
「もしがく」試写会で笑顔を見せる(左から)神木隆之介、菅田将暉、二階堂ふみ、浜辺美波、アンミカ
第1話からさっそく賛否両論を巻き起こしている脚本家・三谷幸喜の最新作『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)。10月1日(水)にスタートし、今夜第2話が放送される。
SNSなどの書き込みを見ると、第1話を観たものの「あまりおもしろくない」と感じて、脱落しそうな視聴者が少なくないようだ。
だが、初回でハマらなかった人たちにこう言いたい。せめて第2話までは観てほしい、と。
というのも、フジテレビの動画配信サービス「FOD」では、地上波放送に先がけてすでに第2話が公開されており、筆者は視聴済み。
そのうえで、第1話で見切りをつけてしまうのは少々もったいないというのが、正直な感想なのだ。
■物語に没入させてくれる “吸引力” が弱かった
三谷氏が民放GP帯の連続ドラマの脚本を務めるのは、なんと25年ぶりだという。そして、さすが三谷作品ということもあり、主演の菅田将暉をはじめ、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波など豪華キャストが集結。
そんな最強の座組で展開する物語は、三谷氏の経験にもとづいているというオリジナル青春群像劇。舞台は1984年の渋谷のとある小劇場だ。
舞台演出家の久部三成(菅田)は、横暴な演出が不評を買い、自分で立ち上げた劇団から追放されてしまう。途方に暮れてあてもなくさまよっているうちにたどりついたのは、ストリップ劇場のネオンが光る怪しい商店街。
その商店街のスナックに立ち寄ったところ、店員の倖田リカ(二階堂)からボッタクリに遭ってしまう。ただ、リカは隣にあるストリップ劇場「WS劇場」でダンサーもしており、彼女の踊りを見た久部は魅了されるのだった。
これが、第1話のあらすじ。この初回に対してネットでは絶賛する声があがる一方、“登場人物が多すぎてごちゃごちゃ”、“テンポが悪い(遅い)”、“三谷作品の名作と比べていまいち” といったネガティブな声も少なくなかった。
確かに本作は20名以上の登場人物がおり、初回から一気に入れ替わり立ち替わり出てきている。ゆえに目まぐるしい展開なのだが、そのぶん主人公にスポットが当たるシーンが減っており、話の進み具合がスローリー。大勢いるキャラクターの人物紹介に大半を費やしてしまい、物語が本格的に動き出す前に第1話は終わってしまった。
また、フジテレビで放送されていた往年の三谷作品には、1994年にシリーズがスタートした『古畑任三郎』や1995年放送の『王様のレストラン』などがあり、比較対象があまりに偉大な名作という点も本作の酷評につながっているのかもしれない。
筆者も第1話を視聴し終えた時点では、物語に没入させてくれる “吸引力” が弱いと感じた。
連続ドラマは、初回だけお試しで観て、おもしろくなければ第2話以降は観ないというファンも多いため、その視聴者心理から考えると本作はまずいスタートを切ったことになる。
■初回だけで見切ってしまうのはもったいない理由
しかし、改めてお伝えするが、第1話で脱落するのはちょっともったいない気がする。
忌憚なく言うと、第2話から急にめちゃくちゃおもしろくなるわけでもないのだが、確実に初回よりはおもしろくなっているからだ。
第1話は言わばプロローグ。登場人物たちの人となりを丁寧に紹介していったため、物語の本題に入る前で終わっている。
ということは物語が本格的に動き出すのはここからであり、実際第2話で本作が “どこ” に向かっている物語なのかが明確になっていくのだ。
第2話で主人公はストリップ劇場「WS劇場」で雇われることになるのだが、1984年は風営法が改正されてストリップショーが厳しく規制されるようになった時代。「WS劇場」は赤字続きの経営不振ということもあり、オーナーの意向で「ノーパンしゃぶしゃぶ」への業態転換を迫られていく。
そこで主人公は「ノーパンしゃぶしゃぶ」回避のために、出演していたダンサーや芸人たちを役者にして演劇をやろうと提案する――という展開。
要するに、ストリップ劇場を演劇の劇場に変え、寄せ集めで劇団を立ち上げて成功を目指すというストーリーの本題が明確化し、動き出すのが第2話ということである。
また、これはあくまで個人的な感想だが、第1話はクスッとなる程度だったが、第2話では声を出して笑ってしまったシーンが何カ所かあった。
第1話で数多くいる登場人物たちの性格や関係性がある程度把握できたため、第2話では早くも成熟しており、コメディとしてのおもしろさでも上がっていると感じた。
まとめると、第2話はまだめちゃくちゃおもしろいというほどではないものの、第1話よりエンターテインメントとして楽しみやすいストーリーになっている。そして第2話ラストに挿入されていた第3話の予告映像を観ると、劇団立ち上げのストーリーがますます加速していくようだ。
本作は右肩上がりでどんどんおもしろくなっていくタイプの作品に違いない。