エンタメ・アイドル
名曲散歩/中村雅俊『恋人も濡れる街角』は桑田佳祐のリベンジ曲
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.02.21 16:00 最終更新日:2020.02.21 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロ……中村雅俊の『恋人も濡れる街角』だね。エロティックな歌詞なんだけど、なんか心に沁みるよねぇ。
【関連記事:爆笑問題・太田、サザン復活を暴露しかけて桑田に怒られた】
マスター:作詞作曲はあの桑田佳祐。この曲、桑田にとってはリベンジの曲だったんだ。
お客さん:なんだそりゃ。
マスター:実は、1980年、桑田佳祐は中村雅俊に『マーマレードの朝』っていう楽曲を提供していたんだ。ところがコレ、まったく売れなかった。
お客さん:『マーマレードの朝』なんて知らないなあ。
マスター:それが桑田の心に引っかかっていたんだね。その後、1982年頃にサザンが『チャコの海岸物語』、中村が『心の色』をヒットさせ、歌番組で顔を合わせる機会が増えた。当時の歌番組といえば、マッチ、トシちゃん、聖子ちゃんといった若者ばかり。彼らより年上の2人は楽屋でつるむようになったという。
お客さん:同世代だもんな。
マスター:そのとき桑田が、「もう一回作らせてくれますか?」と提案してきたんだって。それが、エロティックで大人のムードが漂う『恋人も濡れる街角』だ。レコーディングは夜中の12時から始まったんだけど、そこに桑田が駆けつけ、朝8時までぶっ通しで付き合ったそうだよ。
お客さん:2人のスターが徹夜で完成させた曲だったのか。
マスター:中村雅俊本人はのちに「歌の世界を広げてくれたので感謝しきりです」と語っている。
お客さん:それまでの青春スターから、都会的な大人のイメージに変わったもんな。名曲誕生の裏には桑田佳祐との友情があったのか。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:NHK BSプレミアム『歌のあとさき 中村雅俊 ~特別編~』(2020年2月1日放送)