
国広富之(東京都中央区の「銀座ギャラリー杉野」にて。写真・福田ヨシツグ)
豪華キャストに潤沢な制作費、そして惜しみなく使われる火薬――。1970年代から1980年代にかけて「刑事ドラマ」は黄金時代を迎え、民放各局は真っ向勝負を繰り広げた。『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)で、トミーこと岡野富夫役で活躍した国広富之に撮影秘話を聞いた(以下、本人談)。
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当時の僕は、山口百恵さんと『赤いシリーズ』(TBS系)で共演するなど、大映テレビからは二枚目路線で売っていく俳優として見られていました。
そんなとき、あるプロデューサーから「トミー、イメージが崩れるかもしれないけど、やってくれないか?」と渡された台本が『トミーとマツ』だったんです。読んでみたら、とにかくおもしろい。翌日には「ぜひやらせてください」とお願いしていました。
クライマックスシーンでは、銃撃や格闘におびえる僕を松崎しげるさん演じるマツが怒鳴りつけ、発奮した僕が悪党をやっつけるのがお約束でしたね。
当初は目をむいて怒るだけでしたが、あるとき耳を動かしてリアクションしてみたんです。子供のころ、E・H・エリックさんのCMを見て、一生懸命練習していたんですよ。
実際には、耳に針金をテープで固定してスタッフさんに押したり引いたりしてもらったのですが、子供たちは大喜び。10%ほどだった視聴率が、1クール終わるころには25%ぐらいになっていました。
松崎さんとは、本当にドラマのままのような関係です。撮影が終わったら「ラーメン食いに行こう」と繰り出して、2人で餃子とラーメンにたっぷりのにんにくを入れてね。
家にもよく呼んでくれて「今日、遊びに来いよ。“これ” がメシを作ってくれるから」って小指を立ててね(笑)。そういうところはすごくオープンな人。同じ芸能界でも歌手と俳優ではやはり業界が違うんですよね。歌の世界のおもしろいことは、ぜんぶ松崎さんが教えてくれました。
2人で全国10カ所ぐらいのコンサートツアーもやりました。僕もLPを1枚出していましたけどヒット曲はなかったから、松崎さんとだったからやれたんですよね。4000人ぐらい入る体育館などでオールスタンディングで。俳優がステージに立ってコンサートを開けるなんてあまりないですから、松崎さんのおかげですね。今でもいいバディです。
俳優になって50年ほど、ずっと絵を描き続けています。忙しいときほど描きたくなってね。個展に足を運んでくださった方が「子供のころに観ていました」「耳を動かす練習をしていました」と言ってくれるんです。これを見て警察官になった人もたくさんいるそうです。
ハチャメチャなドラマでしたが、子供たちが喜ぶ作品を残せたことは、とても嬉しいことだと思います。
■くにひろとみゆき
1977年、『岸辺のアルバム』でデビュー。『赤い絆』『ふぞろいの林檎たち』(いずれもTBS系)など出演作多数。公開中の映画『テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル』に出演。画家としても活躍中で、2026年4月には岡山島屋で個展開催予定
■『噂の刑事トミーとマツ』(TBS系)1979〜1982年
ドジで臆病なトミーこと岡野富夫(国広富之)と、情に厚い熱血漢マツこと松山進(松崎しげる)の凸凹コンビのバディもの。刑事ドラマにコメディ要素を大胆に持ち込み、軽妙な掛け合いとアドリブを交えたテンポのよさで社会現象に。全2シリーズが放送された
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