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累計3800万部…作者が明かす『キングダム』攻略法

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2019.04.19 11:00 最終更新日:2019.04.19 11:00

累計3800万部…作者が明かす『キングダム』攻略法

 

 2006年に連載が始まった、No.1青年マンガ『キングダム』。紀元前221年に中国を統一した秦の始皇帝と、仲間たちを描く同作の人気は、他の追随を許さない。作者の原泰久氏へのインタビューから、その魅力を紐解いていく。

 

「司馬遷が記した『史記』という歴史書がとにかくおもしろく、また一般的にはあまり詳しく知られていない時代の内容だったため、『これを題材にしたら、見たことがないマンガが生まれるのではないか』という想いで、『キングダム』を描き始めました」

 

 

 司馬遷の『史記』。具体的には、春秋戦国時代の中国を舞台にした物語で、のちに始皇帝となる若き秦の王・えい政と、下僕階級出身ながら中国全土に名が轟く「天下の大将軍」になることを夢見て戦場を駆け抜ける、少年・信の成長がテーマの中心。「歴史を知らないと楽しめないのでは?」と思うかもしれないが、心配はいらない。

 

「かなり昔の時代(紀元前3世紀前後)なので、残されている記述が少なく、自由に行間を膨らませやすいという点は取り組みやすかったです」(原氏)

 

 じつはエンタテインメント作品向きのテーマなのだ。そこに、大学卒業後、システムエンジニアとしての勤務経験がある原氏らしい、分析と準備が加わる。

 

「『史記』は国や人物ごとに、いくつもの項目に分かれて書かれているのですが、エクセルを使って、戦争やエピソードを年代順にまとめてオリジナルの年表を作り、どの要素をマンガに落とし込んでいくのか考えるという作業を、デビュー前からしていましたね」

 

 こうして、2006年1月の『週刊ヤングジャンプ』で連載が始まった。しかし、思っていたようにはウケなかった。

 

「最初の1年間は、なかなか人気が取れず、ずっと低空飛行でした。自分の中では『おもしろい』と思う物語を全力で描いているつもりなのに、それが結果として実らない時期はつらかったです。

 

 そのことを、師匠の井上雄彦先生に相談したところ、『主人公の瞳を大きくしてみたら』というアドバイスをいただいたんです。それを受けて、信の瞳の描き方を変えたあたりから、読者アンケートの結果が上向いていきました。

 

 その後、奪われた王都を奪還する『気持ちのいい』ストーリーの展開ともタイミングがハマり、王都奪還を達成する回で、初めてアンケートで1位を取ることができたんです」

 

 もちろん、連載開始時から変えず、いい作用を生んでいることもある。

 

「『史記』に記されている、歴史的事実を曲げないということは決めています。ただ、時代考証などのディテールに関しては、おもしろさ重視で割り切っている部分もあります。

 

 あまりに当時のリアルに寄ってしまうと、『歴史マンガ』の印象が強くなり、親しみにくく思われる読者さんも増えてしまうのではないかと思っていて。

 

 そもそも、『史記』の中の記述が少ないので、登場人物に関して書かれていることは、だいたい網羅していると思いますよ」

 

 以降、読者の支持は世代や性別を問わず増し続け、単行本の累計発行部数が3800万部を超えるという、現代を代表する大ヒット作となった。

 

『キングダム』ヒットの要因には、登場するキャラクターが成長していくこともある。戦乱の時代のため、作中で命を落とす者も多いのだが、だからこそ、生き延びたことで、新たな一面を見せてくれるキャラクターが多い。

 

「描いていて成長を感じるのは、飛信隊(注:信が将として率いる部隊。戦場で武勲を上げるたびに規模は大きくなり、現在の信は、五千人将まで出世)のメンバーですね。ヒーローである信にくらべ、渕さんや尾平といったキャラは、徴兵前はただの田舎村に住んでいた、ふつうの人たちなんですよね。

 

 それが信の大きな夢、強い気持ちに引っ張られて、少しずつ強くなって、国の先頭に立って戦うまでになっている。戦場という広いフィールドのなかで、そんなふつうの兵たちに、これからもスポットライトを当てていきたいと思います」

 

 ほかに、描いていて楽しいキャラは、「バミュウ」と「オギコ」だそう。「勝手にしゃべって動いてくれるので、僕としてはラクですね」と笑う。

 

 生み出したキャラが成長することは、作者にとって週刊誌連載の過酷さを乗り越えさせてくれるほどの嬉しさがあるのだろう。 

 

「あと、好きなのは、戦いの前に将軍たちが兵を鼓舞するシーンですね。どんな声で、どんな言葉を、自分の兵たちに投げかけるのか。そのことを、ネームを描く前に想像するのがとても楽しいです」

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