永作博美
最初は永作博美と松山ケンイチの恋愛展開はいらないと思っていたが、この絶妙な描き方なら “アリ” と思えた。
永作が主演、松山が準主役を務める火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』(TBS系)。6月2日(火)に第9話が放送され、今晩の放送で最終話を迎える。
待山みなと(永作)は、14年前に事故で夫を亡くしたシングルマザー。
持ち前の明るさで一人息子を育ててきたが、最愛のわが子が社会人となり家を出たことをきっかけに、3カ月で鮨職人になれる「鮨アカデミー」に飛び込むことに。そして「鮨アカデミー」の堅物講師・大江戸海弥(松山)や生徒たちと出会い、“自分のため” に生きる一歩を踏み出していくという物語。
■恋愛展開が良作に水を差す、蛇足になる可能性
本作は子育て第一で奮闘してきた50歳の女性が、子どもの自立をきっかけに “自分のため” の第二の人生を模索していくというテーマで、その舞台が鮨の専門学校という設定である。「鮨アカデミー」で出会う講師との絆や同期生たちとの友情が育まれていくため、アラフィフの青春グラフィティといった感じ。
生徒役は佐野史郎やファーストサマーウイカらが務めており、世代も属性もバラバラな同期たちと親交を深めていくエピソードがエモく描かれてきた。自分もこんな仲間たちとこんな日々を送れたら素敵だな、なんて思った主人公と同世代の視聴者も多かったのではないか。
――と、これだけでけっこう良質なドラマに仕上がっているだけに、松山演じる年下講師との恋愛展開は蛇足になりかねない。
さらにいうと、永作と松山は共演経験があり、ダブル主演した映画『人のセックスを笑うな』(2008年)では、今作とは立場が逆で永作が講師役、松山が生徒役を演じ、禁断の恋に落ちるというストーリーだった。
松山演じる生徒は永作演じる講師に夫がいることを知らないまま恋に落ち、すぐに肉体関係に。永作演じる講師が自ら服を脱いで下着姿になったり、30回以上も連続でキスしたりといったラブシーンが描かれ、若い男が魔性の年上既婚女性のトリコになっていく。
すでにそんな濃厚かつ禁断の “大人の恋愛” を演じたことのある2人だったため、『時すでにおスシ!?』でも恋仲になったら、悪い意味で『人のセックスを笑うな』の生々しいシーンが思い出されてしまい、水を差すのではと懸念していた。
■関係性をはっきりさせないまま幕を下ろす?
さて、『時すでにおスシ!?』も、けっきょく恋愛展開になっているのだが、2人の関係性や距離感が絶妙で、けっこういい。心配は杞憂に終わりそうなのだ。
主人公の待山みなとは講師・大江戸海弥と学校外でも2人で会うことがよくあり、女友達からひやかされたり恋愛への発展に背中を押されたりもしていた。第8話では大江戸からの誘いで水族館デートに行くというエピソードもあった。
また第9話は公園で「待山さん、もう少しここに、一緒にいてくれませんか?」「はい」と言葉を交わし、2人で夕暮れの空を見つめるというラストだった。
とはいえ、2人は水族館でも公園でもキスはおろか手もつないでいない。スキンシップはほとんどないウブな関係である。
お互いにほのかな恋心は抱いているのだろうが、はっきり「恋愛」と言えるほどではない「恋愛未満」という描かれ方。けれど、それはそれで “大人の恋愛” としてとてもしっくりくるのだ。
若者と違ってアラフィフともなると、お互いに惹かれあっていてもすぐに付き合うかどうかなんて話にはならず、気持ちも関係性もはっきりさせず曖昧なままでいるというのも、妙にリアリティがある。
第9話まで牛歩のごとくゆっくりと恋愛が発展してきているが、今晩放送の最終話でも告白したり恋人になったりという、関係性をはっきりさせるシーンは描かれないような気がする。
■2人が描いたのは対極ともいえる “大人の恋愛”
惹かれあう中年2人が手もつながないというのはかなりもどかしくもあるが、このまま関係を明確化せず、曖昧なまま終幕するのもなかなか粋ではないか。ある意味、これこそが “大人の恋愛” とも言えそう。
過去の共演作で肉欲のままお互いの体をむさぼりあう不倫をしていた2人が、手もつながないピュアな恋愛を演じるというのがいい。永作と松山で、対極ともいえる2つの “大人の恋愛” が描かれたことへの感慨深さもあるのだ。
『時すでにおスシ!?』は今夜が最終回。2人がどんなエンディングを迎えるか、楽しみである。
![Smart FLASH[光文社週刊誌]](https://smart-flash.jp/wp-content/themes/original/img/common/logo.png)







