
アンジェラ・アキ(左)、坂本冬美
東京・青山のビクタースタジオから中継で出演された特別ゲストの桑田佳祐さんの次に登場したのが、石川さゆりさん。で、その次が北島(三郎)御大で、それに続いたのがわたし、坂本冬美。歌わせていただいたのは、2年連続となる『また君に恋してる』です。
前年、初めて『紅白』で『また君に恋してる』を歌唱した後、年明けすぐに故郷・和歌山に帰り、日がな一日ゴロンゴロン。
時折、「汗っかきなのに、なんで羊のモコモコを着ちゃったのかなぁ」とか、「二度と18cmのピンヒールは履かないぞ」とか、モゴモゴ言いながらのんびり過ごしていたのですが、東京に戻って歌への反響の大きさに、二度も三度も驚いてしまいました。
配信サイトのダウンロード数は、J−POP並みにぐんぐん急上昇。シングル、収録アルバムともに注文が殺到し、レコード会社の人たちはニヤニヤしっぱなしです。
『紅白』の影響力は、これまでも十二分にわかっていたつもりでしたが、その遥か上をいっていました。でも、だけど、しかし。これはまだほんの序の口。人生一度の狂騒曲は、ここからが本番でした。
「着メロ」から「着うた」への移行期という大きな波に乗り、100万ダウンロードされた翌週には200万を突破。その翌週には300万に到達……と、その勢いはとどまるところを知りません。
街角で、コンビニで、空港で……あっちでもこっちでも、携帯電話からわたしの歌声が聞こえてきます。
ということは当然、皆さんの耳にもわたしの声が残っているはず…なのです。
歌詞を間違えるというのは論外で、「着うた」の声と『紅白』で聴く声がわずかでも違って聴こえたら、聴いてくださる方にも歌にも失礼だし、申し訳が立ちません。
あぁどうしよう……もうすぐ出番だ……。いやだ、いやだ、いやだ、いやだぁ……。
あれこれ考えすぎるのは、わたしの欠点ですが、性分ですからこればかりはどうしようもありません(苦笑)。
真っ赤なドレスに身を包み、草履よりは高い、でも前年に履いた18cmのピンヒールには遠く及ばない赤のヒールを履いて、いざ『紅白』のステージへ。……のはずでしたが、踏み出した足もマイクを握る手も、ブルブル、ブルブル、震えが止まりません。
60回の『紅白』と61回の『紅白』。映像を見比べていただくと一目瞭然。60回は、緊張しながらも案外落ち着いていてきちんと歌っているのに、61回は見るも無惨です(苦笑)。
そのうえどうしたことか、61回はサビのところで顔がアップになるんですが、なぜか髪の毛の先が鼻の下にビヨ〜〜〜〜ンとかかり、まるで髭のよう。な、な、な、なんじゃこりゃです(笑)。
聴いてくださる方に、いい歌を届けたいーー。
その思いは『紅白』に限らず、舞台でもテレビ番組の収録でも同じです。
それでも、「終わったーっ!」という解放感を味わうことはありますが、満足感を覚えたことは、ただの一度もありません。
「歌い切った」と思えたのも、「これが最後のステージ」と心に決め、『凛として』を歌わせていただいた2001年の『紅白』一度だけです。
振り返ると、穴があったら入りたい。そこに穴がなかったら、自分で掘ってでも入りたいと思う、今日このごろです(苦笑)。モゴモゴモゴ……。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋
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