
『科捜研の女』での沢口靖子
クライマックスに向けてストーリーは盛り上がっている……はずなのに、視聴していてもいまいち没入できないし、テンションも上がらないのはナゼなのか?
還暦の大御所俳優・沢口靖子が主演している月9ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(フジテレビ系)。
情報技術を高度に操り、悪用して国民の生命や財産を脅かす情報犯罪グループを追う捜査機関「情報犯罪特命対策室」、通称「DICT(ディクト)」の活躍を描く物語。特殊詐欺やサイバーテロなど、現実のニュースでも近年よく取り上げられる犯罪を題材にし、主人公たちはその犯人を追っていく。
沢口演じる主人公・二宮奈美は「DICT」の最年長メンバーで巡査部長。もともとは生活安全課で地域の少年犯罪などを担当していたこともあり、地域密着型の捜査スタイルで、事件現場周辺の住民たちへ丹念に聞き込みするなど、足を使って情報を集めるタイプだ。
■個性的な俳優陣が集まっているのに…
12月1日(月)放送の第9話では、女性総理の娘の誘拐事件が描かれており、奈美たちは救出のために奔走しているが、まだ解決していない。おそらく最終話で決着となるのだろう。
つまり、本作最大の事件が進行中なのだが、個人的にはストーリーにグイグイ引き込まれる感覚は得られていない。
ここまでの世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は4~6%台と低水準で推移し、TVerのお気に入り登録数(12月5日現在)は65.2万で、ヒットの指標となる100万までほど遠い。
いまいち数字がかんばしくないところを見ると、筆者と同じような感覚の視聴者や、すでに脱落しているドラマファンも少なくなさそうだ。
クライマックスが近づく終盤になっても盛り上がりに欠けている原因は、主人公の仲間である「DICT」メンバーの魅力不足にあるように感じる。
沢口以外に「DICT」メンバーを演じている俳優陣は、室長役の松角洋平をはじめ、朝ドラヒロインだった黒島結菜、SUPER EIGHTの横山裕、スーパー戦隊のレッドだった一ノ瀬颯、元アジアンの馬場園梓、はんにゃ.の金田哲。
国民的ヒロインにアイドル、ヒーロー、芸人と幅広いジャンルから個性的なメンバーが集まっている。にもかかわらず、脚本があまりよくないのだろうか、彼らが演じるキャラクターが “薄味” なのだ。
忌憚なく言うなら、どこかの刑事ドラマで見たことのあるテンプレキャラばかりで、それゆえにメンバー間の掛け合いも意外性がなく凡庸。演じているキャスト陣を見渡せば会話劇で盛り上げることもできそうなのに、予定調和を崩せていないのである。
■大女優になにやらせてんだという意外性
主人公・二宮奈美もキャラクターとしては独創性が強いわけではない。しかし、沢口=奈美が本作において唯一の個性とも言える。というのも、60歳女優にあてがったとは思えない演出が多いからだ。
奈美はアクティブなタイプで、文字どおり、あちこち駆け回っている。事件現場で疾走するのはもちろん、署内でも病院内などでもダッシュするシーンがありエネルギッシュ。コワモテの犯人と格闘になって制圧するなんていうアクションシーンもある。
また、第1話では病室にカラオケを持ち込み、ノリノリでVaundyの曲を熱唱するシーンがあった。第5話では手足を縛られて監禁され、犯人から痛めつけられるSMプレイのようなシーンもあった。
いずれも、20代女優がやればハマりそうな演出ばかり。大女優になにやらせてんだというツッコミどころでもあるのだが、そういったシーンを沢口靖子が体当たりで演じているという意外性が、本作の唯一のオリジナリティだと思う。
ただ、先週放送の第9話では、そういった沢口=奈美のぶっ飛んだシーンがなく、主人公も周囲の予定調和に飲み込まれていたため、盛り上がりに欠けた。
今夜の放送は第10話。沢口の代表作『科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)と差別化を図る意味でも、クライマックスでは大女優にそんな無茶させるなよと思わせてくれる、破天荒な展開を期待したい。
というか、それぐらい振り切ってくれないと、記憶に残らない月9になってしまいそうだ……。
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