
妻夫木聡
意表を突かれたラスト2分半。予定調和を崩しつつ、それでいて王道の終幕だった。
妻夫木聡が主演し、Snow Man目黒蓮が共演する日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)が、12月14日(日)に最終話(第10話)を迎えた。
2011年から始まった物語。栗須栄治(妻夫木)は、税理士として人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」の競馬事業部へ実態調査したことがきっかけで、社長・山王耕造(佐藤浩市)の人間力や競馬にかける情熱に惹かれ、ロイヤルヒューマンに入社。栗須は耕造のマネージャー・秘書となる。
ただ、馬主として有馬記念を制することに人生を賭けてきた耕造だったが、何度挑戦しても勝利できないまま第7話ラストで逝去。志なかばで亡くなった耕造の意思を、耕造の隠し子・中条耕一(目黒)と栗須が引き継いでいく。
そして迎えた最終話。2025年の有馬記念に挑むエピソードが描かれた。ここからは最終話のネタバレを含むため未視聴の方々はご注意を。
■【ネタバレあり】2025年の有馬記念で優勝したのは?
筆者は2025年の有馬記念で絶対に勝つと確信していた。
耕造から耕一が引き継いだ馬「ロイヤルファミリー」。2025年で引退を表明していた「ロイヤルファミリー」が、クライマックスでライバルたちを制して優勝する。
それはもう、“予想” や “考察” ではなく、この年の有馬で勝って終わる以外に本作の落としどころはないと思っていたからだ。
読めてしまっている予定調和なラストだとしても、それこそが王道展開で、多くの視聴者が求めているフィナーレだから、そうなると疑わなかったのである。
しかし、意表を突かれた。ネタバレとなるが、最終話の大半を使って描かれた2025年の有馬記念で、「ロイヤルファミリー」は僅差の2着で惜敗。
ちなみに優勝したのは耕造の最大のライバルであり、競馬界有数の馬主・椎名善弘(沢村一樹)の「ビッグホープ」だった。
実はこの「ビッグホープ」は椎名が生前の耕造に、彼が所有していた「ロイヤルホープ」へ種付けを依頼して産まれた馬。要するにライバルだったオヤジ同士がタッグを組んで誕生したわけだが、第5話で椎名は自分の馬を負かした「ロイヤルホープ」が憎いと耕造に宣言しているほど、敵視していたのだ。
そのため、2025年の有馬記念で椎名が「ホープ! ホープッ!!」と絶叫する姿が、個人的に最終話でもっとも胸アツなシーンだった。
種付け依頼をしにきた椎名を耕造は嬉しそうに「強欲」と評していたが、その欲望は競馬に対する純然たる情熱とも言える。ふだんはなかなか感情を表に出さないので一見するとクールだったが、椎名は作中屈指のパッションを持ったキャラクターだったように思う。
■なんと2026年の戦いを最後の2分半でばばっと描いた
2025年の有馬記念に敗れた段階で放送は残り約12分。この時点で、終盤は主要キャラの後日譚を描きつつ、“負けから学ぶこともある” といった前向きなマインドを美談に仕上げて終幕するものと思っていた。
だが、ここでまた意表を突かれる。耕一の決断で引退表明していたが、「ロイヤルファミリー」自身がまだ走りたがっている素振りを見せたことで引退撤回。なんと、まさかのラスト2分半で2026年の「ロイヤルファミリー」の戦いが始まり、有馬記念優勝をかっさらうまでを駆け足で描いたのだ。
最終話で長尺を使い、とことんクライマックスだと煽りまくった2025年の有馬記念。引退表明をしていて、しかも物語がとうとう現実の年数にまで追いついていたので、ここが最後で、ここで絶対に勝つと思い込まされていた。
ところがどっこい、2025年は負けを味わい、それで終わりかと思いきや、2026年の戦いを最後の2分ほどでばばっと描いたわけだ。いい意味で裏切られた。
ゴール時の演出も光る。これまでさんざんレース中は妻夫木や目黒の表情の演技で盛り上げていたが、ラストの有馬記念はゴールを見守る栗須と耕一のバックショット。笑顔で抱き合う際に2人の横顔は映ったが、またカメラに背を向け、肩を組んだまま拳を天高く振り上げて「ファミリー!!」と絶叫する後姿で、最大の歓喜の瞬間を表現。実に粋な演出だった。
予定調和を崩す展開にしておきながら、最後は王道の結末で締めくくった『ザ・ロイヤルファミリー』。日曜劇場らしい良質な感動作だった。
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