
『終幕のロンド』撮影中の草彅剛
10月13日(月)にスタートした草彅剛主演のドラマ『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(フジテレビ系)。
草彅演じる主人公・鳥飼樹は、遺品から故人の想いを汲み取って遺族に伝える遺品整理人で、ハートフルなヒューマンドラマ……と思っていたが、突然の不倫フラグにびっくり。しかもそのシーンが安っぽい恋愛ドラマのようで冷めてしまった。
その不倫展開、いる? そのチープなシーン、必要?
■第1話後半で急に挿し込まれた恋愛フラグ
5年前に病気で妻を亡くし、男手ひとつで小1の息子を育てるシングルファーザー・樹。商社マンとしてバリバリ仕事をしていたが、妻の遺品について依頼した際、遺品整理会社の社長(中村雅俊)と出会い、その縁がきっかけで入社した経緯を持つ。
妻が亡くなる前後のせつないエピソードや、そんな悲しい過去を背負っているからこそ、遺品に刻まれた故人の “最期の声” を残された家族に届けようとする樹の姿勢が、とても胸に響いた。第1話前半から涙腺を刺激され、これは良質なドラマになりそうだという期待感が高まっていた。
しかし、第1話後半で物語は急転。
余命3カ月の宣告を受けている老女(風吹ジュン)から生前整理の依頼を受け、樹が見積もりのために自宅訪問していたところに、その娘・御厨真琴(中村ゆり)が現れる。
母の病気のことを聞かされていない真琴は、家にいる樹を見て不審に思いあわてたところ、転びそうになってしまう。そんな彼女を樹が抱きかかえ、そのままベッドに倒れ込む。仰向けになる真琴に樹が覆いかぶさる態勢になり、見つめあう2人……。
ここで一気に興ざめしてしまった。
■中村ゆりは大企業グループの次期社長の妻
若者向けのラブコメなどで昭和の時代から使い古された手法を、まさか令和のいま、50代(草彅)と40代(中村)の円熟した大人俳優にやらせるという演出に、悪い意味で仰天。
真琴は怪訝な表情で「誰、あなた?」と尋ねていたので、さすがにこの時点で胸キュンしているわけではなさそうだが、これが恋愛フラグなのは明白である。
しかも、真琴には大企業グループの次期社長という夫(要潤)がいる。つまり不倫フラグだ。
筆者は事前情報を得ずに視聴していたのだが、ドラマ公式サイトのイントロダクションには《戸惑いながらも、やがて2人の間に芽生えるのは、切なくも温かな“大人の恋”。》との記述。また、同サイトの真琴の人物紹介欄には、《誠実で優しい樹に心救われ、既婚の身でありながら、いつしか強く惹かれていくーー。》とも記されている。
前もって公式サイトを調べていれば驚愕することはなかったのだろうが、それを差し引いても、倒れ込んで見つめあうシーンや既婚女性との不倫展開って本当に必要なのか、はなはだ疑問だ。
■感動のビッグウェーブを起こす必要がある
故人と遺族の想いをつなぐ遺品整理を題材にしたハートフルなドラマにおいて、恋愛展開が挿し込まれることでテーマがブレないだろうか。
百歩譲って、主人公であるシングルファーザーのラブストーリーが描かれるのはいいとしても、転んだ拍子にベッドで見つめあうといったチープなシーンや、その相手が既婚女性だという不倫フラグは、“ノイズ” になりかねない。
もちろん主人公の恋愛相手をなんの意味もなく既婚にしたとは思えないので、なんらかの意義があってのことだろう。真琴が結婚しているという設定が、のちのち感動の導線になるに違いない。
しかし、問題はその感動の大きさが、蓄積されていくノイズの大きさを上回れるかどうか、だ。ちょっとぐらいの感動では、不倫愛というノイズのほうが引っかかってしまうので、よっぽど感動のビッグウェーブを起こす必要があるだろう。
要するに、わざわざ入れた不倫設定によって累積されていくモヤモヤのマイナスを、最終的に得られる感動のプラスが上回ってくれなければ、お相手は独身女性でよかったんじゃないかと思ってしまう。
今夜放送の第2話以降で、ノイズを吹き飛ばすぐらい、不倫設定に意味を持たせてくれることを期待しているが、はたして……。