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『坂本冬美のモゴモゴ紅白』第17回/頭と心が色を失っていたわたしを救ってくれた梅沢富美男さんの妖艶な踊り

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記事投稿日:2025.10.04 06:00 最終更新日:2025.10.04 07:34
出典元: 週刊FLASH 2025年10月14日号
著者: 『FLASH』編集部
『坂本冬美のモゴモゴ紅白』第17回/頭と心が色を失っていたわたしを救ってくれた梅沢富美男さんの妖艶な踊り

Kiroro2人、モーニング娘3人に、天童よしみ、坂本冬美

 

 第44回(1993年)以来、6年ぶりに放送開始時間が30分繰り上がり、19時30分スタートとなった『第50回紅白』のテーマは、『未来へ〜時代と世代を超えて〜』でした。

 

 NHKが事前に実施した「21世紀に伝えたい歌」アンケートで1位に輝いた美空ひばりさんの『川の流れのように』を、天童(よしみ)さんが歌唱。

 

 五木(ひろし)さんは、それまで『紅白』で一度も歌っていなかった「第15回日本レコード大賞」の受賞曲『夜空』を歌われ、紅組のトリを務めた和田アキ子さんが『あの鐘を鳴らすのはあなた』を、大トリの北島(三郎)御大が『まつり』を熱唱され、その存在の大きさを歌で示してくださいました。

 

 そして番組終了後、『ゆく年くる年』の放送中、再びNHKホールからお届けしたのが、出場歌手、審査員の皆さん全員で歌った、オリジナルソングとしてNHKが制作した『21世紀の君たちへ〜A Song For Children』です。

 

 作詞・作曲は、スティーヴィー・ワンダーさんで、日本語歌詞をつけたのは、さだまさしさん。

 

ーーえっ!? マジで?

 

 思いますよね。わたしも初めに聞いたときは、同じことを思いました(苦笑)。

 

 制作を依頼したNHKもすごいですけど、快く引き受けてくださったというスティーヴィー・ワンダーさんもさすがです。

 

 しかも、それを『紅白』の放送枠だけではなく、『ゆく年くる年』の中で放送するというアイデアは、さすがNHKです。ウルトラE難度のすご技です。

 

 ただ……。出場歌手の皆さんが未来へ向け、魂のこもった歌を歌唱されているなか、2年前に不慮の事故で父を亡くして以来、ずっと巣くっていたモヤモヤが大きな塊となり、わたしの心を蝕みはじめていました。

 

 父を亡くした悲しみはもちろんですが、一人残された母のことを思うと心が軋み、ふとした瞬間に、嗚咽が漏れます。気持ちが傷つくと、体も悲鳴を上げはじめます。

 

 こんな気持ちで歌っていていいのだろうか……。もしかして、結果としてファンの方を裏切っていることになるんじゃ……? 負のスパイラルにはまり込み、頭と心が色を失って、白と黒の世界に塗り潰されていきます。

 

 この年、『紅白』のステージに立ったわたしの心境は、まさにそんな感じでした。

 

 そんなわたしが『紅白』のステージで歌わせていただくことになったのは、デビューからずっと温かな眼差しでわたしを見守ってくださっていた、たかたかし先生が、

 

「これは、冬美への応援歌だからな」

 

 と言って作詞してくださった『風に立つ』です。

 

 心を乗せて歌うと息が詰まって歌えなくなるので、頭の中を空っぽにして、喉を開いて声を絞り出すーー。

 

 思い返すと、歌手の誰もが憧れる『紅白』という夢のステージで、そんな歌い方しかできなかった自分が情けなくて、恥ずかしくて、腹立たしくて……。

 

 そんなわたしの大きな救いとなったのは、 “下町の玉三郎” こと、梅沢富美男さんが、一緒のステージで踊ってくださったことです。

 

ーー独りじゃない。梅沢さんが助けてくれる。

 

 そんな心強さを感じると同時に、いつもはわたし一人に集まる視線が、妖艶な踊りを披露してくださった梅沢さんにも注がれて。

 

 空っぽの心に少しだけ温かな風が吹き込んできた『紅白』でした。梅沢さんに感謝です。

 

さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中!

 

写真・中村 功、産経新聞
取材&文・工藤 晋

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