
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(毎週水放送中/フジテレビ系)
各局が力を入れる10月ドラマの覇権争いは、捲土重来を期すフジテレビ、社運を賭けて勝負に出たテレビ朝日の一騎打ちの様相を呈している。
まずはフジから。昨年末から続いた「中居正広問題」を払拭したいフジは、10カ月かけて三谷幸喜を口説き落としたという。そのドラマが1日から始まった、三谷の半自伝的作品の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(「もしがく」)だ。
「三谷さんのアレってどうなんですか? と他局のドラマスタッフや出演者から取材中に必ず逆質問されました」(テレビ誌編集者)というほど、放送前は注目されていた。
「三谷さんにとってフジは、『やっぱり猫が好き』(1988年)で連ドラデビューさせてくれた大事な局なわけです。そのフジが存続に関わる危機に陥っている。ならば、その一助になってやろうと男気を見せたのが、今作だったわけです。
三谷さんが出演者を口説いて、菅田将暉さん、神木隆之介さん、二階堂ふみさん、浜辺美波さん、渡辺謙さんという豪華キャストが実現したと聞いています」(テレビ局関係者)
さらに、三谷はレギュラー番組の『情報7daysニュースキャスター』(TBS系)で異例の番宣活動をしたが、初回視聴率は5.4%という結果に……。
「三谷さんは強気で、『ドラマが定着するまでには時間がかかる。過去の(自分の)ドラマもそうだったから、これは吉兆』と話しているそうです」(別のテレビ局関係者)
フジで、もうひとつドラマ関係者から注目されている作品が、草彅剛(51)主演、関西テレビ制作の『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』。草彅はこれまで『僕と彼女と彼女の生きる道』(2004年)、『罠の戦争』(2023年)など、関西テレビ制作の話題作に主演してきた。それだけに、今作も力の入れようが半端ではないそうだ。
「草彅さんは連ドラに出演するのなら『カンテレ制作』作品と決めていると聞きます。自分から演出案を提案したり、初顔合わせの出演者が多いため、現場では主演の草彅さん自らが双方の間を取り持っているそうです」(スポーツ紙記者)
また芸能記者も、現場での気遣いぶりをこう明かす。
「草彅さんはシングルファーザーで、小学1年生の息子を育てる遺品整理人を演じています。ドラマは6月上旬に都内でクランクインしたのですが、草彅さんは夏場の撮影の際には、元気を出してほしいと、現場に高級弁当を差し入れしたそうです。草彅さんは『罠の戦争』の撮影の際にも、人気店『ビストロ ジョー』の弁当を大量に差し入れたことがあります。今回も “太っ腹座長” のおかげで、元気の出る現場のようです」
対抗馬のテレビ朝日も負けてはいない。
「とにかくカネの使い方が違う。テレビ局関係者は、みんな大注目していますよ」(テレビ局関係者)
その筆頭は、天海祐希主演の『緊急取調室』だ。
「社運を賭けるほどの力の入れようです。8月半ばのクランクインのときからそうなのですが、とにかく天海さんの気合の入り方が半端ない。常時すごくピリピリしていて、NGなんかとても出せる雰囲気じゃない。ベテランの小日向文世さんはじめ、みんな天海さんの顔色を見て演技している感じだそうです。
12月には2年間もお蔵入りになっていた『緊急取調室』の映画が公開されますし、その景気づけにテレビ本編で視聴率を取っておかないと、という大きなプレッシャーがかかっているのでしょう」(ドラマ関係者)
一方で、テレ朝の看板ドラマ『相棒』は、今年25周年を迎える。その目玉のひとつとして、「過去の相棒が一堂に会する特別編制作の噂がある」(同前)という。
「制作の東映もテレ朝も、準備を例年以上におこなってきました。
毎年、水谷(豊)さんがピリピリして周りが “天皇” 扱いすることで有名なのですが、今年は水谷さんに初孫が誕生して、『ドラマじゃないところで騒がせてすみません』という挨拶があったようです。ただ、みんなで出産祝いを贈ったり、 “天皇” には変わらず気を遣っているようです(笑)」(同前)
大泉洋主演のSFラブロマンス『ちょっとだけエスパー』は、各局のドラマ関係者が「テレ朝が勝負に来た」と注目している作品だという。
13年ぶりの民放の連ドラ出演となる宮崎あおい、北村匠海ら、人気俳優をキャスティング。さらに脚本を、興行収入59億円超えのヒットとなった映画『ラストマイル』(2024年)の野木亜紀子が担当する。
「野木さんはテレ朝での仕事が初めてとあって、張り切っています。ただ、野木さんがXなどのSNSでよくつぶやくので、スタッフは何をつぶやくのか、気にしているそうです」(テレビ局関係者)
この『エスパー』は、異例の作り方をしているという。
「監督をTBSスパークル、共同テレビのスタッフが担当します。共同テレビはフジテレビの子会社なので、テレ朝の目玉ドラマをTBS、フジテレビが作るようなものです。プロデューサーは『おっさんずラブ』で知られるテレ朝のヒットメーカー、貴島彩理さんです。異例の試みがどう吉と出るか、ということでも注目されています」(前出・テレビ誌編集者)
今回、元気がないのが、近年「日曜劇場」枠でヒットを連発してきたTBSだ。10月クールは、妻夫木聡主演の『ザ・ロイヤルファミリー』(12日スタート)を放送する。妻夫木演じる人生に挫折した税理士が、ひょんなことから競馬の世界で夢を追うヒューマンドラマで、JRAが全面協力する壮大な物語だが……。
「事前の広告セールスが順調ではありませんでした。ドラマは壮大な物語なのですが、その壮大さが逆に仇になっている感じです。
最近はテレ朝さんが得意にしている一話完結型のドラマのほうが人気です。『ロイヤルファミリー』は3カ月かけて完結するので、堪え性のない視聴者が毎回の放送を観るのか疑問視するスポンサーがいます。とはいえ、スケールの大きい連続ドラマを成功させたノウハウがある局でもあるので期待したいのですが…」(大手広告代理店関係者)
妻夫木が日曜劇場で前回主演した『Get Ready!』(2023年)の視聴率が低調だったことも、尾を引いているという。
「同枠は不祥事が2クール連続で起きているために、妻夫木さん、放送するTBSともに背水の陣で臨んでいると聞きます。目黒蓮さんを『ロイヤルファミリー』に起用して起爆剤にと考えているようです」(芸能事務所関係者)
秋ドラマの覇権はどの作品にーー。