
「何をやるかじゃない、誰とやるかが大事」というメンバーの言葉に救われた(河村、写真・福田ヨシツグ)
ロックシーンの先頭を走り続けてきた伝説的なバンド、LUNA SEAを “LUNA SEA兄さん” と呼ぶ相川七瀬(50)と “RYUICHI” こと河村隆一(55)の「BIG BANG対談」後編は、ボーカリスト同士、楽曲作り、ライブのおもしろさ、ステージに立つ覚悟、SNS時代の音楽など、読み応え満点でお届けします。
相川 一度聞いてみたかったんですけど、隆一さんは若いころからずっと体を鍛えているじゃないですか。サーフィンもそうだし、ボクシングもそうだし。それって、ボーカルを維持するために始めたものなんですか。
河村 どうだろう? もともと好きだったから、というのが大きかったような気がする。
相川 好きというだけで、あそこまで自分を追い込めるものですか。
河村 サーフィンとかボクシングは、先に進もうとしたときに、「大丈夫かな俺!? 死んじゃわないか?」みたいなところがあって。実際、サーフィンでは何度か死にかけたから、生き残るために鍛えていたというのがあるかもしれない(苦笑)。
相川 それが結果的に、ボーカリストとしての体作りにも役に立った?
河村 そうなんだけど、ボーカリストにとって “これはいらないよね” というトレーニングメニューもあるんだよね。
相川 え!? たとえばそれはなんですか?
河村 たとえば胸筋。胸とか首の筋肉が硬くなると、声を出すのに力んで、その結果として声が出る気道も硬くなっちゃう。ただただ、突っ走ればいいというものじゃない。もっとも、それに気がついたのは最近なんだけどね(苦笑)。
相川 それって、病気の影響もありますか?
河村 あったね。肺腺がんと声帯静脈瘤と2度手術をして、そのあと発声障害(ジストニア)で、まるで声が出なくなって……。
相川 隆一さんはすごいハイトーンボイスで、きれいなファルセット(裏声)を完璧に使いこなしているボーカリストじゃないですか。その声が出ないとなったときのショックは……ちょっと想像できないです。
河村 いくつかの選択肢があって。しばらくお休みをするというのもあるし、過去の自分の歌が歌えないのであればやめるという選択肢もある。実際、何度かその言葉が口から出かかったし……。
相川 どうやってそれを乗り越えたんですか?
河村 今日が60点だったら、明日は65点になっているはずだと思って。今日より明日、明日より明後日。絶対によくなっているはずだと信じていたことがひとつ。
相川 あとは?
河村 メンバーが「何をやるかより、誰とやるかの問題だ」と声をかけてくれたこと。僕にとっては、その言葉が大きな光だった。
■俺、歌えるじゃん!?という日が必ず来る
相川 隆一さんもカッコいいけど、ほかのメンバーもカッコいい! そこが、LUNA SEAがLUNA SEAたる所以ですね。
河村 内科の先生や脳神経外科の先生とも相談しながら、治療法を探して。今はまだ10日に1日しか歌えないけど、それが5日に1日になって、2日に1日という感じでいけば、絶対に元に戻る。 “なんだ俺、歌えるじゃん!?” という日が必ず来る。今はそう思うようにしている、そう信じている感じかな。
相川 そう思えるようになるまで、どれくらいかかりましたか?
河村 3年くらいかかったね。その間も、自分の体に何が起きているんだろうという不安や怖さはあったけど、 “もうだめだ” と、諦めたことはなかったですね。
相川 すごいな……想像を絶します。本当にすごい。
河村 そこまでじゃないかもしれないけど、七瀬ちゃんもあるでしょう? 声が出なくて歌えなくなったことが。
相川 あります。やりたいけどできない。でも、やらなきゃいけない。なのにできない。もどかしさと悔しさ。悲しさと不甲斐なさ。焦燥感と自己嫌悪…いろんな感情がぐちゃぐちゃになって……。それに対する言い訳がいっぱい出てきて、自分の弱さが剥き出しになる感じになりました。
河村 そういうとき、七瀬ちゃんはどうしてきたの?
相川 一度だけ、ライブ3曲めからまったく声が出なくなったときがあって……。それはもう素直に「ごめんなさい」と、お客さんに謝りました。
河村 いい話だね。
相川 それでも、「最後までやらせてください」ってお願いしたら、客席のみんなが一緒に歌ってくれて。私的には悔いが残ったんですけど、最後、お客さんもバンドメンバーも、みんな泣いていて。あの光景は、今でも心に残っています。
河村 ライブって本当に不思議だよね。もう何十年も七瀬ちゃんの歌を聴いているファンにとっては、いつもの楽しいライブより、七瀬ちゃんが歌えなくても一体感を味わえたライブのほうが、一生心に残る伝説のライブとしてインプットされるんだよね、きっと。
相川 ボーカリストとしては、こんなに悔しくて情けないことはないんですけど…すべてはナマモノ。だから、おもしろいんでしょうね。
河村 僕の場合は風邪とかじゃないから、よけいにファンの人たちに申し訳ない気持ちなんだけど……。少なくとも、カッコ悪いからやめるという選択肢は僕の中にはなくて。もしも、僕がステージを降りるとしたらーー。
相川 降りるとしたら?
