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声の出ない映画監督が「『生』の実感は『性』で」宣言

エンタメFLASH編集部
記事投稿日:2016.04.03 22:00 最終更新日:2016.04.03 22:50

声の出ない映画監督が「『生』の実感は『性』で」宣言

(c)「But only love…」製作運動体

 

「僕はピンク映画のときから『カラミ』もドラマとして書いてきたつもりなんだよ。ただの裸じゃなくて、そこにちゃんと感情が潜んでいるようなね」

 

 1980年代から90年代、ピンク映画の世界で活躍し、「ピンク四天王」と呼ばれた名監督が帰ってきた。

 

 1997年の『熟女のはらわた 真紅の裂け目』以降はメガホンを取っていなかった佐野和宏(60)。2011年に咽頭ガンが見つかり、声帯を切除した。

 

 映画監督にして主演もこなす伝説の男が、声を失ったのだ。

 

「医者から宣告を受けたときはステージ4の末期。5年生存率は20%。手術は14時間もかかったんだよ」と筆談で答える。

 

 そんな佐野が、18年ぶりに新作『バット・オンリー・ラヴ』を撮った。もちろん主演も脚本もこなした。

 

 主人公は、声を失った佐野自身が投影されている。ある日、娘が実の子でないことを知り、妻へ嫉妬や憎悪を向けながらも、その思いを口にすることはできない。悩み抜いた末、男は愛を再生させる旅に出る――。

 

「死ぬ前に、ちゃんと誰かを愛したって言えるといいんだよ。愛って答えがなかなか出ないけど、やっぱりセックスは重要です。だって、人生って『性』がなくなったら、『生』の実感が薄れると思わない?」

 

 声が出ないから、演出はメッセージボードに手書きして細かく指示した。カメラマンに画角を指示するのが一番難しかったが、あとは周囲の助けもあり、撮影は順調に進んだ。

 

 人は、誰かが書いた文字を読むとき、必ず近くによってくる。だから、出演女優はみんなそばにいるから、あれこれ世話を焼いてくれた。まわりから「監督はモテモテだ」と冷やかされた。

 

「はたから見れば親密に見えるだけ(笑)。別に口説いたりしないよ。もともと自分から女性を口説いたことは少ないんだよ。うーん、口説くより、口説かれるほうが多いかも……」

 

 じつは、佐野監督、夜のほうは今でも薬なしで現役なのだという。

 

「やってますよ、ときどきね! 性欲は変わらないつもりだけど、ガンを宣告されてから、道行く女性の胸とかお尻に目がいく自分に気づいたんだよ。死を意識したとき、体の中のDNAが求めたのかもしれないね。最近またそんな感じなんで、ガンが転移しちゃったかも(笑)」

 

 冗談で返すが、映画自体はかなりエロく仕上がった。なにせ、ピンク映画で実績を積んだだけあって、精緻で濃厚な性描写がふんだんに盛り込まれているのだ。

 

「この映画のテーマは、人を愛することとか、そこから生まれる嫉妬とか憎悪とか……すべてが『愛』から生まれると思うので、もう一度『愛』とはどういうことか考えたかったんだよ。

 

 でも、まぁ、難しいですよ。だって現実には迷妄の中にいるわけだから」

 

 映画の主人公は、人生の迷妄から抜け出すことに成功した。その結末をぜひ映画館で見てほしい。

 

※『バット・オンリー・ラヴ』は4月2日から「新宿K’s cinema」ほかで全国順次公開 

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