
一部がこげてしまった衣装で寄席に立つ林家ペー(写真・保坂駱駝)
「じつは今日、またパー子が倒れて、病院に運ばれて……。いまは僕が寄席に出ているんで、(二代目林家)三平のところに預けてるんです」
そう語るタレント・林家ぺーの自宅マンションが火事の被害にあったのは、9月19日午後1時ごろのこと。当時、師匠である故・初代林家三平の法事に出かけていたペーは無事だったが、妻のパー子が病院に運ばれ、手当てを受けた。それから1週間、またもパー子が病院に搬送されたという。ペーに話を聞いた。
「火事の後は、住まいがないからビジネスホテルで暮らしていて。僕が帰ったら、パー子がホテルのドアチェーンをしたまま寝ちゃってたんです。仕方ないから僕だけ別の部屋を取って、翌朝、起こしに行っても起きてこない。チェーンがしてあるから開けられず、またも警察やら、消防やらを呼ぶ羽目になりました。それで大事を取って病院へ行ったんです。火事で4人の子(4匹のネコ)をなくして、精神的に参ってたんだろうね……」
火事にあってからのペーは、ビジネスホテルに泊まり、チェックアウト後は身のまわりのものをコインロッカーに預ける日々。大ベテランにとっては苦しすぎる生活だが、それでも寄席は休まず、「ペーの写真がパーになりました」など、舞台では火事をつかみのネタにする不屈ぶりを見せている。
「さすがに疲れましたよ。でも、奇跡みたいなこともあるの。焼け跡から、オリックス時代のイチロー選手のユニホームが無傷で見つかったんですよ! 我が家の“家宝”みたいなものだったから、うれしかったなあ」
なんとかユニホームを持ち出し、1週間後のこの日には新居も見つかったという。
「同じ赤羽でね。ずっとマンションだったんだけど、今度は“夢の一軒家”ですよ。(林家)正蔵のかみさんが近々、布団をくれるんで、そうすれば晴れて夫婦で、新居で寝ることができます」
寄席や取材では、明るく気丈にふるまうペーだが、やはりまだ、火事のことは頭から抜け切らないようだ。
「ネコのこともそうだし、衣装、写真も1万枚以上、いろいろなものを失ってねえ……。これが昔、僕が出ていた『元祖どっきりカメラ』だったら……なんて思ってしまうんですよ」
そう寂しそうに語るペーの体は、いつもよりひときわ小さく見えた――。