
俳優・エッセイストとして活躍する檀ふみ。人気コーナー「勝ち抜きゲーム」の、紅白でリンゴとミカンを取り合う演出をイメージして
お茶の間で一緒に問題に挑み、彼女たちの地頭と洞察力にあこがれた日々――。黄金時代のクイズ番組を支え、いろどった女性たち。『連想ゲーム』(NHK)に1973~1988年の15年にわたって出演した俳優・エッセイストの檀ふみに、撮影秘話と、いま実践している“脳トレ”を聞いた!
もともと、檀自身も『連想ゲーム』の視聴者だったという。
「父はふだん、子どもたちがテレビを見ながら食事するなんて許さない人でしたが、これだけはなぜか見ていた記憶があります。母も、この番組が好きでした。初収録はまだ高校卒業前でしたね」
父で作家の一雄さんまで一目置いていた『連想ゲーム』は、いわば、檀家お墨つきの番組。檀はその前年に映画デビューし、同番組を通じてすぐにお茶の間の人気者になった。
「大人と子どもがそろって見られる番組ですよね。視聴者が一緒にクイズに挑戦するコーナー以外は、大半は答えが画面に出ますから。むしろ解答者の連想や、キャラクターを楽しむ内容だったでしょう?」
ヒントを出すキャプテン1人に対し、解答者は5人。ゲストが入る2枠と4枠の間の3枠で、15年にわたって出演した。これは1枠を12年間担当した坪内ミキ子を上回り、レギュラー解答者のなかで最長。なぜ、そこまで番組に溶け込むことができたのか。
「ドラマや映画の撮影は“戦い”のようなもので、共演者とは“戦友”になります。でも『連想ゲーム』は違って、まるで“家族”ような雰囲気だったんです。2週に一度の収録は、みんなで遊んでいるような感覚で、よく一緒に食事にも行きました。だから、私と(大和田)獏ちゃんが交際しているなんて噂が立って、突撃取材を受けたこともあったんですよ」
この珍問の正解は誰もがご存じだろう。実際に番組がきっかけで大和田が交際し、結ばれたのは、いまは亡き岡江久美子さん。大和田は1976年から1988年まで、男性では最長となる12年間『連想ゲーム』に出演し、1979年からは檀と同じ3枠を担当し、正答率を競い合うライバルだった。むしろ檀は、大和田と岡江さんが親しくなるきっかけを作った張本人でもある。
「あるとき、『連想ゲーム』の忘年会で、『ふみちゃんに浮いた噂がないのは、かわいそうだ』と、加藤芳郎さん(漫画家。白組キャプテンを長く務めた)が言い出されて。私が大相撲のファンなものだから、いつの間にか『ふみちゃんにはお相撲さんがいい』ということになったんです。そしたら獏ちゃんが、『僕、出羽海部屋の親方を知ってる。出羽の花関なんかどう? 彼を呼んで一席設けるよ』と。ところが実際に見えたのは、同じ出羽海部屋の先輩力士だったの(笑)。そして獏ちゃんは久美子ちゃんと、お兄さんの大和田伸也さんは、まだ結婚前の五大路子さんとご一緒でした。つまり私は、体よくダブルデートの“だし”に使われたわけですね(笑)」
ところで、紅組レギュラーを3年務めた水沢アキが、天地総子(ふさこ)さんの降板後にキャプテンを引き継いだように、檀にも当然、そのチャンスはあったはずだが……。
「ええ、打診はありました。でも、私は答えるのは得意でも、お茶目な加藤さんのように“この人にはこんなヒントを出すとおもしろくなる”といったサービス精神がない気がしていて、ご遠慮申し上げたんです。私がやったら、きっと真剣になりすぎて、つまらなくなっちゃったでしょうね(笑)」
はたしてそうだろうか。あどけない笑顔とともに変わらぬ、檀の当意即妙なトークを聞くと、解答者の持ち分以上の連想を引き出すことなど、造作もなかったように思われた。
【おすすめ「脳トレ」は?】 最近、物忘れがひどくって。以前からの習慣で毎朝、新聞2紙を隅から隅まで読んでいます。
『連想ゲーム』(NHK、1969~1991年)
男女で紅白に分かれたチーム双方のキャプテンが出すヒントから、答えを連想した。日本語特有の繰り返し言葉を当てる「ワンワンコーナー」なども人気だった
取材/文・鈴木隆祐
写真・保坂駱駝
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