
相川七瀬(左)に声をかけられ食事に行く仲になったという持田香織(写真・福田ヨシツグ)
デビュー30周年を記念してスタートした相川七瀬(50)の「BIG BANG対談」。今回は、Every Little Thing(以下、ELT)のボーカル、 “もっちー” こと持田香織(47)だ。
ミリオンヒットを記録した『恋心』(相川)、『Time goes by』(ELT)など、これまでに数多くのヒット曲を生み出してきた2人が今、1990年代の音楽シーンを振り返る。
相川 ELTも私と同じ1995年デビューだから、今年がデビュー30周年だよね?
持田 違いますよ。ELTは1996年デビューだから、七瀬ちゃんが1年先輩です。
相川 えっ、そうなの? ELTとは、同じ年のデビューだと思ってた。
持田 七瀬ちゃんがデビューしたとき私はまだ高校生で、おっきく口を開けて歌っている七瀬ちゃんが、けっこう衝撃でした(笑)。
相川 おっきな口?(笑)
持田 そう。あんなに口をガーッと大きく開けて歌う人を見るのは初めてで。それがものすごくかわいかったんですよね。
相川 ははははは。でも、それって、かわいくないんじゃないの?
持田 ううん。それがかわいかったんですよ。
相川 念のために聞くけど、それって褒めてる?(笑)
持田 もちろん。とにかくすっごくかわいくて、私は大好きでした。
相川 ELTとしてデビューした当時の香織は?
持田 高校を卒業してすぐくらいのデビューでしたから、もうすべてに対して感じが悪かったと思います。
相川 そんなことはないでしょう?
持田 いや、それがあるんですよ。私は “コギャル世代” でもあったので、ちょっとふてくされていたほうがカッコいいんじゃないかと思っていて。あのころに出会った方々には申し訳ないと、今でも思っていますから(苦笑)。
相川 私の印象に残っている香織は、みんなの輪の中にうまく入れず、隅っこのほうで孤独感を漂わせていた女のコ……って感じかな。
持田 ははははっ。でも、そうかもです。当時は、五十嵐(充)さん、(伊藤)一朗さんとの3人体制で、2人は私より10個くらい上。それだけでもどうしていいかわからなかったですし、性格的に自分からみんなの輪の中に入っていけるタイプじゃなかったから……。人見知りもあって。
相川 で、私から声をかけたんだよね。
持田 そうです。イベントか何かで一緒になったときに、七瀬ちゃんが声をかけてくれたんです。
相川 電話番号を交換して、ご飯食べに行こうってなったような気がする。
持田 とにかく優しいんですよ、七瀬ちゃんは。それからも、PUFFYの2人やMAXの4人と楽しそうにしているのを隅っこのほうで見ていると、いつも「香織ーっ!」って呼んでくれて。私には、それがすごくありがたかったんですよね。
■世間にキャミソールを流行らせたのはELT
ーー相川さんは、初めてELTのサウンドを聴いたときの印象を覚えていますか?
相川 おっ、エイベックスが新しいタイプのユニットを生成してきたぞ、ですね。
持田 なんですか、それ(笑)。
相川 エイベックスが、というよりあの当時、小室(哲哉)さんのサウンドは本当に強かったし、時代の象徴でもあったじゃん?
持田 確かにそうですね。ヒット曲の上位は、小室さんの楽曲でしたからね。
相川 ただ、エイベックスとしては次のというか、小室さんじゃないアーティストを探していて。そこにハマったのがELTであり、織田哲郎と相川七瀬だったんじゃないかと思うんだ。
持田 そうなんですかね。
相川 小室さんは、その時代の女のコが言いたいことを歌詞に書いていたと思うんだけど、それは間違いのない事実なんだけど、そこに書き切れなかった女のコたちの思いをすくい取ったのがELTでしたね。サウンドも世界観も含めて、ものすごくセンセーショナルだった。
持田 ただ、当時は3カ月に1枚、シングルをリリースするというのが当たり前で、何がなんだかわからないまま、時間だけが進んでいっていたような気がします。
相川 本当、大変だったよね。ようやくひとつカタチになったと思ったら、もう次のシングルの制作が始まっていて。音楽バブルの時代で、ELTの楽曲は出せば売れるという感じだったからね。
持田 それは、お互い様ですよ(笑)。
相川 ELTも、レコーディングはもちろん深夜だったんでしょう?
持田 びっちり詰まったテレビ、ラジオ、雑誌のインタビューなどを終えてからだったので、始まるのは夜中12時をまわってから。そこから朝までというのが、いつものルーティンでしたね。今振り返ってみると、あれはなんだったんだろうという感じですけど(苦笑)。
相川 そんな環境のなか、香織はどうやって体調を維持していたの? ちゃんと寝ていた?
持田 寝られていないし、まともな食事はほとんど取れていなかったですね。
相川 一人暮らしだっけ?
持田 最初は実家から通っていたんですけど、途中から一人暮らしを始めたんです。自分では作れないから、食事はほぼほぼコンビニのお弁当でしたね。
相川 家には寝に帰るだけ?
持田 ほとんどそんな感じでした。
相川 それでよく、気持ちのコントロールができてたね。
持田 できてないです。ストレスのせいで、いつも顔に面疔(めんちょう)ができて。 “わっ! またできた” と、うんざりした気持ちになって、治ったと思ったらまたすぐにできて。その繰り返しで、いい加減嫌気がさしていました(苦笑)。
相川 思い出した! 世の中にキャミソールを流行らせたのも、ELTだったよね?
持田 スタイリストさんが用意してくださったものを着ていただけなんですけど、いつの間にか、 “キャミ=持田” という感じで言われだして(笑)。なんか懐かしいですね。
相川 思い出せないんだけどその当時、私はどうしていたんだろう?
