伎」に3年連続で出演しているが、本格的な歌舞伎は初挑戦となる。制作サイドは、その「滝沢歌舞伎」をきっかけに三宅の芝居に対する情熱や愛情を知ったことが、今回の出演オファーにつながったと話す。
芝居が歌舞伎だけに、会見には3人とも紋付き羽織袴姿で臨み、会見場はピリッとした雰囲気となった。
もうひとつピリッとさせたのが三宅の存在。「嵐」の活動休止会見から1週間しか経っていないため、三宅の発言に注目が集まっているからだ。
主催者側も、取材陣の思惑はわかっているから、こういう場合はたいてい会見前に「本日の会見やその後の囲み取材は、歌舞伎の内容に限らせていただきます。それ以外の質問が出た場合は打ち切らせていただきます。ご了承ください」などと、前もっての注意アナウンスがされるのが常だ。
ところがこの日は、まったくアナウンスなどないまま、会見が始まった。
結果、会見も囲みも、これまでにないほどバランスのいい、大人の対応で後味のいい爽やかな会見となった。いったい、どういうことか。
最初、「芥川龍之介の代表作『羅生門』は、生きるための悪という人間のエゴイズムを描いたもの。それを、どう演出し、どう、演じていくかが難しいところ」などと海老蔵が話し出すと、三宅は「まさか自分が歌舞伎に出演させていただくとは考えもしなかった」と緊張した面持ちで話し、「ズブの素人の私が、小さいときから修練されてきた歌舞伎俳優さんと同じ舞台に立たせていただけるということは、生涯に一度あるかないかだと思うので、これが最初で最後のつもりで……」と続けると、海老蔵が「えっ、最後なの?」と笑顔で突っ込む。
対して三宅は、「それくらい無我夢中で稽古に励みたいなと思っております」と、あわてて言葉を返す。
このやり取りが、緊張感でいっぱいだった会見場に笑いをもたらし、一気に和やかなゆるい空気に変わった。
さらに、三宅の第一印象を聞かれた海老蔵が「V6がデビューしたときに、一番格好いいと思ったのが三宅さん。この人モテるんだろうなと思ってました」と、笑わせた。
過度のお世辞や、誉め言葉ではなく、ちょうどいいバランス感覚だからこそ、和み、ゆるむのだ。
記者から質問が出た。
「海老蔵さん、歌舞伎に馴染みがない人が見に来ると思いますが、見どころをアドレスしてください」と。海老蔵は何と答えるか、いっせいに目と耳が海老蔵に集まった。
「三宅さんのファンが初めて歌舞伎を見る、という、想定でお答えします」と、質問の意図を海老蔵自らがキチンと解いた上で、こう答えた。
「基本、三宅健さんを見ていればいいんじゃないでしょうか」
意外な答えに、ドッと笑いが起きた。また、和んだ、ゆるんだ。
三宅は「いやいや、それはダメですよ! 海老蔵さんを観なきゃ」と、驚いたように海老蔵さんを見る。
海老蔵は笑顔で正面を向いて「三宅さんを観るなかで、『歌舞伎ってこういうふうにやるんだ』って興味を持っていただければいいわけですよ。ですから、三宅健さんを観る」。
見事な回答だ。すべてが丸く収まる答えだ。小気味いい言葉に、会見場が優しい空気に包まれた。こんなことは滅多にない。思わず「十三代目(市川團十郎)」と、心のなかで叫んだ。
この後の囲み会見もスムーズにいき、三宅に聞きたかった「嵐の活動休止を、どんなふうに受けとめてますか?」との質問も、主催者サイドに止められることなく聞くことができた。
三宅は「非常に残念なことをお伝えしないといけない会見ではあったのですが、そのなかでも、嵐が嵐らしく、ファンの皆様へ誠心誠意伝えたいという意志がキチンと伝わりましたね。僕は衣装もいいなと思いました。それぞれお互いの『色』を使いあっていたスタイリングだったんですけど、お互いがお互いを思いあっているメッセージが、言葉だけじゃないものが込められているところに、ファンの皆様への思いを感じて、すごく素敵だなと思いました』と、心のこもった感想を述べた。
洋服の色に込められたメッセージは、嵐のメンバーたちが伝えたいことのひとつだったのだろう。三宅も、だからあえて、この答えを言ったのだろう。
海老蔵が、三宅が、三宅が言うところの嵐と、嵐のファンと、取材陣が、ちょうどいいバランスで納得できた稀有な会見だった。(写真・文/芸能レポーター川内天子)