60代以上をメインターゲットにしている週刊誌にはいま、「死の準備」の文字が躍るが、40~50代に必要なのは「相続の準備」だ。準備さえしておけば、「両親が生きているうちに、聞いておけばよかった……」という話は避けられる。以下のポイントを押さえておけば、いざというときの手続きもスムーズにできるはず!
「相続税の基礎控除額は、『3000万円+600万円×法定相続人の数』です。遺産総額が、基礎控除額を下回れば、相続税はかかりません。この金額の確認が、相続税対策の第一歩です」
こう話すのは、相続税に詳しい竹山百代税理士だ。2015年より改正相続税制が施行され、それまでの基礎控除額「5000万円+1000万円×法定相続人の数」が、4割減額され、相続税はお金持ちだけの話ではなくなった。
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「この改正で、相続税申告書の提出件数は約2倍に増え、首都圏だと、50坪の土地と1000万円ぐらいの預貯金があればボーダーライン。一度、確認をおすすめします」(竹山氏、以下同)
相続資産が基礎控除額を超えている場合、まず相続税対策で有効なのが「生命保険の非課税枠」の活用だ。
「基礎控除とは別に、生命保険の非課税枠、『500万円×法定相続人の数』があり、預貯金を生命保険の形にすることで、税金がかからない財産に変えられます。事前に準備できる非課税枠なので、有効な相続税対策として、活用される方が多いのです」
両親が保険に未加入なら、入るほうが節税になるが、スムーズにいかないことも。
「80代以上は、保険嫌いの方が意外と多い。以前も、あるご家族が、『節税だ』と父親に保険加入をお願いしたが、頑として入らなかったそうです。こればかりは気持ちの問題なので、難しいですね」
いきなり保険加入を無理強いしたら、逆効果。タイミングと言葉選びは慎重に!
相続税対策には、「生前贈与」という手もある。ここでのポイントは、大きく2つ。
「『暦年贈与』は、暦年(1月1日から12月31日まで)ごとの贈与が、110万円までなら贈与税がかかりません。ただし、亡くなる3年以内の贈与は、相続財産に加算されます。
贈与にはもうひとつ『相続時精算課税制度』があります。この制度は一度選択したら、暦年贈与には戻せません。2500万円までなら贈与税がかからず、その額を超えると、20%の贈与税がかかります」
しかし、選択は慎重に。
「選択をしてから、相続開始までに贈与した財産をすべて足し戻して、相続税の計算をします。相続税がかからないと確信できる場合には有効。
相続税がかかる場合でも、『収益物件』を子や孫に早期に移して、親の蓄財を減らしたいとき、値上がり確実な有価証券などの贈与に活用します」
さらに、自宅の相続について。330平方メートル以下の自宅敷地ならば、評価額が80%の減額となるのが「小規模宅地等の特例」だ。
「配偶者や、親と同居している子供が活用できる特例です。二世帯住宅の場合は、それまでは、家の中で行き来ができないと同居と認められませんでしたが、2014年以降、外階段のみで、家の中で繫がっていなくても、認められるようになった。
また、親が所有する土地に、親が住む戸建てと子供が住む戸建ての2棟があり、土地と建物がともに親の所有であれば、『生計を一(いつ)にすること』を条件に、同居と認められます。親がマンションを所有し、親と子供が別々に居住する場合も同じです」
ただし、登記の仕方が重要となる。
「親の所有、または親と子の共有ならば問題ないですが、区分所有だと、同居と認められません。ここは確認が必要だと思います」
この特例を使いたいがために、自宅を所有しながら、自宅の名義を子供に変更するなどの悪知恵が横行した。そのため、2018年4月1日より税制改正された。
「(1)同族会社や配偶者、三親等以内の親族が所有する家屋に、相続から遡って3年以内に住んだことがない、(2)相続開始時に住んでいる家を、過去に自分が所有したことがない。この2つ条件を満たさないと特例は使えなくなりました。相当厳しくなったと思われます」
「小規模宅地等の特例」を有効活用したのが、樹木希林さん。上の図のように、節税はもちろん、夫の内田裕也さんが亡くなった後の二次相続まで考えられた「完璧な相続」だった。
(週刊FLASH 2019年5月7・14・21日合併号)