持田 七瀬ちゃんの疲れた顔を見た記憶はないから……元気いっぱいで動きまわっていたんじゃないかな。
相川 きっと、そうだったんだろうね(苦笑)。当時、疲れていたとか、大変だったとかいう記憶はないし……今のほうがよっぽど大変だし、疲れていると思う。
持田 七瀬ちゃんは、大学院生でもあるしね。
相川 それももちろんあるんだけど、昔は1日24時間、全部自分のためだけに使えたわけじゃない?
持田 そうだね。
相川 でも、今は24時間を子供にも配分し、仕事にも配分し、論文にも配分し、自分がやりたいことにも配分しているから、とても24時間じゃ足りなくて(苦笑)。
持田 七瀬ちゃんのところは、いちばん下の女のコが中学生ですよね。その年齢になっても、まだ手がかかります?
相川 おチビちゃんのときとは手のかかり方がまた違っていて。塾の送り迎えとか、そういうことをきっちりやらないと遅刻したり、「忘れてた」とか言い訳したり、すぐにサボろうとするからね(笑)。
持田 ははははは。肝に銘じておきます(笑)。
■昔は喧嘩もしたけど今はすごく仲がいい
ーー相川さんが今年30周年で、持田さんが来年30周年。いちばん楽しかったのはいつごろですか。
相川 私は今がいちばん楽しい。
持田 それはすごい!
相川 作る責任も自分だし、それをどう歌うか、どう表に出していくかも自分で、すべて自分で決めているっていうのもあるし、キャリアの中でいちばん上手に歌えているのも今だから、今がいちばん楽しい。
持田 年齢とともに体調とか変化するけど、どうですか?
相川 子供から風邪をうつされたりとかはあるけど、自分の歌を歌うのに、自分で声をコントロールできるようになったからすごく楽になったし、だから今がいちばん楽しい。
持田 逆に、いちばん大変だったのは?
相川 私は20代後半から30代の前半かな。織田さんから離れて、織田さんが作ってくれた相川七瀬っぽいサウンドを作らなきゃと、もがいて苦しんでどうやって歌えばいいのかわからなくなって……。
持田 わかります。気持ちが萎縮しちゃうんですよね。私もそういう時期がありましたから。
相川 そうやって考えると、私たちってけっこう苦しんでるよね(苦笑)。
持田 誰かに相談しても、答えられる人はいないし。そもそも正解がないから、答えられるはずがないんですよね。
相川 スタッフもコロコロ変わるから、それまでとは違うジャンルのものを求められたり……。なんで、こんなサウンドをやんなきゃいけないんだろうって思ったこともあったしね。香織は、キャラ変をさせられそうになったことはない?
持田 ウチはディレクターの五十嵐さんが抜けてから、自分たちが好きなスタイルでやるという感じだったから、無理やりキャラ変というのはなかったですね。
相川 2人のなかで、これがいいねというのをやる感じ?
持田 そうそう。一朗さんは意外と頑固というか、意思がはっきりしているから、昔は喧嘩もしましたけど、今はすごく仲がいいです。というか、今がいちばん仲がいいかもしれないです。
相川 最初は、あんなにキャラが濃い人だと思わなかったけど(笑)。香織にとって、 “いっくん”(伊藤)はどういう存在なの?
持田 わからないです。全然わかんない(笑)。
相川 それは、わかるような気もする(笑)。
持田 一朗さんが言うには、近すぎず遠すぎず、一緒のお店で働いている店主とパートみたいな、そんな距離感だそうです。
相川 どっちが店主で、どっちがパートなの?(笑)。
持田 (笑)。今度、一朗さんに聞いてみますね。
相川 “いっくん” は優しいでしょう?
持田 優しいです。それも、超人的に優しい。耐える力が強いんだと思います(笑)。
相川 来年は、ELTのデビュー30周年。何かやる!?
持田 どうなんでしょう!? やるのかな?
相川 やってよ、観たいわ!
持田 ELTだと、けっこう体力作りをしないとライブができないんで(苦笑)。
相川 じゃあ、今日から体力作りだね(笑)。
持田 楽しみながら頑張れるといいな。
もちだかおり 
1978年3月24日生まれ 東京都出身 Every Little Thingのボーカルを務め、来年でデビュー30周年を迎える。現在はソロ活動を中心に、ジュエリーデザインやイラストなど多方面で表現の幅を広げている。2025年5月には、東京・日本橋の日本橋三越本店内の三越劇場で6年ぶりの単独公演を開催。11月には熊本・静岡・愛知でイベントやショーに出演予定
あいかわななせ 
1975年2月16日生まれ 大阪府出身 1995年『夢見る少女じゃいられない』でデビュー。その後もヒット曲を数多く世に送り出し、現在までのCDのトータル売り上げは1200万枚を超える。2020年に國學院大學神道文化学部を受験し合格。卒業後、同大の大学院に進む。今年11月8日、ミニアルバム『FIREWORKS』をリリースする
取材&文・工藤 晋
写真・福田ヨシツグ
スタイリスト・安野ともこ(持田)
ヘアメイク・yoboon(持田)、久保フユミ(相川)
衣装(持田)・ニットタートルネック/¥29,700、ニットベスト/参考商品、スカート/参考商品(すべてenrica〈エンリカ〉)、シューズ/¥71,500(NEBULONI E.〈ネブローニ〉)、ピアス/¥55,000、ネックレス/¥52,800、リング(すべてCASUCA et mo〈カスカエモ〉) 【問い合わせ先】エンリカ(03-3835-4672)、ネブローニ(03-5456-6866)、カスカ(03-6452-3196)
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