2025年上半期に起きた炎上事件の一部
2025年も数々の“炎上騒動”がネットを騒がせた。政界や芸能界を揺るがすスキャンダルから、ラーメン店の接客トラブルーー。次から次へと、ニュースが報じられ“消費”される今、我々が見るべきポイントはどこなのか。識者に見解を聞いた。
テレビプロデューサーの鎮目博道氏が真っ先に重大な炎上事件として指摘するのは、中居正広の問題だ。
「やっぱりあの騒動をきっかけにテレビ業界全体が大きく変わってしまった部分があると思います。いちばんの変化は、そもそもバラエティ番組をなるべく制作しないようにする局が増えてきてしまったということです。
バラエティ番組はどうしても出演者や演出をめぐって炎上してしまうリスクが高く、問題が起きた時に局側が受けるダメージが大きい。一方で、音楽番組や、歌番組、お笑いの賞レースは、もともと出来上がっているものをフォーマットに載せて見せる形なので、安全なんですよ。また、ドラマも若い人への訴求効果があり、配信収益もあるのでビジネスとして成立しやすい。テレビ業界ではバラエティ離れが進んでいるといえますね」(鎮目氏、以下同)
フジテレビで起きた中居問題と、日本テレビで起きた国分太一のコンプラ違反騒動もじつは繋がりがあるという。
「フジテレビがハチの巣を突いたようになっているのを見て、『これはまずいぞ』といち早く行動を起こしたのが日本テレビなんですね。TOKIOみたいに、今までどんなにお世話になった人であっても、問題がありそうなら全部降板してもらって、関係を断ち切つ。それが国分さんの事件でした」
衰退するバラエティ業界だが、唯一力を入れているのがTBSだ。実際、『水曜日のダウンタウン』は大人気番組となっている。
「度々炎上してるわけですが、攻めた結果ですよね。10月の『オールスター後夜祭’25秋』では『時速165キロを出したことがないのは誰でしょう』という問題で、事故を起こしたばかりの広末涼子さんを選択肢に入れたことで謝罪することになりましたが、やはりこれも面白くしようとした結果でしょう。局によって、炎上への対応や温度感が随分分かれてきた1年だと思います。
また、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で起きた『中国ではカラスを食べる』というテロップを捏造した事件は、まさにバラエティ業界の衰退をあらわしていると思います。
ここ数年、バラエティの制作現場は本当にへとへとになるまで働かされています。しかも頑張っても数字が取りづらいし、炎上すると結局批判される。スタッフがやる気をなくしているのがよく分かる出来事でした」
バラエティ界の主役のひとりといえば、芸人のやす子だ。やす子をめぐる評価の“アゲサゲ”は今の時代の空気をあらわしているという。
「昔はタレントとして、『面白いけど人格的には問題がありそう』というキャラクターがウケていた時代がありますが、その後、『いい人』を売りにする時代になって、やす子さんのようなキャラクターが需要を得ました。
しかし、イメージがいい人ほど少しでも問題発言をすると、一気に炎上して、一気に失墜してしまうんです。やす子さんもまさにそのような状況で、ドッキリ番組での攻撃的な言動や、猪狩蒼弥さんに『デビューできない』と発言して炎上していますよね。
最近人気がある人を見ていくと、お笑い芸人の永野さんとか、ダイアン津田さんとか、どちらかというと辛口の方が支持されています。多少問題発言をしても、もともとのイメージがあるのでダメージを受けにくい。過剰なコンプラに疲れた視聴者がそういうキャラクターに心地よさを感じているんだと思います」
今後のテレビ業界は“意外な理由”で若返りは始まりそうだ。
「すでに最近、番組が続々と終了しているのですが、その理由の一つが、『50歳以上のタレントをテレビに出すのが怖くなっている』ためです。“50歳リスク”と呼ばれているものですね。
50歳を超えたタレントさんのパワハラ、セクハラ、不規則発言で炎上するケースが急に増えています。昔のテレビを知っていて、ちやほやされてきた人ほど、今の時代に合わない発言をしてしまうわけです
だから、出演演者の若返りというよりも、リスクが高いから避けるという消極的な理由から、50代以上が中心の番組は、できるだけ終わらせよう、という流れが出てきています。とにもかくにも、フジテレビの騒動によって、炎上リスクは収益リスクに直結する、ということがよく分かった1年でした。来年も各局とも慎重な姿勢を続けるでしょうね」
「楽しくなければテレビじゃない」も完全な死語になりつつあるーー。
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