ディーン・フジオカ
おディーン様が主人公でもいいんじゃないか? そう思えるぐらい、彼の演じるキャラクターが魅力的で、なおかつ、抱えている過酷な過去と非情な現在が切なすぎる。
11月11日(火)に第4話が放送された大泉洋主演のドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)のことだ。
■ディーン・フジオカ演じる桜介は殺人犯
会社をクビになり、妻とは離婚し、ネットカフェを泊まり歩く日々を送っていた主人公・文太(大泉)。再就職先の企業「ノナマーレ」の社長(岡田将生)から、1粒の謎のカプセルを飲むようにうながされ、そのカプセルによってなんとエスパーに!
手で触れている間、もしくは触れられている間だけ相手の心の声が聞こえるという超能力に目覚めた。
「ノナマーレ」からは “世界を救う” ためのミッションを与えられているのだが、その大半が見知らぬ人物に夜まで傘を持たせたり、また別の人物の目覚まし時計の時間を早めたり、一見するとどうでもいいようなことばかり。
そんな文太には「ノナマーレ」所属の仲間エスパーもいる。
念じた対象がほんの少し温かくなるという能力の「レンチン系エスパー」円寂(高畑淳子)。犬や鳥といった動物たちと少しだけ話せる「アニマルお願い系エスパー」半蔵(宇野祥平)。
そして、町の花屋の店主で、手でなでると花が咲くという「花咲か系エスパー」桜介(ディーン・フジオカ)だ。
文太だけでなく「ノナマーレ」のエスパーたちにはつらい過去があるのだが、ディーン演じる桜介のエピソードはかなりハードだった。
10年以上前、桜介には愛する妻と生まれたばかりの息子がいたのだが、桜介が過去に悪事を働いていた時代の仲間が勧誘に来て脅されたため、家族を守るためにその悪人仲間を殺害。桜介は刑務所に入ることになり、妻とは離婚して縁を切られてしまう。
■息子から痛烈な「お前らヴィラン」発言
時は流れ、現在。桜介は自分のことを何も知らずに高校生になった息子を、花屋の店主として遠くから見守っていた。
第3話では、神社のお祭りで起こる爆発事故で死者を出さないように食い止めるという、かつてないシリアスなミッションが下される。文太、半蔵、桜介の活躍で無事にミッションクリアし、その際に桜介は爆発から身を挺して息子を守るものの、いっさい名乗らずに去っていく。
第4話では、桜介の顔を覚えていた息子が花屋を訪れ、父とは知らないまま笑顔で会話を交わし、母親(元妻)のために花束を買っていくという感動シーンが描かれた――と思いきや、息子は無表情でその花束を路上に投げ捨てるという不穏な展開。それだけでなく、第4話終盤で謎の女から例のカプセルを渡されて飲み込むシーンが描かれた。
さらに、今夜放送の第5話の予告映像では、桜介を含む「ノナマーレ」のエスパーチームの前に敵対組織と思われる3人組が立ちはだかり、そのなかの1人が息子。どうやらエスパー同士の能力バトルが勃発するようで、対決中に桜介は息子から「危ないのはお前らヴィランだろ」と、敵意むき出しの言葉を浴びせられるのである。
切ない。切なすぎる。
オーソドックスな “上げて落とす” 手法だが、息子側から友好的に接触してくるというハッピー展開で嬉しそうにしていた桜介が、とにかく不憫。自分が父だとは名乗らず、ただ遠くから見守っていただけなのに……。
■ディーンには珍しい “明るいアホ” キャラ
これまでのディーン・フジオカはクールだったりクレバーだったりする役柄が多かったが、そんな彼には珍しく桜介は “明るいアホ” なチームのムードメーカーなので、俳優として新境地を開拓している。
喜怒哀楽がはっきりしている桜介のアホっぷりをディーンは上手に演じており、愛すべきキャラクターに仕上げている。
こういう “明るいアホ” が健気に息子を見守っているというだけでも胸アツだったが、何も知らない息子に嫌悪感を向けられるという展開は、なんともいたたまれない。
キャラ造形として “明るいアホ” は主人公向きだし、悲しき過去を背負って現在も過酷な運命と対峙するという設定は起承転結を作りやすいので、そういう意味でも主人公向き。
大泉洋演じる文太もとても魅力的なキャラクターなので、文太が主人公であることに異論はないのは大前提。だが、ディーン演じる桜介視点でも良質なドラマが作れそうなので、桜介主人公バージョンの『ちょっとだけエスパー』も見たくなってしまう。
桜介は、それぐらい視聴者を惹きつけてトリコにするキャラに仕上がっている。それぐらい、ドラマティックに紆余曲折ある切ない人生を歩んでいるということだ。
■主人公たちはヒーローではなくヴィラン?
エスパー同士の能力バトルが繰り広げられる今夜放送の第5話は、予告映像では仰々しく《HERO vs VILLAIN》と映し出されていることもあり、おそらく中盤の山場となる回だろう。
しかし、気になるのは「VILLAIN」(悪役)の真の意味。
素直に解釈すれば、主人公・文太や桜介たちの「ノナマーレ」チームがヒーローで、桜介の息子たちの組織がヴィランとなるわけだが、息子たちは「ノナマーレ」側をヴィラン扱いしている。
そもそも岡田将生演じる「ノナマーレ」社長が、めっっっちゃ怪しいのだ。
“世界を救う” というヒーロー然とした大義名分を掲げてミッションを発令しているのだが、実は第2話で文太たちのターゲットだった画家はミッションクリア後に謎の事故死を遂げている。文太たちはその事実を知らない様子で、むしろ画家の尊厳を守って彼の人生を前向きにリスタートさせることができたと思っているだろう。
要するに、文太や桜介は黒幕の社長に騙されており、世界を救うヒーローのつもりでいるものの、知らぬ間に世界を破滅に導く悪事に加担させられているという可能性も……。
今夜放送の第5話で、社長の真の目的の片鱗が見えてくるかもしれない。楽しみだ。
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