ミルクボーイ・駒場
12月21日に漫才日本一を決める大会『M-1グランプリ2025』(テレビ朝日系)が生放送され、結成9年の「たくろう」が史上最多1万1521組の頂点に立ち、王者となりました。
最終決戦に進んだ「たくろう」「ドンデコルテ」「エバース」の3組は、当然SNS上で話題になりました。しかし、今回初めて審査員を務めたミルクボーイ・駒場孝さんのコメントにも注目が集まったのです。
ファーストラウンドでは「めちゃめちゃええっすねえ」と、「めぞん」の漫才の出来のよさをしみじみかみしめます。その後のコメントも、「漫才中に強いワードがあり、そのワードが最後の盛り上がりにつながった」とわかりやすく解説していました。
筆者が注目した駒場さんのコメントは、ファーストラウンドの「たくろう」の漫才後。このときも「めちゃめちゃええですね」から始まり、
「だいぶ前に準決勝に上がって、そっから(決勝に)『いつでも上がれるやろう』って言われていたのに上がれず、7年ぐらいしんどい思いをしてたのに、ずっと(ネタを)作ってて。
その間も赤木(裕)君のオドオドする挙動不審の漫才もあったんですけど、今回のは、挙動不審にさせられてるから、挙動不審になる意味があったと思うんです。今までも挙動不審ではあったんですけど、勝手に挙動不審だった。でも今回のは(相方の)きむらバンドの変な誘いにのせられて挙動不審になるから、言葉がおもろいのはもちろんのこと、立場も仕上がっているので、『そらおもろいよな』という……」
と、なかなか決勝に進めなかった「たくろう」が、状況設定をつけたことにより漫才の完成度が上がり、より面白くなった理由を的確に言語化していました。
この駒場さんのコメントを聞いて、筆者は「ミルクボーイ」と「たくろう」は、境遇が似ていると感じました。
『たくろう』は、駒場さんが言ったように結成2年目の2018年に準決勝に進出したものの、それ以降は成績が振るわず、優勝するまで7年を要しました。ミルクボーイも5回目の挑戦で準々決勝に進出するも、しばらく低迷して、M-1が一時終了したこともあり、2019年の優勝までに9年かかったのです。
あとは2組とも「漫才の型」が決まっています。「たくろう」は、毎回きむらバンドさんに赤木さんが振り回されてオドオドするスタイル。ミルクボーイも駒場さんのお母さんが毎回物忘れして、それが何かを2人で探るスタイルで固定されています。
さらに、以前の「たくろう」は挙動不審な赤木さんに、きむらバンドさんがツッコんでいました。しかし、その後はボケとツッコミを逆にして、状況設定をつけてマイナーチェンジしています。ミルクボーイも、優勝する前年までは今のスタイルと少し違っていました。以前はお母さんが忘れるのではなく駒場さん自身が忘れるという設定でした。若い駒場さんが物忘れするというのは、設定的に無理があるということでお母さんに変えたのです。2組とも型をマイナーチェンジしたことがM-1優勝につながったのです。
筆者は、『M-1グランプリ2019』で優勝した直後のミルクボーイにお話を伺っています。
駒場さんが妻の待つ自宅に戻れたのは、優勝した翌日の夜。その様子は同局のドキュメンタリー番組『M-1アナザーストーリー』で放送されました。駒場さんの実家で母親をはじめ、駒場家のみなさんが優勝を喜んでいる映像を、駒場さんが見て号泣していました。
駒場「あれはホンマに泣きましたね。放送では1分ぐらいでしたが、本当は40分ぐらい泣いてました」
内海崇「泣きすぎやろ!」
駒場「放送では、僕が泣いてて奥さんは泣かずに、僕の背中をさすってくれて『強い奥さん』みたいに映ってましたが、実は奥さんも最初は泣いていたんですよ。でも、僕が40分泣いてたんで奥さんが途中で泣きやんだんです」
内海「そら、奥さんもそんなに泣かれへんよ(笑)。ウチの彼女も『よかったね』って喜んでくれました。けど二言目には『調子乗んなよ』って言われましたけど(笑)」
駒場「厳しいな(笑)」
駒場さんが「7年ぐらいしんどい思いをしてたのに、ずっと(ネタを)作ってて」とコメントした際に、赤木さんは目頭をおさえ涙を拭っていました。優勝する前から涙するほど涙もろい点も、40分泣き続けた駒場さんと似ています。そんな共通点が多数あったことで、駒場さんの的確な解説が生まれたのかもしれません。
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