『銀河の一票』に出演する松下洸平(左)と『時すでにおスシ!?』に出演する松山ケンイチ
各局4月期のドラマが続々とスタートしている。恒例となった、コラムニストのペリー荻野さんと桧山珠美さんのドラマ対談も3回め。今回も、第1話の放送だけを見て「おもしろい!」と思わせてくれた作品を選んでもらい、ほかにも気になるドラマについて語ってもらった。
――まず、2人がともに「次回が楽しみ!」と声をそろえたのが、『月夜航路-答えは名作の中に-』(日本テレビ系・水曜22時~)だ。家族にないがしろにされている45歳の主婦・沢辻涼子(麻生久美子)と、文学オタクの銀座のママ・野宮ルナ(波瑠)の凸凹バディが、文学の知識で事件を解決していくロードミステリー。
桧山:原作は小説なんですよね。「答えは名作の中に」とサブタイトルがついているので、文学の作品を注釈を入れて説明するなど、わかりやすく作りながら、新しいものをやってみようという意気込みを感じます。
ペリー:ちゃんとした推理ものだから、ルナの洞察力や名探偵ぶりがミステリー好きにはおもしろいと思います。小さなヒントから推理していく、というのはドラマの王道ですが、そこが大事だと思います。
桧山:第1話では、ルナが聖地巡礼のように、近松門左衛門の浄瑠璃『曽根崎心中』の舞台である露天神社に向かったところ、寄り添う男女の遺体を発見するという展開でした。きっと心中だろう、と文学を絡めるあたりは、好きな人の心を刺激しますよね。次回以降も見たいなと思いました。
ペリー:舞台が東京ではなくて、大阪というのもいいですよね。東京の刑事ドラマって、やり尽くしていて、どこへ行っても、内藤剛志の目が光っているような感じがしてしまう(笑)。でも、うっかりすると『ボーダレス』のイノッチ(井ノ原快彦)が乗った、巨大なトラックが大阪まで走ってくるかもしれない!
――『ボーダレス~広域移動捜査隊~』(テレビ朝日系・水曜21時~)は、大型トラックで爆走する捜査本部を描く刑事ドラマ。土屋太鳳(たお)と佐藤勝利が、ダブル主演でノンキャリアの刑事役を務める。
桧山:あのトラックには驚きました! 「1号機、2号機、出動」とか言うので、『サンダーバード』へのリスペクトかと思いました。
ペリー:トラックの名前が「一番星」だから、私は『トラック野郎』を思い出しました(笑)。
桧山:このドラマの脚本は『踊る大捜査線』を手がけた君塚良一さんなんですよね。君塚さんが久しぶりにテレビ朝日と組んだ作品で、よくできています。北大路欣也が「メカじい」という、元警視庁の鬼刑事で、現在は自動車整備工場を営む自動車整備のプロを演じているんですが、1話めからキャラクターを立たせるというのは、シリーズものに発展させようとする、テレビ朝日が得意な手法ですよね。ただ、土屋太鳳が、口が悪くて気の強い刑事役を演じているのが、無理しているように見えてつらいかも。
ペリー:朝ドラヒロイン出身で “日本人みんなの娘” みたいなイメージを持たれていますからね(笑)。でも身体能力はいいから、走りのシーンはサマになってます。
桧山:たしかに『科捜研の女』の沢口靖子とは違います(笑)。
ペリー:このドラマ、“テレ朝らしさ” が爆発しているので、そのテイストが好きな人には、絶対におすすめです。
――2人が推すドラマは、もう1本。黒木華(はる)と野呂佳代がタッグを組んだ “選挙エンターテインメント” と銘打たれた『銀河の一票』(フジテレビ系・月曜22時~)だ。黒木演じる星野茉莉(まつり)は、党幹事長の娘で父の秘書をしていたが、突如、政界を追い出される。そして茉莉は、スナックのママである月岡あかり(野呂)をスカウトし、都知事選に立候補させる――というストーリー。
桧山:『エルピス-希望、あるいは幸い-』(2022年・フジテレビ系)と同じ関西テレビのチームが、同じ時間帯に持ってきた、選挙をテーマにしたドラマで、社会派な内容が期待できます。第1話では、松下洸平が黒木華をみごとに裏切ったシーンがよかったですね。
