
坂本冬美、香西かおり、天童よしみ、藤あや子
昭和世代の人にとって『NHK紅白歌合戦』の客席審査といえば「日本野鳥の会」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
3階席まであるNHKホールの客席を階ごとに左・中央・右の3つ、合計9ブロックに分け、双眼鏡を手にした男女各9人の「日本野鳥の会」の方が数えるのですが、その速さが尋常ではありません。
1ブロック約400席を数えるのにかかる時間は1分弱。わたしがその役目を仰せつかることは絶対にありませんが、万が一そんなことになったら一桁、二桁まではなんとか大丈夫だと思いますが、三桁は無理です。
「にひゃく、にじゅう、ご……にひゃく、にじゅう、ろく……にひゃく、にじゅう……あれ!? どこまで数えたっけ? だめだ……最初からやり直しだ……」
除夜の鐘が鳴り終わっても、まだ数え終えられず、全身汗みずくになっていると思います(苦笑)。
こんな『紅白』の審査方式も、アナログからデジタルの時代へ。アップデートを繰り返し、この年は会場審査員、デジタルTV審査員、ケータイ審査員、ワンセグ審査員、スマートフォン審査員と多様化。そんななか、第1回から変わらないのは、ゲスト審査員の存在です。
この年のゲスト審査員席にお座りになった方々は綾瀬はるかさん、尾木直樹さん、樹木希林さん、中村勘九郎さん、桂文枝さん、そして澤穂希さん、吉田沙保里さん、入江陵介さん、菅野よう子さん、元横綱・日馬富士公平さんの10名です。
司会は紅組が堀北真希さん、白組が嵐の5人で、総合司会は有働由美子さん。MISIAさんがアフリカのナミブ砂漠から、ピンク・マルティーニさんと共演した由紀さおりさんが、アメリカ・オレゴン州のポートランドから生中継で出演し、大きな話題になったのも、この年の『紅白』です。
日本との時差はナミブ砂漠がマイナス7時間で、オレゴン州はマイナス17時間。ざっくりと計算すると、MISIAさんが歌唱したのは現地時間の夕方で、由紀さんは早朝です。
本番前には声を出す準備をして、音合わせ、リハーサルをして……ということを考えると、本当に大変なことです。それなのに、お2人とも素晴らしい歌声で、ただただ尊敬です。
それに引き替え、わたしはというと……モゴモゴモゴ。2年続けて歌わせていただいたわたしの代表曲『夜桜お七』の歌詞を間違えてしまって……もう、最悪の事態です。
大階段の上でスタンバイ。前奏が始まり、颯爽と降りたところまではよかったのですが、「ん!? なんかへんだぞ?」と思ったときには、 “時すでに遅し” です。
何をどう間違えたのか、最後までわからないまま、それでもなんとか歌い終え、舞台袖に引っ込んだわたしにマネージャーが放った言葉が、「やっちゃいましたね」です。
何千回、何万回とステージで歌ってきて、その何十倍も練習してきて、それまでただの一度もそんな間違いをしたことはなかったのに……なぜ、よりにもよって『紅白』で、1番の途中で2番の歌詞に変わってしまったのか。どれだけ考えても、いまだに謎です。
ひとつだけ自分を褒めてあげたいのは、途中で歌を止めなかったことです。もしもあのとき、途中で歌を止めてしまっていたら…考えただけで、もう熱が出そうです(苦笑)。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。40周年記念シングル『遠い昔の恋の歌』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋
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