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魔夜峰央「中年おじさんは心の中の美少年を素直に出そう」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2019.03.10 11:00 最終更新日:2019.03.10 11:00
埼玉をディスりまくった映画『翔んで埼玉』が好評だ。初日から3日間の累計で25万人弱を動員し、興行収入は10億円を超えた(2019年3月5日時点)。映画の原作は、魔夜峰央の同名マンガだ。
劇中では二階堂ふみが少年として登場したり、GACKTと伊勢谷友介が熱いキスを交わしたり、美少年同士の恋愛、いわゆるボーイズラブ要素も再現されている。
『パタリロ!』をはじめ、魔夜作品では、こうしたボーイズラブや「クトゥルフ神話」など、いまでは比較的知られるようになった題材をいち早く作中に取り入れている。はたして、時代を先取りしているという意識はあるのか、話を聞いた。
「『パタリロ!』の世界は、自然と受け入れられたと思いますね。ただ、男性同士の恋愛を描くことがどこまで許されるのか。ギャグで描くこと自体を反対される方もいらっしゃいますので」
時代を先取りしてる感覚はないようだ。
「先見の明もないですし、漫画が上手いかといわれれば、それもないと思います。
ただ、オリジナリティだったり、独特という部分に関してはあるのではないかと自負しています。私は生まれたときから、人と同じことをするのがとにかく嫌いだったんです。
それは漫画家になってからも同じ。漫画家は締め切りを破るのが当たり前という常識があるでしょ? だから私は、逆に締め切りを必ず守る。
外見にしても、漫画家は、たいていは見た目とか気にしないと思うんです。でも、私の場合は人前に出るときは正装に近いしっかりした服装でいたい。
こういった、他人がしないことをしてきたから、それがオリジナリティにつながったのかもしれません」
独自のスタイルは、その画にも出ている。
「私はペンタッチも普通の漫画家さんとは違うと思います。顔の輪郭って、普通は真ん中のほっぺの部分のラインが太くなって膨らむのですが、私はそれが嫌で、逆のペンタッチで細くするんです。他の方が細くする部分は太く描いています」
主人公のキャラクターに関しても革新的な取り組みをした。
「普通は主人公こそ “顔の表情を豊かに” というのが漫画の常識なのですが、『パタリロ!』ではパタリロの顔がモブキャラのようにどのコマでも同じなんです。そういったやり方で逆に個性を出そうとしました」
ストーリー漫画のなかに唐突に4コマ漫画が挿入される「スト4」というスタイルも有名だ。
「ストーリー漫画に4コマ漫画を合体させた漫画を思いついて、先輩漫画家・鈴木光明先生に聞いたら、『それ、手塚治虫先生がやっていた』という答えでした。よく私が考案したと言われるのですが、最初にやったのは手塚先生なんですよ」
『眠らないイヴ』は年1話のみの連載だったが、18年間かけて単行本化。また『パタリロ!』も昨年100巻をむかえ、現在は200巻を目指して連載中と、魔夜ワールドが止まることはない。
「行き当たりばったりが私の強み。計算して描いたら、絶対に読者に読まれてしまいます。私自身がこれから先の展開をわからないまま描いているので、読者にも面白いのだと思います。
実は、3年前に体を壊して倒れたんです。その時期は本当に体調が悪かったのですが、治ると同時に気力も戻ってきました。
体調が悪い時期の『パタリロ!』では、新たな美形キャラを描く気にもならなかった。美形キャラのポイントの睫毛が美しい線で描けなくなってしまったんです。
でも、気力が戻ると、また睫毛も綺麗に書けるようになり、美形キャラも描けてます。まだまだ、新たな気持ちで漫画を描けるかなと思っています」
最後にFLASH読者世代にこんなエールを送ってくれた。
「私のトークショーでも、40代から50代の男性が増えているんです。おじさんたちは誰もが美少年の心を持っているんだから、みんな自分の中の美少年の心を素直に出せばいいのです。
隠そうとするからつらい。社会人として、一人前の大人として無理に振る舞おうとするからつらい。私の漫画のキャラクターたちのように、心の中の美少年を素直に出せば、もっと楽しく生きていけますよ」
魔夜峰央のオリジナリティも、心の中の美少年を素直に出した結果なのだ。
まやみねお
1953年3月4日生まれ。新潟県出身。1973年『デラックスマーガレット』でデビュー。1978年『パタリロ!』でブレイクし、外伝を含めると100巻以上の人気シリーズとなる。2015年に復刊された『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』(宝島社)が70万部のベストセラーに。