
あの
5月26日、テレビ朝日の定例記者会見がおこなわれ、西新社長が、歌手でタレントの“あのちゃん”ことあのの番組内での演出について、謝罪した。この騒動によって、バラエティ番組が抱える課題が浮き彫りになっている。
発端となったのは、5月18日のバラエティ番組『あのちゃんねる』(テレビ朝日系)の企画で、「ベッキーの次に嫌いな芸能人は?」と聞かれたあのが鈴木紗理奈の名前を出したこと。その後、鈴木が20日のInstagramのストーリーズで《そういうのってほんまに信頼関係がある相手とのプロレスの時やと私は思う。普通にいじめやん》と反論し、騒動に発展した。
「テレビ朝日は22日、配慮を欠く演出があったことを謝罪するも、翌日にはあのさんが自身のXで《もう続けたくないので番組を降ります》と、降板を表明したのです。今回の定例会見で、西社長は『制作スタッフの配慮が足りず、ご迷惑をおかけした』と、改めて謝罪。今後の番組の放送予定は『詳細を控える』としつつ、制作過程や現場運営を見直し、再発防止に努めることを表明しました」(スポーツ紙記者)
今回の騒動では、番組の演出が問題視されることになった。
鈴木は20日のストーリーズで《こちらに伝えもせずおもんない文句たれ流したスタッフさんへ。愛のある笑い作らな国民的な番組は作られへんで》と、番組を放送したスタッフへ苦言を呈した。
あのも、23日のXでかねて番組の演出に不満を抱き、局と話し合いをしていたことを告白。さらに、《今回の件も直前まで質問を伏せられ、もちろん特定の名前を出してやろう、など事前に用意できるわけもなく、僕含め出演者全員が変な汗をかきながら場を成立させようと答えましたが、その後に発言した「僕の発言にもピーかけてくれないとお相手がかわいそうだから」という言葉も、オンエア上ではカットされていました》と、“嫌いな芸能人”企画の演出に対する不満をつづった。
こうした事態を受けて、Xでは
《バラエティでも、人を傷つける形で笑いにする時代はもう終わり》
《これはどう考えても収録をそのまま放送したテレビ局が一番よくないと思うなあ…》
《番組もほぼ解体 あのも嫌な気持ち 鈴木紗理奈も嫌な気持ち これ誰が得したん?》
など、番組の姿勢に疑問を抱く声が聞かれている。
タレントに嫌いな芸能人を暴露させる“過激トーク企画”が火種になったが、近年のバラエティ番組は岐路に立たされているようだ。
「どの番組でもコンプライアンスの遵守が求められていますが、バラエティではとくに“罰ゲーム”の扱いが難しくなっています。2022年4月、放送倫理・番組向上機構(BPO)の青少年委員会が『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ番組』に関して、青少年の共感性や人間観に好ましくない影響を与える可能性を指摘したのです。
実際、現場でも、番組によって多少の違いはありますが、芸人のビンタや蹴り、ハリセンなどに難色を示すケースもあります。こうした企画がやりにくくなるなか、『嫌いな芸能人』『怖い先輩』のような過激なトーク企画は、古くからおこなわれていてタレント側も慣れていますし、ある程度の撮れ高も見込めるため、重宝されつつあったようです。ただ、今回の件を受けて、こうした過激トークも積極的にはやりにくくなるかもしれません」(制作会社関係者)
今回の「嫌いな芸能人」企画の問題点はどこにあったのか。元毎日放送のプロデューサーで、同志社女子大学メディア創造学科の影山貴彦教授は、テレビ局の責任を指摘する。
「ひと昔前に比べて、テレビ番組のスタッフやタレントの質が下がったとは思いませんが、明らかにバラエティを中心とした番組の質は劣化しています。SNSの影響力が高まったことが起因しているでしょう。かつて、視聴率に一喜一憂したように、現在はいかにSNSで話題になるかを重視しており、制作サイド、タレントにその流れが染みついています。ただ、今回の件もあり、テレビ業界全体がそうした流れを根本から見直す必要があるでしょう」
時代の流れとともに、制約を受けることも少なくない。そんななかで、「嫌いな芸能人」のような“過激トーク企画”は重宝されているように見えるが、危うさもあるという。
「分かりやすい企画ですし、予算もかからず、トークひとつでSNSで注目されやすいです。ただ、こうした企画は制作側やタレントの技術に左右される部分もあります。あのさんに限らず、基本的にタレント側は作り手から言われたことに従う図式があり、決して強い立場ではありません。だからこそ、制作側はタレントの気持ちに寄り添った上で、取り組ませる企画をきちんと考える必要があります」(影山教授)
一連の騒動は、最終的に鈴木とあのがそれぞれの所属事務所を通じて声明を出す事態になった。今回の企画で“笑い”は生まれたのだろうか──。
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