芸能・女子アナ芸能

「大谷翔平本」が書店を席巻中…大谷の言葉が響く理由から効果絶大のマーケティングまで【年末年始どれを読む?】

芸能 記事投稿日:2025.12.21 06:00 最終更新日:2025.12.21 06:00

「大谷翔平本」が書店を席巻中…大谷の言葉が響く理由から効果絶大のマーケティングまで【年末年始どれを読む?】

試合中、タブレットを見つめる大谷翔平(写真・共同通信)

 

 今、書店の一角を席巻しているのが、MLBのスーパースター・大谷翔平に関する書籍、通称「大谷本」だ。

 

 複数の大型書店の端末で検索してみると、その刊行点数はおよそ130。その大半を占めるノンフィクションや伝記、写真集、活躍をまとめたムックを除いても、その種類は多岐にわたる。なかには絵本や英会話、社会学などアカデミックなものも――。

 

 そこで一大ジャンルを築くのが、大谷の発言をまとめた「名言集」だ。

 

「私の執筆した『大谷翔平86のメッセージ』(知的生きかた文庫)が12万部。大谷選手関連ではほかにも5万部の本を2点上梓しており、累計部数は25万部です」

 

 そう語るのは、臨床スポーツ心理学者の児玉光雄氏。かつては鹿屋体育大学教授を務め、一流アスリートの思考行動パターンを分析してきた。執筆した「大谷本」は、名言集を中心に8冊にのぼる。

 

「テレビのインタビューや過去の報道、書籍などから彼の言葉をひたすら集めました。これが大変な作業で、実際に書籍に掲載したものは、その10分の1もありません」

 

 イチロー氏に関する書籍を、約40冊も刊行してきた児玉氏。「コメント心理分析」という手法で、その共通点を分析している。

 

「お二人とも、打率や本塁打数など『結果』についての話は少なく、いかに打撃の『スキル』を高めるかについて多くのコメントを残しています。

 

 私は、『目標設定』を2種類に分けて考えています。ひとつは成績や記録に意識を注ぎ、それをクリアする『結果目標』。もうひとつがそこに至るプロセスを重視する『行動目標』です。アスリートは前者に重点を置きがちですが、大谷選手もイチローさんも、その点には無頓着なんです」

 

 その思想が表われている大谷の発言として、《野球を始めたときも、一流のピッチャーになるんだとか、一流のバッターになるんだとか思っていたわけじゃない。いいバッティングをしたい、いいピッチングをしたい。それをいつも望んできました》を引用した児玉氏。分析を続けるなか、強い感銘を受けたという。

 

「現役引退までに残された時間をいかに効率よく使うか、非常に冷静に分析しているのです。私自身は78歳になります。限られた残りの人生で、いかに良質の仕事をしていくか――。大谷選手の言葉は、私にそう考えるインパクトを与えてくれました」

 

 なぜ、これほどまでに大谷の「言葉」が求められているのだろうか。作家・書評家の印南(いんなみ)敦史氏に話を聞いた。

 

「彼は選ばれたアスリートなのに、親しみやすさがあり、近所のお兄ちゃんのように感じられる。その語り口はすごくわかりやすく、野球に詳しくない人にも伝わるくらいシンプルです。だからこそ、仕事で嫌な思いをしたり、努力が認められなかったりしている人たちに『自分も頑張らなくちゃ』と思わせる力があるのだと思います」

 

 児玉氏の著書には、大谷が自らを「ストイック」なのではなく、《僕は単純に練習が好きなんです》と評する言葉が紹介されているが、印南氏もこう語ってくれた。

 

「大谷選手自身は本質的に、ただ好きで野球を楽しんでいるだけだと思うんです。でも、そのプレーや姿勢から多くの要素を見出すことができる。だからこそ、『今回はこのテーマ』『次はこの視点』と、さまざまな切り口の書籍が生まれているのだと思います」

 

■ドジャースタジアムの広告は日本企業だらけ…『大谷マーケティング』で学ぶ

 

 広告業界の視点から初めて大谷を分析した書籍も刊行されている。その『大谷マーケティング』(星海社新書)の著者は、ロサンゼルスを拠点とする広告代理店社長・岩瀬昌美氏だ。

 

「執筆を始めた当時、大谷選手が所属していたエンゼルスは、いちばん安いチケットが10〜13ドル(2025年12月のレートで約1500〜2000円)で買えるほどマイナーなチームで、夫も子供たちも観に行きたがらないほど。

 

 バックネット広告は1回数百万円程度と格安で、そこに広告を出したのが『くら寿司』でした。結果、大谷選手が本塁打を打つたびに見られる動画の再生回数は数百万~1000万を超えたとみられ、本書では日本のテレビドラマに出稿するよりも、格段にROI(投資収益率)が高いと分析しました」

 

 岩瀬氏自身、エンゼルス時代にクライアントの球場で流れるCM制作や、壁広告のデザインをおこなってきた実体験を持つだけに、その内容は説得力十分だ。

 

「でも私は、大谷選手がメジャーに来るまで、その存在を知らなかったんです(笑)。それが、ほどなく大谷選手の人形がもらえるボブルヘッドデーには必ず行くほどに……。ドジャースに移籍後も継続して観戦することで、実地での貴重なマーケティング機会となっています」

 

 岩瀬氏のもとには、日本企業からの広告に関する相談が急増しているという。

 

「ドジャースタジアムの広告価格は高騰し、複数年の長期契約が求められ、新規参入のハードルはとても高くなりました。私が手がけたわけではありませんが、JAL、伊藤園など日本のトップ企業がこぞって広告を出しており、2024年以前には見られないほど、日本企業のスポンサーが目立つ状況です」

 

 同書を読めば、球場が巨大な “ビジネスの舞台” に見えるはず。来シーズンの中継がひと味違って映るだろう。

 

 さて、あなたは、年末年始どれを選ぶ?

12

出典元: 週刊FLASH 2025年12月30日号

著者: 『FLASH』編集部

芸能・エンタメ一覧をもっと見る

今、あなたにおすすめの記事

関連キーワードの記事を探す