ペリー:NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の徳川家康といい、松下洸平の “腹芸” が見られるというのはいいです(笑)。政治にどっぷり浸かった人間を主人公にするというのは、やっぱり勇気がいりますよね。『エルピス』は、テレビ業界の裏を描いた作品だったので、今回は政治の現場でのタブーや、選挙の裏側をどう見せるんだろうと興味深いです。
桧山:「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という、宮沢賢治の言葉が登場します。その言葉が茉莉の指針で、党幹事長の父も同じ言葉を語っていた人なのに、まったく逆のことをやって、対立していくんですよね。
ペリー:いままで、選挙のドラマというと、コメディタッチのものが多かったんですよ。現実とクロスしながら、裏までシリアスに描くドラマはなかったから、そこもおもしろいと思っています。フェイクニュースや炎上など、選挙にSNSが深くかかわっていく時代に、彼女たちがどう挑んでいくのだろう、と。卒業証書を見せるシーンなんかが出てくるかもしれない(笑)。
桧山:脚本を担当している蛭田直美さんは、『舟を編む』(2024年・NHK)も担当していて、すごく言葉を丁寧に扱う人なんです。そこにも期待しています。
――さらに、ペリーさんの推すもう1作品は『田鎖ブラザーズ』(TBS系・金曜22時~)。刑事となった兄と検視官となった弟が、31年前、両親が殺された事件の時効を前に犯人を追うクライムサスペンスだ。兄の真を岡田将生(まさき)、弟の稔を染谷将太が演じている。
ペリー:岡田将生は以前、映画『宇宙兄弟』で小栗旬と兄弟役を演じています。今回は、染谷将太と刑事の兄弟役。兄弟ものをやらせたらピカイチです。そういえば、染谷将太も映画『聖☆おにいさん』で松山ケンイチとブッダとイエスのいいコンビを演じていました。コンビものではキャラクターの違いをはっきりさせることが重要ですが、お兄ちゃんのやさぐれている感じがおもしろかったですね。第1話では、兄弟を小さいころから知る女性・足利晴子(井川遥)が、今後どうかかわってくるのかなど、まだ要素の “種” をまいている感じ。最終的に事件の真相を突き止めるためのヒントを与えて、見ている人を引っぱっていくんでしょう。
――桧山さんが第1話を観て「楽しめる作品」と評価したのが『時すでにおスシ!?』(TBS系・火曜22時~)だ。夫に先立たれ、ひとりで子どもを育ててきた主人公・待山みなと(永作博美)は、子どもの就職を機に、3カ月で鮨職人になれるという「鮨アカデミー」に通い出す。堅物講師の大江戸海弥(松山ケンイチ)や個性豊かなクラスメイトたちと出会い、自分のために一歩を踏み出していくというストーリー。
桧山:子育てが終わって「私は何者なの?」となった主人公が、鮨アカデミーに通い始めて、世代も考え方も違う人たちと同じクラスになって……という “いかにも” なドラマなんですが、そのなかに、TBS火曜日22時特有の持ち味が感じられます。“女性の悩み相談の教科書” ではないですが、「私も永作博美みたいだわ」と、同じものを抱えている女性が、溜飲を下げ、背中を押されるような気持ちになります。肩肘を張るでもなく、でも私はちょっと変われるかも、一歩を進めるかも、みたいなドラマとしては、とてもいいと思いましたね。それでいて、松山ケンイチがコメディのような “顔芸” を見せるところもあって。みなとと大江戸は昔、どこかで会っていたようで、いかにも何かが起こりそうです。
月9や日曜劇場といった “名門” の苦戦が伝えられる今期のドラマ。ほかの時間帯に、きらりと光る名作がありそうだ。
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