河村 メンバーから「もういいよ、リュウ」と言われたときか、ファンの人たちから「隆一さん、もう休んでください」と言われたときかなと思うんだよね。そう言われないために、今必死にもがいているんだけどね。
ーーデビュー当時、今の自分や今のLUNA SEAを想像できましたか?
河村 ないない。自分自身の50代、60代も想像していなかったし、バンドがここまで続いているとは思わなかったですね。振り返ると、今も5人でやっているのが奇跡のようなものです。
相川 デビュー当時、こうなりたい、こうなったらいいなあという思いを含めて、どこまで先を見ていましたか?
河村 音楽を人生にできたらいいなあという、漠然とした思いはあったような気がするけど、若いころは自分の生きる場所を見つけるのにとにかく必死で。とにかく、がむしゃらでしたね。
相川 ずっと、何かに追いかけられていた感じですか?
河村 俺を見て! 俺たちを見て!! という、ちょっと困ったちゃんみたいなところもあったと思うし、もっとできるのに出しきれていないって思っていたような気がする。
相川 それを前に進むためのパワーに変えた感じですか?
河村 と、思いますね。七瀬ちゃんもそうでしょう?
相川 まさに、ですね。歌番組もたくさんあって、同時にオリコンとかいろんなランキングがあって、順位やCDの売り上げ枚数が常に目の前にあって、次から次へという時代でしたもんね。
河村 それが今は、再生回数で。CDの売り上げ100万枚と、再生回数100万回は違うんだろうけど、どこが違うのかって言われたら、よくわからない(苦笑)。
相川 SNSの数字って、実態が掴めないというか、頭ではわかるんですけど、肌感覚としてはわからないところも多々ある。
ーーそういう時代の変化にも対応しなきゃいけない?
河村 出ていく場所が、テレビやラジオからSNSに替わるということはあるかもしれないけど、作曲するという部分においては何も変わらないと思います。
相川 でも、むしろいい時代になったような気がします。
河村 どういうこと?
相川 YouTubeやTikTokでいろんな音楽が展開されていて、それが1980年代の曲であろうが1990年代の曲であろうが、心が動いた曲に対しては分け隔てなく受け入れてくれる。ある意味、ボーダーレスの時代になったので、私たちにとっては大きなチャンスだと思います。
河村 確かに、そうかもしれないね。実際、LUNA SEAのライブにも、若いコたちが増えてきているし。LUNA SEA文化祭だったかな!? LUNA SEAを観に行こうという高校生の集まりがあるんだって話を前に聞いたよ。
相川 刺さったんですよ、高校生にLUNA SEAの音楽が。
河村 「刺さった」?
相川 若いコたちは、心が動くことをそういう言い方で表現するんですよ。
河村 「刺さる」か、なるほどね。それ、日記に書いておこう。
相川 隆一さんが日記!? 意外すぎます(笑)。
河村 日記というより、詞を書くためのモチーフのようなものなんだけど。今日、七瀬ちゃんと話したことを書いておいて、いつか “刺さる” とか “心が動く” というキーワードで歌を作ろうと思ったときに、見返すみたいな感じかな。
相川 LUNA SEAなのか、隆一さんのソロなのかわかりませんが、 “心が動く” “刺さる” をキーワードにした曲を聴くのを楽しみにしています(笑)。
かわむらりゅういち
1970年5月20日生まれ 神奈川県出身 1989年に、ボーカリスト “RYUICHI” としてLUNA SEAに加入。1997年に、河村隆一名義でソロデビュー。2000年のLUNA SEA “終幕” 後は、ソロアーティスト、俳優、小説家、音楽プロデューサーと多岐にわたって活動。2010年に、LUNA SEA “REBOOT(再起動)”
あいかわななせ
1975年2月16日生まれ 大阪府出身 1995年『夢見る少女じゃいられない』でデビュー。その後もヒット曲を数多く世に送り出す。2020年に國學院大學神道文化学部を受験し合格。卒業後、同大の大学院に進む。2026年11月2日、30周年ツアーファイナルとして日本武道館でのライブが決まっている。2026年2月11日、相川七瀬30周年を記念したオールタイムベストアルバム『Rock ’N’ Roll Journey〜30th Anniversary BEST』が発売!
写真・福田ヨシツグ
取材&文・工藤 晋
ヘアメイク・KyokoOwada(河村)、RYO(相川)
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