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名曲散歩/アラジン『完全無欠のロックンローラー』は一曲入魂

エンタメ・アイドル 投稿日:2020.01.31 16:00FLASH編集部

名曲散歩/アラジン『完全無欠のロックンローラー』は一曲入魂

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロ……「オレってビッグ?」で始まるアラジンの『完全無欠のロックンローラー』だね。ヤマハ・ポプコン(ポピュラーソングコンテスト)のグランプリ史上、最もユニークな曲だよね。

 

 

マスター:そう、1981年秋のグランプリに輝いたの。でも、「こんなふざけた曲にグランプリを与えるな!」という声は少なからずあったそうだよ。

 

お客さん:そりゃそうだよ。ポプコンは中島みゆきやツイストを輩出した「音楽の甲子園」だからね。

 

マスター:まさに甲子園だけに、アラジンのリーダー・高原兄(けい)にとっては「一球入魂」ならぬ「一曲入魂」の歌だったんだよ。
それまで10回ポプコンに出たんだけど全部ダメで、背水の陣で臨んだのがこの大会。とにかくインパクトを残さなければ勝てないと思い、その才能のすべてをこの曲に注ぎ込んだ。たとえば、イントロの低い声の語りと、歌い出しの甲高い声は全然違うよね。

 

お客さん:はいはい。

 

マスター:あれは「自分の声の一番低いところと高いところを使い分けて、ギャップを狙った」とのちに語っている。イントロは「スネークマンショー」の伊武雅刀のコントを引用、それに秋田音頭のメロディをのせて、サビは横浜銀蝿なんだそーだよ。

 

お客さん:印象的なイントロ、キャッチーなサビ、女性コーラスとのコール&レスポンス、ものすごい躍動感、確かにおもちゃ箱をひっくり返したような歌だよね。

 

マスター:このインパクト勝負で、見事グランプリに輝いたわけだ。

 

お客さん:ただ、その後が続かなかったね。

 

マスター:それは本人も認めていて「この一曲にすべてを賭けていたから、その後の目標や戦略がなかった」と正直に語っている。

 

お客さん:まさに「一曲入魂」だったわけだ。いまだに口ずさめるのは、それだけインパクトがあったってことだね。

 おっ、次の曲は……。


文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考文献:『昭和40年男Vol.34』(クレタパブリッシング)

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