
取材時にはいていたピンクと紫の靴下を手に(写真・有坂政晴)
「大切なもの、すっごい迷って全部持って来ちゃいました。いや、今いちばん大切なのは愛猫のアビシなんですけど、彼はうちで毛布にくるまっているのが幸せなので、連れて来られませんでした、はい〜」
やす子(27)は、机の上に次々と大切なモノを並べてくれながら、心底残念そうに肩を落とす。
「これは、自衛隊時代に陸士長だったときの階級章ですね。お笑い芸人としての今があるのは、自衛隊にいたおかげですから、初心を忘れないように机の前に置いています」
丸っこいボディで迷彩服を着込み、元気に「はい〜!」と言う女性芸人が注目を集めたのは、わずか数年前のこと。あれよあれよという間に人気が出て、いまやバラエティ番組に欠かせない存在となった。
「自衛隊にいたのは2年くらいですけど、あの場所で過ごした時間は、今に生きているな、と思いますね」
たとえば、どんなことが?
「自衛隊で『(階級が)上の人を信じなさい』と教えられたので、バラエティ番組の現場でもMCの人を信じて、果敢に平場に出ていくことができます!」
ちなみに “平場” とは、芸人がテレビ番組や劇場でネタ以外のトークをすること。台本がないので、センスと実力が試される。
「特にデビューしたてのころは、何をどうすればいいのか途方に暮れていましたけど、先輩芸人の方がうまく笑いに持っていってくれると信じて、思いっきりやることができました。はい〜」
先輩芸人といえば、お笑いコンビ・納言の薄幸とのツーショット写真も、大切なモノのひとつだという。
「自分が芸人になりたての22歳くらいのときで、憧れの先輩と一緒にお仕事ができたという喜びと、スマホじゃなくてチェキで撮ったというアナログ感が嬉しくて、壁に貼って毎日眺めています」
そして、机の上に残ったのは……左右バラバラの靴下。
「お仕事が忙しくなってきたころ、頭も体も疲れてしまったんですね。で、これじゃいかん、と自分を甘やかす作戦を取ったんです」
家事の中でもっとも面倒だった洗濯を、乾燥機つきの洗濯機にすることで楽に。さらに、靴下をペアにしてしまうことをやめたのだそうだ。
「同じ色や柄を探して畳むことすら面倒で、乾いたらそのまま引き出しにドサッと入れておいて、適当に2枚取り出してはくことにしました。だから今日持ってきたのも、お気に入りとかじゃなくて、今朝、手を突っ込んで掴んだものです」
やす子がいつも左右違う靴下をはいていることを心配したファンがプレゼントしてくれることもあり、現在はおそらく200足ほどが引き出しに詰め込まれているという。
「組み合わせは、もう無限です〜(笑)。もはや、時短とか手抜きとかいうことを超えて、自分が楽に生きることの象徴になっていますから、これが “やす子のヒソモノ” にふさわしい気がします」
そんなやす子の、初の書籍タイトルも、まさしく『靴下はいつもあべこべ はい〜』。月刊誌「JUNON」で連載している漫画や書き下ろしのエッセイなど、やす子のすべてを詰め込んだ一冊になっているという。
「とにかく、めっちゃ嬉しいです! なんというか、人生で初めて経験するタイプの嬉しさですね。文字の書体も色も、背表紙に小さく入ってる靴下のワンポイントイラストも、何もかもがありがたく、愛しいです!!」
インタビューは発売の数日前におこなわれたが、
「発売日には、絶対に本屋さんに見に行きます。そして目立たないところに置いてあったら、ドーンと前に出してきちゃいますね。さりげなく立ち読みして、周囲にアピールするかもしれません(笑)」
漫画は日常を綴った日記スタイル。
「忙しいときは何度も締切りを過ぎちゃって、たくさんの人にご迷惑をおかけしちゃいましたが、読み返すとそんなことも思い出で、頑張って描いてきてよかったな、と思ってます」
漫画のネタにするために、日々「これは使えるかな?」と考える癖がつき、絵を描くために写真を撮る。
「大変ですけど、お笑いのネタやトークで使えるエピソードにもなるので、日常を客観的に見るのは公私ともに役立ってますね。あれ? どっちも仕事だから、公公ともに? まぁ、そんなことは靴下を左右あべこべにはくのに比べたらたいしたことじゃないですね、はい〜」
やすこ
1998年9月2日生まれ 山口県出身 2017年より陸上自衛隊に勤務し、2019年に芸人としてデビュー。その後、テレビをはじめ多方面で活躍。現在『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)など出演番組多数。著書『靴下はいつもあべこべ はい〜』は主婦と生活社より発売中
写真・有坂政晴
取材&文・工藤菊香
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