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篠井英介、馴染みの店で明かした「悪役を演じるということ」

エンタメ・アイドル 投稿日:2019.12.21 11:00FLASH編集部

篠井英介、馴染みの店で明かした「悪役を演じるということ」

 

 新宿三丁目。篠井英介(61)が、馴染みの階段を下りる。 

 

 あの役も、この役も憎らしい。いま、冷徹な悪役を演じさせるならこの人だ。名バイプレイヤーとして知られる篠井だが、最初にその地位を築いたのは、じつは現代演劇の女形としてである。

 

 女形とは、芝居で女の役を演じる男の役者のこと。ドラマ出演のかたわら、今夏も三越劇場での新派公演を成功させた。

 

 

「烏龍茶、そして肉じゃがをいただけますか」
 篠井が通う店は、ちゃんとご飯が食べられる店に限られる。じつは篠井はお酒が飲めない。

 

「こちらのお店はお友達からのご紹介。お料理が充実していて、とっても美味しい。こぢんまりとしたアットホームな雰囲気も気に入っています。お酒を飲まずに、一人でご飯だけを食べに来ても、『どうぞどうぞ』と迎えてくれるのが、なにより嬉しいんです」

 

 石川・金沢市の旧市街に生まれた篠井は、5歳のとき、自ら望んで日本舞踊を習いはじめた。テレビで観た時代劇で、美空ひばりが踊りを踊っているシーンを、カッコいいと思ったのがきっかけだった。

 

「5歳で『女踊り』を勉強したので、男である僕が、舞台の上で女の人の踊りを踊っても大丈夫だと植えつけられているんです。舞台の上では、女役のほうが喜びも大きいし、上手にできるような気がしていたように思います」

 

 中学、高校は演劇部に所属。テレビで週に2、3本放送される洋画に夢中になった。ミュージカルや芝居にも興味が湧いた。

 

「中学、高校では、丸刈りで着物を着てお稽古をしているのが恥ずかしかったんでしょう。舞踊のお稽古はおサボり気味でした(笑)」

 

日大藝術学部に在学した頃

 

 高校を卒業すると、日本大学藝術学部の演劇学科に進学。卒業後は劇団の公演とアルバイトに明け暮れた。

 

「生活感がないとよくいわれるのですが(笑)、東京でお家賃を払って生活をしていくとなると、アルバイトは辞められませんでしたね。貧乏で、いろいろなバイトをしました。僕は力仕事が苦手で、ウエイターなどが多かったです。珍しいところでは、開店して間もない、渋谷のパルコのエレベーターボーイをしばらくやっていました」

 

 女形をやりたかったが、演じられる場がなかった。場を作るために、1984年に同志たちと「花組芝居」を旗揚げし、女形として主演を務める。役者一本で食べていけるようになったのは、旗揚げから数年後。31歳のころだった。

 

「当時は、現代演劇のなかで、男性が女性の役をやることは、あり得ませんでした。たいへん苦労しました。僕は、今でも自分の基本は女形の役者だと思っています。女役をいただければ、腕によりをかけて勉強してきたこと、修業してきたことを発揮します。嬉しいですし、張り切りますし、頑張ろうと思いますね」

 

 放送中の『ニッポンノワール』(日本テレビ系)など、刑事ドラマで腹に一物抱えた役を演じるときにも、その幹は女形だという。  

 

 そんな篠井の、思い入れのある作品が『欲望という名の電車』だ。1947年初演のテネシー・ウィリアムズによる戯曲で、アメリカの南部が舞台。良家のお嬢さまだったブランチが、妹が嫁いだ貧しい家にやってきて、身をやつし、破滅していく。杉村春子、太地喜和子、岸田今日子など、名女優が挑んできた大役だ。

 

「世界中で上演されてきましたが、それまでブランチを演じたのはすべて女性。男性では、初めて僕が演じました。ブランチを演じたいという執念があったからこそ、必死に勉強をしてきましたし、その執念がいまの僕に繋がっていると思います。神様が、何か一本だけやらせてあげますと言ったら、やっぱりブランチを選びます」

 

 篠井が言葉を続ける。

 

「演じるときは、どこかに女形である僕がいて、その僕を一回殺して、まったく虚構の人を作り上げているんです。だから、ちょっと人間離れしていて、生活感がない悪役が僕に合うんだと思います。

 

 でも、一度殺すといっても、自分の中の負のエネルギー、マイナスの感情を引っ張り出してこないといけない。いつもちょっとしんどいし、疲れるんですけどね(笑)」

 

 ストイックな印象を与える篠井だが、その生真面目さが、バラエティでもウケている。近年では、フリマアプリ「メルカリ」の達人として、マツコ・デラックスを驚かせるなど話題になった。

 

「バラエティ番組に出演したときは、素のままです。舞台では、共演者次第で演じ方を変えますが、バラエティでは、どんな芸人さんでも、美人のタレントさんがいようと、変わりません(笑)」

 

 この日頼んだメニューのひとつ、「白味噌クリーム肉じゃが」は、「神場」の冬の定番。白味噌の甘みと、クリームソースの旨味が牛バラ肉を引き立てる。

 

「ただ、どんな場でも、お行儀だけはよくしていようと思っています」

 

 肉じゃがを一口。そっと微笑んだ。

 

ささいえいすけ
1958年12月15日生まれ 石川県出身 日本大学藝術学部演劇学科卒業。1984年に「花組芝居」を旗揚げ。女形として活躍し、1990年に退団。1992年にゴールデンアロー賞演劇新人賞を受賞。舞台『毛皮のマリー』(J.A.シーザー演出、1998年)、『欲望という名の電車』(鈴木勝秀演出、2001年、2003年、2007年)などのほか、テレビ、映画でも出演作多数

 

神場 KANVA
(住)東京都新宿区新宿3-8-5 中川ビルB1
(営)18:00~24:00(LO23:00)
(休)日曜

 

(週刊FLASH 2019年12月3日号)

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