
石井めぐみは国立市議になって11年めになる(写真・福田ヨシツグ)
豪華キャストに潤沢な制作費、そして惜しみなく使われる火薬――。1970年代から1980年代にかけて「刑事ドラマ」は黄金時代を迎え、民放各局は真っ向勝負を繰り広げた。『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)で活躍した石井めぐみに撮影秘話を聞いた(以下、本人談)。
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作品との最初のかかわりは、トミー(国広富之)が恋をする芸者役でゲスト主演したことでした。その回の視聴率がよく、当時の芸能界は験を担ぐところがあって、交通課の婦警・森村万里子役でレギュラー出演が決まったそうです。
じつは私の父は、警視庁府中署の刑事でした。一緒に刑事ドラマを観ると、横から「ここはおかしい」とか口を挟むのでイヤでしたが(笑)、『トミーとマツ』はコメディですから、楽しく観てくれました。たまたま父の管轄内でのロケが多く、帰りが遅くなるときは、迎えに来てくれましたね。
当時はまだフィルムの時代で、撮影は本当に大変でした。1日のスケジュール表に「36時」と書いてあることなんてざらで寝る時間もないほどでしたが、現場が楽しかったので、苦ではありませんでした。
ドラマでミニパトを運転するために、免許を取ったんですよ。それで自分の車を運転するようになって、撮影が深夜の2時、3時に終わると茨城県の鹿島の海まで運転して行くんです。海から朝日が昇ってくるのを見て、「よし! 今日も頑張るぞ!」なんて叫んで、また撮影に向かったりしていましたね。
トミーの相棒・マツ役の松崎しげるさんは、地方ロケでは必ずギターを持ってきて、食事の後に弾き語りでミニコンサートをやってくれました。ものすごく声が通るので、声が会場中に響き渡って(笑)。物静かで紳士的な国広とは本当にいいコンビで、スタッフもみんなトミーとマツのことが大好きだったと思います。
松崎さんは本当にサービス精神にあふれた素敵な方で、あのままの明るさで場を盛り上げてくださるんですが、本番は半分アドリブ。台本にないのに、万里子を「大根足」「ちび」なんて呼ぶんですよ。私も即興で返さないといけないので、大変でした。
私は今、女優として活動しながら、東京・国立で市議を務めています。60分間の一般質問を原稿なしでこなせるのは、あの現場で鍛えられたおかげだと思っています。
市議になったきっかけは、子供が重い障害を持って生まれてきたことです。「医療的なケアが必要な子供は養護学校に入れない」と言われ、衝撃を受けました。なんとかしたい一心で、同じ境遇の親たちと、いろいろなところへ出向いたんですが、何も変わりませんでした。
そんなときに文部省と厚生省に話をする機会を作ってくださったのが、自民党の故・中山太郎代議士。結果、私の子供も養護学校へ行けることになったんです。
そこで、中山先生にお礼にお伺いしたときに「今の日本で何かを動かそうと思ったら、政治家を頼るか、自分が政治家になるしかないんだよ」と言われ、その言葉が強く心に残りました。
その後、国立の友人たちと4人で「くにたち淑女会」というグループを立ち上げたところ、あっというまに100人ほどに広がりました。フラダンスやペーパークラフトなどのサークルのほか、当時の市長に市政についての話を聞く会もありました。
当時は女性議員が少なく、女性の意見が反映されていないと感じる場面も多かった。市長に「中に入ってやってよ」と背中を押され、立候補することに決めました。
国立のすごいところは、「できない」と言わないところ。財政的に余裕があるわけではないのですが、どうすればできるかを考え続けるんです。
市議になって11年めになりますが、私の提案をきっかけに、ほかの方の協力も得て実現したものを含めると、50以上になります。そんな国立で仕事ができていることが、本当に楽しいんです。
空いた時間には、FPとして資産運用の講座も開いています。女優時代に将来のお金のことが心配で、勉強して資格を取ったんです。市の財政健全化や基金の安全な運用を考えるうえで、この知識も今の仕事に役立っています。
私の夢は、この町がよくなって、「もう思い残すことはないから辞めるわ」と言える日が来ること。それまでは、『トミーとマツ』で得た力を胸に、頑張り続けたいと思っています。作品ではキャピキャピする役で、今でも「意外とおとなしいのね」と言われますが、まあまあ真面目なんですよ(笑)。
■いしいめぐみ
ドラマ『だんなさまは18歳』(TBS系)、『おんな太閤記』(NHK)などのほか『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)などにも出演。2015年に国立市議会議員に当選、現在3期めを務める
■『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)1979〜1982年
ドジで臆病なトミーこと岡野富夫(国広富之)と、情に厚い熱血漢マツこと松山進(松崎しげる)の凸凹コンビのバディもの。刑事ドラマにコメディ要素を大胆に持ち込み、軽妙な掛け合いとアドリブを交えたテンポのよさで社会現象に。全2シリーズが放送された
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