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『フェイクマミー』おもしろい設定だけど…波瑠が “母親なりすまし” を決意する動機が弱くて物語に没入できない

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記事投稿日:2025.10.17 11:00 最終更新日:2025.10.17 12:32
出典元: SmartFLASH
著者: 堺屋大地
『フェイクマミー』おもしろい設定だけど…波瑠が “母親なりすまし” を決意する動機が弱くて物語に没入できない

波瑠

 

 10月10日(金)に初回が放送された、波瑠川栄李奈ダブル主演する『フェイクマミー』(TBS系)。“母親なりすまし” はおもしろい設定だけど、コメディでない作品でやるのは、さすがに無理があるんじゃない?

 

■“母親なりすまし” に至る経緯とは?

 

 波瑠演じる花村薫は東大卒のエリートで、とある事情で大企業を突発的にやめてしまい転職活動中。そんなときに出会ったのが、元ヤンながらベンチャー企業の社長として大成功している川栄演じる日高茉海恵。

 

 茉海恵は世間に公表していないが、小学校受験を控える娘・いろはを育てるシングルマザーで、薫を高額報酬で釣っていろはの家庭教師を引き受けさせる。

 

 また、いろはが目指す名門校は規律と伝統を重んじているため、入学試験では親子面接も重要視されていることを知り、茉海恵は「お受験の日、私の代わりに “ママ” として面接を受けてほしい」という契約を薫に持ちかける。

 

 しかし、母親の “替え玉” として面接を受けたことがバレれば刑罰に問われかねないし、合格したら、その後6年間ずっとフェイクマミーを続けなくてはいけないため、当然ながら薫はお断り。

 

 ……していたのだが、茉海恵がSNSで炎上したことから受験自体をあきらめようとすると、いろはと触れあってその天才的頭脳と純粋な熱意にほだされた薫は、今度は自らフェイクマミーになることを申し出るのだった。

 

 これが第1話のあらすじ。今夜放送の第2話以降では、“母親なりすまし” から始まるウソとトラブルだらけのストーリーが展開されるようで、ドラマ公式は本作のジャンルを「ファミリークライム・エンターテインメント」と謳っている。

 

■薫の感情が飛躍しすぎで腑に落ちない

 

 設定はおもしろいと思うのだが、さすがにリアリティの希薄さが気になってしまう。いちばん引っかかったのは、波瑠が “母親なりすまし” を決意する動機が弱すぎるという点だ。

 

 第1話冒頭は時系列が入れ替えられ、母親になりすまして受験会場に向かう薫といろはの姿から始まるのだが、薫のナレーションで「なりすましで捕まれば、有印私文書偽造罪で最長5年の拘禁刑。これに偽計業務妨害と建造物侵入が加わると……」と語られている。

 

 このナレーションは、“薫はきちんと罪を犯していると自覚したうえでフェイクマミーをやっている” ということを、視聴者へ伝えるためのセリフのようにも感じられた。だが、やはりそのエクスキューズがあったとしても、薫の感情として “釣りあっていない” と思えてしまう。

 

 薫がいろはにどんどん感情移入していき、夢を応援したいという心境になっていく過程はていねいに描かれていた。けれど、それでもつい最近まで赤の他人だった少女のために犯罪に手を染めて、最低でも6年間は母親のフリを続けなくてはいけないという契約をするほどのパッションが、薫に宿っていたという展開には強い違和感を覚える。

 

 薫がフェイクマミーをやるには、高い高いハードルを越える覚悟が必要になるはずだが、薫の感情の高まり具合として、第1話のストーリーだけでは “高さ” が足りていないのだ。薫の感情が飛躍しすぎていて、だいぶ無理があるように感じられて腑に落ちない。

 

■コメディ作品ならスルーできたのだが

 

 ちなみに、薫は「日高茉海恵」を名乗ることになるわけだが、本物の茉海恵は新進気鋭のやり手ベンチャー社長であり、自らが広告塔となっている有名人。つまり薫は、「日高茉海恵」という同姓同名の有名人がいるという設定でなりすますつもりなのだろう。これに関しても、いつバレてもおかしくない綱渡りのウソすぎて、現実的ではない。

 

 また、茉海恵の地元の後輩で、ベンチャー企業の副社長を務める右腕的存在の黒木竜馬(Snow Man 向井康二)が、薫といろはとともに家族写真に写るシーンがあった。黒木をニセの父親に仕立て上げるつもりなのだろうが、こうやってウソをどんどん塗り重ねていくことでいっそうリスクが高まるので、本当にバレないように隠そうとするなら、ウソの上塗りはしないだろう。

 

 フィクションなんだからそんな粗探しをするのはナンセンスだという主張もあるだろうが、筆者のように、土台となる設定のリアリティが欠けると、そこがずっと引っかかって物語に没入できなくなってしまう視聴者も少なくないはず。

 

 とはいえ『フェイクマミー』がコメディ作品なら、ここまで引っかからなかったと思う。たとえば昨年1月期にTBS系の同じ枠で放送されたヒット作『不適切にもほどがある!』は、コメディだったため粗さはさして気にならず、だいぶ強引なタイムスリップ設定にも目をつむることができた。

 

『フェイクマミー』も徹底的にコメディ路線に振り切っているなら、こんなツッコミを入れるのは無粋なのだが、いかんせん、そこそこリアルかつシリアスに描こうとしているので、スルーできなかったわけだ。

 

 土台となる設定の説得力は物語序盤で固めないと、視聴者離れの原因になりかねない。

 

 第1話ではけっこう穴だらけで進んでしまったので、今夜放送の第2話でリアリティ構築のため、薫の熱量の高さを補完するシーンや、なりすまし工作のロジックを補強するシーンが描かれることに期待したい。

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